夏の盛りに爽やかでクリアなスープを
今回は、ゴーヤをシンプルに味わうための夏スープです。
具材は、ゴーヤと豚バラ肉だけ。調理時間も下ごしらえから正味15分もかかりません。でも、ゴーヤ本来の強烈な苦味をうまくひきたてた、クリアで味わい深いスープなんです。
ゴーヤの強烈な苦味が苦手な人もいるかもしれません。 でも、食べ慣れるとその苦味は爽やかさ、青臭さはフレッシュさとして魅力的に感じられるようになっていきます。そのうえゴーヤの苦味成分には、胃の粘膜保護や疲労回復といった効能もあるとのこと。
暑い盛り、ビールや焼酎などとも合う大人のほろ苦スープで、ゴーヤを楽しんでみませんか?
それでは、レシピをどうぞ。
ゴーヤのスープ
材料(3~4人分)
ゴーヤ 中1本(約250g)
豚バラ肉(薄切り) 100〜150g
ごま油 大さじ1
昆布 10cm ※顆粒のだしを使ってもOK
水 800ml
1.下ごしらえ
豚肉は食べやすい大きさに切って湯通し★1をする。沸騰した湯の中へ豚肉を入れ、再び湯が沸いたらざるに上げ、広げておく。
ゴーヤ★2は縦に割って種をスプーンで取り去り、端から3ミリほどの薄切りにする。
2.煮る
鍋に水800mLと水でさっと洗った昆布を入れて弱火にかけ、ぷつぷつ煮立ってきたら昆布を取り出す。塩小さじ1加え、味をみて、塩加減を調節する★3。
ゴーヤと豚肉を加え、中火にして、そのまま3分ほど煮る。アクが出たら、おたまですくう。
3.仕上げる
ゴーヤに火が通ったら、火を止めてごま油を回し入れる。
以上、とても簡単なスープで、難しいことはありません。
ここからは、★をつけたレシピのポイントをくわしく解説しますね。
・豚肉の湯通し
・ゴーヤについて
・塩について
★ポイント1 豚肉を「湯通し」
このスープのポイントは、見た目にも美しく、すっきりと飲みきれるスープです。
そこで、ひと手間ですが、スープのお湯とは別に、豚肉を「湯通し」します。この作業は「霜降り」とも呼ばれていて、肉や魚の血合いや臭みなどを取り除く目的です。
やり方はかんたん。鍋にお湯500mLほど沸かし、そこに切った肉を入れて、くっついた肉を箸で軽くほぐすようにします。
生肉を入れると湯の温度が一瞬下がり、すぐまた沸きはじめるので(時間にして10~15秒ほど)、すかさずざるに上げます。中はまだ煮えていなくても、豚肉の表面がうっすら白く変わればそれでOK。ざるに上げたら、箸でひろげて余分な水分を切ります。
★ポイント2 ゴーヤについて
まずは見た目が良い物をいくつか手にとってっください。ずっしりした重量感があるものを選びます。
その上で、鮮度を見極めるにはイボを確認します。イボにハリがあるものが新鮮です。イボにハリがなく、黒ずんでいたり、つぶれてしまっているものは避けましょう。
ゴーヤの旬は6月から8月、まさに今です!
ゴーヤは、ふわふわのわたごとスプーンですくって取ります。このふわふわ、一見苦そうに見えますが、つまんで食べてみると実は苦くはないんです。神経質にとろうとしなくて大丈夫。
★ポイント3 塩について
シンプルなレシピでも、塩を使うタイミングと量で、味がだいぶ違ってきます。
今回は下ごしらえでは塩を使いません。
実際に、切ったゴーヤを(1)そのまま煮る (2)塩もみして煮る、それぞれのパターンで作り分けてみました。
塩もみすると、確かにゴーヤの苦味はマイルドになりますが、ゴーヤの魅力である爽やかさや口に入れたときの香りは薄れてしまいました。ですので、ゴーヤらしさをより残すため、今回は下ごしらえなしで、ゴーヤをだしで煮るほうを選びました。
また、塩は煮る前にいれます。
こちらも(1)煮始めたタイミングで塩を全部入れる(2)ゴーヤが煮えてから塩を加える、という両方を比べてみました。
(1)ではゴーヤに塩味がなじみ、スープと一体感が出ましたが、(2)では、スープは塩味がついてもゴーヤに味がなく、具とスープがバラバラの感じでした。ということで、塩は煮始めから入れます。
煮る時間が3分と短いため、ちょうどいいぐらいの味つけにしてから煮始めます。顆粒だしを使う人は、塩分が含まれているので塩の量を控えてくださいね。
塩は、このスープの唯一の調味料なので、できればおいしい塩を選びたいですね! 沖縄や奄美などの塩だと、ゴーヤと相性もよさそうです。
私が今使っている塩から、沖縄の塩3種をご紹介します。
迷ったら、粗塩タイプで比較的手に入りやすい「粟國の塩」がおすすめです。もちろん、沖縄の塩でなくてもおいしくできますよ!
左から①粟國の塩(釜炊き)、②塩夢寿美(えんむすび)、③ぬちまーす
①粟國の塩(釜炊き) 250g ¥680(税込)
沖縄県粟国島近海で採取した海水を、採かんタワーで濃縮、平釜でじっくり炊いた塩です。うまみがしっかり。べたつかず、振り塩にも使いやすい。
②塩夢寿美(えんむすび) 200g ¥610
沖縄県野甫島の海水を、完全天日で塩に仕上げたもの。結晶化した塩を手もみした、表情のある塩。粗目なので、スープなど煮込みに向いています。
③ぬちまーす 111g ¥540(税込)
瞬間空中結晶法という製法で作られた、パウダー状の塩。塩分が低めでうまみ成分が濃い塩です。
少し夏バテ気味で疲れちゃった、というときや、ここ数日食べ過ぎてしまって胃が重いな、というときに召し上がってみてください。ゴーヤの苦味が思いのほかおいしく感じるはず。
ゴーヤの味がしっかり主張した、シンプルで潔い味わいながら、体へのやさしさたっぷりのスープなのです。
※ひとつだけご注意を。ゴーヤのスープは、作ってから時間を置いてしまうとスープの苦味が強くなりすぎます。好みもあると思いますが、なるべく作りたてを食べきるのをおすすめします。
淡い苦味のアレンジスープも
それでもゴーヤのあの苦味にはやっぱりまだ慣れないんだけど……という方は、今回紹介したゴーヤのスープに、お好みで豆腐をちょっと加えるとぐっとマイルドになりますよ。
木綿豆腐を適当な大きさに切るか手で崩して、最後の1分ぐらいで加えます。豆腐を入れると塩味が薄まるので、味見して足りないときは塩を足してください。
また、ピーマンやししとうなども、ゴーヤほどではありませんが、ほろ苦さがおいしい夏野菜です。
ピーマンとひき肉のスープ。ピーマンはみじん切りにします。ひき肉も同じように湯通しします。ピーマンとひき肉がサラサラ口の中に入ってくる、食感が楽しいスープです。
ししとうと海老のスープ。さっと炒めておいしいししとうですが、くたくたに煮込むと深い味わいになります。肉のかわりに海老を合わせました。
苦味を楽しむ、大人のスープ。その奥に隠された繊細な魅力に、思う存分萌えてください。
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