梅干しのだしでじわりと煮込んだスープで、たまった夏の疲れを解消
ようやく涼しくなってきましたが、暑かった夏に蓄積した疲れは一足遅れてやってくるもの。なんとなくダルくて力が湧かない……こんなときこそしっかり食べて、力を蓄えていきたいですよね。
スタミナというと焼き肉や揚げ物を思い浮かべますが、それは元気な方のスタミナ食。体が疲れているときはもう少し身体にやさしい、さっぱりしたものが欲しいところです。
そこで今日は、梅干しをだしがわりに煮だした、長芋とオクラのスープを紹介します。
梅干しの酸味とうまみがスープや野菜に移った滋養のある一皿、ノンオイルで胃腸にも負担をかけません。作り方もこれでいいの? と思うほどシンプル!
たたき長芋とオクラ、梅干しのスープ
材料(2人分)
長芋 12~15cm(約250g)
オクラ 6本
梅干し 大2個
塩 適量
水 500mL
1.野菜を切る
長芋は3cmほどの長さに切り、皮をむいてさらに縦半分に切ってからつぶす★。
梅干しはちぎる(種は捨てない)。オクラはガクを切り落として薄く刻む。
2.火にかける
鍋に水500mLと梅干し(種ごと)★、塩ふたつまみを入れ、中火にかける。
煮立ちはじめたら長芋を加え、再度温まったところで出た白い泡をすくう。
3.煮込む
オクラも加え、とろ火(最小の火加減)★に落として約10分、沸騰させないように静かに煮る。
梅干しの種をとり除き、味を見て、足りなければ塩で調節する。
簡単ですね。よりおいしく作るために、★のついた説明ポイントを説明していきます。
・長いものたたきかた
・梅干しと塩加減
・とろ火の加減について
★ポイント1.長いものたたきかた
長いもは、ぬるぬるするので、調理しづらい野菜のひとつです。今回は包丁の腹を使ってたたいてつぶします。切るよりもスープが絡みやすくなります。このサイズでなくてはダメ、というものではありません。楽しみながら気軽にやりましょう。
まず、皮つきのまま3cmほどの長さに切ります。
最終的にたたいてつぶれるので、適当でOK
皮をむき、縦半分にする
切り口を下にしてまな板に置きます。
皮をむくときに包丁やまな板についたぬめりはふきとっておく
その上にキッチンペーパーをのせて包丁の腹を当て、手の平でおさえるようにつぶします。
親指の付け根の腹の部分に力を入れて
ひとつずつやって、すべてつぶします。
つぶれなかったところは包丁で切っても大丈夫
大小のムラが少しあったほうが、食べた時に食感が楽しくなります。キッチンペーパーはすべり止めなので、一度使ってぬるぬるした部分はずらして使いましょう。
麺棒かすりこぎをお持ちなら、それでたたくのも楽です。
★ポイント2.梅干しと塩加減
今回の重要な食材の一つが、梅干しです。このレシピにおける梅干しは、酸味、塩味、そしてうまみを加えるマルチな役割を持たされています。
買うなら昔ながらの、しっかり酸っぱくてしょっぱい梅干しがベストです。減塩でない梅干しを使いましょう。
というのはも……減塩の梅干しを作るのには雑菌管理が難しいため、まず高塩分で梅干しを作り、その後で水にさらして塩分を流している製品が多いのです。作業工程で、梅干しが本来持つ酸味やうまみが抜けてしまうことがあるからです。
酸っぱい梅干しはクエン酸も多いので疲労回復にもぴったり
今回のスープに限らず、梅干しのように塩分のある素材を使う場合は、含まれる塩分に個体差があるので、最初の段階では味は薄めにつけておき、あとで調整します。最後の味見は必ずしましょう。
★ポイント3.とろ火の火加減について
今回のスープはとろ火、つまり最小の火加減で煮込むスープです。
フランス料理ではこの火の入れ方を「ミジョテ」と呼びます。大鍋でブイヨンなどを煮るときに表面にときどきポコッと泡が立つぐらいのやさしい火加減で、材料が煮崩れず、味が濁らず、素材のうまみがきれいに引き出されます。
今回のスープはまさにこの「ミジョテ」の感覚で煮たいのです。
温かい梅干しだしに長芋を入れると一度温度が下がります。中火にかけて温度を上げていくと、白い泡のようなアクが出てきますので、見た目が気になる人は、お玉で表面をすくってください。
表面を一通りすくい取ればそれでOK
沸騰させていると、この泡は永遠に出続け、キリがありません。そこで火を弱火に落とし、とろとろと長芋を煮込みます。
たたいて細かくした長芋もオクラも生でも食べられる野菜なので、3分ぐらい煮ればもういいかな、と思ってしまいますが、少し我慢して10分ほど煮てみてください。長芋とオクラ、梅干しのうまみが一体化した、とても美味しいスープになります。
長芋やオクラの軽いとろみと梅干しの爽やかな酸味で、食欲がないときでもサラサラと体に入ってくるスープです。ごはんにかけてもおいしい。ぜひやってみてください。
切り方や野菜をかえてアレンジ
今回使った長いもは、切り方や火の通し方で表情をがらりと変える魅力的な野菜。同じ味付けでも、調理次第でまったく別のスープに見えてきます。
こちらは少し大ぶりにした長いもとコロコロに切ったオクラで。鶏肉も加えたボリュームスープです。
鶏肉は食べやすい大きさに切り湯通ししたものを、梅干しと一緒に鍋に加えます。
こちらはオクラ抜きで、薄切りにした長芋とまるごとの梅干しを使ったスープ。
お客様にも出せそう。青みは豆苗を使っています
おいしく食べることができたら、力はかならず湧いてきます。
さまざまなイベントが目白押しの秋、こんなスープを食べて養生して過ごしてくださいね。
スープのレシピや研究成果を発表している有賀さんのnoteはこちら!