【3月8日 AFP】新型コロナウイルスの中国の流行中心地であり、封鎖されている湖北(Hubei)省武漢(Wuhan)市で、国務院の孫春蘭(そん・しゅんらん、Sun Chunlan)副首相が市内の集合住宅地を公式視察する中、住民たちが窓から「全部うそだ」などと叫ぶ様子を捉えた動画が5日からインターネット上に出回っている。この動画は、当局の危機対応に対する市民たちの根深い怒りを浮き彫りにした。

 中国メディアによると、住民たちの不満の矛先はこの集合住宅地の管理者に向けられており、管理者はボランティアを雇って高層アパートの住民たちに野菜や肉を配達するふりだけをしていたという。

 驚いたことに、普段は政府関係者へのいかなる批判も直ちに削除する中国の検閲当局は、中国版ツイッター(Twitter)「微博(ウェイボー、Weibo)」に投稿されたこの動画をそのままにしている。

 だが、中央政府は動画に乗じて、自分たちは国民の要求に耳を傾けており、この失態は地元当局に責任があるとの「筋書き」をつくり上げているように見える。

 国営新華社(Xinhua)通信は5日、武漢市民が提起した問題に対処するために孫氏が「徹底した捜査」を要求したと報道。しかし動画については言及しなかった。

 共産党機関紙の人民日報(People's Daily)は、ツイッターに編集済みの動画を共有した。英語アカウントでの投稿は削除されたが、中国語版の動画はオンライン上に残されている。

 人口1100万人の武漢で1月23日に始まった封鎖措置は、いつまで続くか見当がつかない。多くの住民が食料確保をインターネットでの集団購入に頼っている。

 スーパーマーケットや地域の委員会は、需要急増に伴った注文に応じるために奔走しているが、一部の住民はAFPに対し、大量購入した食料品の価格や品質に誰もが満足しているわけではないと漏らした。

 当局は武漢市全体に物資が届けられていると保証しているが、市民たちは自分に頼らなければならない状況に置かれている。(c)AFP/Beiyi SEOW