女性社長・女性役員数にみるウーマノミクスの成功
アベノミクスの成長戦略の柱の一つとして、女性活躍の推進がある。女性がビジネスや政治や社会活動の場に参画し、広く活躍する社会の実現により、経済成長を成し遂げる。それが現政権のモットーだ。
首相官邸のホームページには『女性の持つ力は日本最大の可能性!』とまで断言しているように、現政権は女性の可能性を引き出すため、女性が持つ力を最大限発揮できる環境を作る事を目指している。いわゆる、ウーマノミクスである。
ウーマノミクスとは
アベノミクスが、安倍総理と経済政策のエコノミクスを掛け合わした造語であることは広く知られている。ウーマノミクスも同じく、女性のウーマンとエコノミクスを掛け合わせた造語で、ゴールドマン・サックス証券のチーフ日本株ストラテジストであるキャシー・松井氏が1999年から提唱している概念である。
人事向け専門メディア『BizHint』では、ウーマノミクスとアベノミクスについて以下のように説明している。
しかし、残念ながらそれらの法律が日本社会に与えた影響はそれほど大きなものではなく、『育児と仕事の両立が無理なく可能な社会』や『女性というだけで役職や収入に差が生まれることのない社会』が実現したと胸を張って言うことができないのが現状です。
(中略)
しかし、2014年1月22日にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム年次会議の冒頭演説において安倍晋三内閣総理大臣が次のように述べたことによって、ウーマノミクスに三度(原文ママ)関心が寄せられることになったのです。
安倍総理は様々な女性活躍の応援を国内外で行い、高い評価を受けている。成功裏に終わった第5回国際女性会議WAW!/W20 も、そのひとつ。
引用元 ウーマノミクス
そのダボス会議における安倍総理の発言を見てみよう。
いまだに活用されていない資源の最たるもの。それが女性の力ですから、日本は女性に、輝く機会を与える場でなくてはなりません。2020年までに、指導的地位にいる人の3割を、女性にします。
多くの女性が市場の主人公となるためには、多様な労働環境と、家事の補助、あるいはお年寄りの介護などの分野に外国人のサポートが必要です。
女性の労働参加率が、男性並みになったら、日本のGDPは16%伸びるという話です。世界経済フォーラム年次会議(ダボス会議)で、女性活躍を推進すると発言した、安倍晋三総理
わが国は、過去に男女雇用均等法などの法律を設けてきたものの、効果は薄く、特に子供のいる女性が家庭から出て、本格的に社会で活躍することは少なかった。
女性の可能性を家庭に埋もれさせてきたのがこれまでのわが国であり、安倍総理が2014年のダボス会議で呼びかけたことで、アベノミクスの政策にも組み込まれ、日本でも女性活躍社会の構築の気運が高まる一つのきっかけになった。
アベノミクスとウーマノミクス
上記でも紹介したように、安倍総理は「日本で最も生かしきれていない人材は女性」と発言し、アベノミクスの成長戦略に女性活躍の推進を打ち出している。
現在日本は深刻な少子高齢化に陥り、人手不足も比例して深刻な問題となっている。そこで、安倍総理は家庭に収まっている女性たちに着目し、女性が働ける社会の構築を目指し政策を打ち立てた。
欧米人ジャーナリストにとっては、女性の労働参加を促進するのに経済効果という議論を持ち出す必要があること自体が驚きだ。日本人経済学者の浜矩子氏も、ジャパン・タイムズ紙で「女性の労働環境を整備するのは、女性にその待遇を受ける権利があるからだ。正しいことをするのにほかの理由や言い訳は必要ない」と指摘する。
とはいえ、日本の現状をみれば、女性の力で経済を活性化させようとする「ウーマノミクス」の有効性は明らかだ。ゴールドマン・サックス証券のキャシー松井氏によると、女性の就業率は現在約60%。これを男性並みの80%に近づけることで、労働人口は推定約820万人も増加し、国内総生産(GDP)は最大14パーセント底上げされると考えられる。
安倍首相は全上場企業に女性役員を少なくとも1人は登用するよう求め、女性の活躍推進に取り組む企業への優遇税制も設けると表明した。
ここに、現政権の政策の特徴がある。これまでの考えでは、男女が平等に働くことをもとに、働く環境の待遇や、女性の社会進出が訴えられてきた。しかし、現政権の目線はそれらとは違い、女性が働くことによる経済効果に着目した。
女性の就業率を上げることは820万人の労働力が確保できるだけでなく、GDPの大幅な底上げも期待出来る。人手不足解消の起爆剤にもなり、経済も潤い、なにより、家庭の収入の増加にもつながる。
これで、企業の育児保障制度が整えば、少子化の改善にも期待が持てる。
アベノミクスにより女性社長が増加 2018年女性社長比率調査
帝国データバンクがまとめた、2018年の企業の女性社長比率は7.8%。(参考)
引用元 企業の女性社長比率は 7.8%
上記グラフでは緩やかな増加となっているが、第二次安倍政権になってから女性社長が急激に増加している。もちろん、これは相関関係かもしれないが、現政権の一丸となった取り組みの影響があるのは諸政策を見れば明らかだ。
全国の女性社長は41万1,969人で、調査を開始した2010年の21万人と比べて約2倍に増加。産業別にみると、飲食業などの「サービス業他」が46.0%と最も多く、次いで「不動産業」が13.8%、「小売業」が13.1%と続いた。
女性役員はさらに急増
引用元 上場企業の女性役員数の推移
2011年までは、上場企業の女性役員の数がほぼ横ばいだったが、第二次安倍政権発足後から2018年には2.7倍に急増している。そして、第4次男女共同参画基本計画の成果目標では、さらに増加目標を立てている。
2012年と比較すると、6倍強で、2018年と比較しても2倍以上の女性役員の増加を目指している。この背景には欧米と比較しても女性役員の割合が低いことがある。
2020年の目標に達成しても、女性役員の割合は10%で、欧米には及ばない。しかし、上図でも、ノルウェーと米国以外の国も4年で急激に増加している傾向にある。特にイタリアは目覚ましい。そこで、政府も女性役員の増加を目指し、周知啓発を行っている。
女性役員の登用や女性活躍取組が様々な場面において評価されていることや政府の取組を紹介するとともに、上場企業のうち女性役員の占める割合が10%以上の企業を一覧化したリーフレット「女性活躍で企業は強くなる」を作成しました。
この他にも、女性役員を育成する目的で、女性役員候補育成研修『女性リーダー育成』『女性リーダーのための経営戦略講座』を実施している。先日ご紹介した、『女性活躍推進法等改正案』も無事国会で成立し、さらなる女性のビジネス界への参画を後押しする内容となっている。
アベノミクスは、単に女性の働く環境を整備するだけでなく、女性がリーダーとして活躍できる社会を作り、それによる更なる経済成長を目指している。
女性のリーダーが増えて社会を引っ張っていけば、多くの女性が触発され、自分の可能性を見出すために、次々と社会進出することが見込まれる。
そうなれば、必然的に女性の働き手が増えて、人手不足の解消にもつながり、GDPも底上げされる。人口の半分を眠らせておく手はないのだ。
これまでも、ウーマノミクスは成果を上げているが、安倍政権はさらにその先に進もうとしている。