米紙、日本版「一帯一路」が中国を上回ると激賞!
ウォールストリートジャーナルは、国際的な影響力を持つ日刊経済新聞である。アメリカ版、アジア版、ヨーロッパ版の他、日本語版や中国語版のオンライン版が発行されている。
そのウォールストリートジャーナルが、香港在住記者の手による安倍外交を激賞する記事を掲載した。安倍政権の日本版「一帯一路」構想が中国を圧倒しているというのである。
日本の静かな一帯一路
中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に関する報道は絶え間なく伝えられている。しかし、中国政府の対外投資戦略の中核を成す同構想は幾つかの点で、日本の静かな取り組みに後れを取っている。
ウォールストリートジャーナルは、中国の一帯一路に対し、安倍総理の「自由で開かれたインド太平洋構想」が優位を確立していると主張する。
この「自由で開かれたインド太平洋構想」は、安倍総理が2016年8月にケニアで開いたアフリカ開発会議(TICAD)で打ち出した外交戦略だ。
その具体的内容は、成長著しいアジアと潜在力の高いアフリカを重要地域と位置づけ、この2つの地域をインド洋と太平洋でつないだ地域全体の経済成長をめざす。自由貿易やインフラ投資を推進し、経済圏の拡大を進めるというもの。
日本の海外資産は中国を上回っている!
国際通貨基金(IMF)によると、2016年末には日本と中国の海外資産保有額がほぼ同水準となったが、それ以降は日本の対外投資が中国を数百億ドルも上回っている。日本の海外資産保有額は2018年第3四半期時点で1兆6670億ドル(約187兆円)だが、IMFの入手可能な最新データによると、中国は同年第2四半期時点で1兆5420億ドルだ。
この差は、日本政府の国際融資拡大のまずまずの成功と、中国の「一帯一路」の限界を示すものだ。
安倍総理が掲げる「自由で開かれたインド太平洋構想」の経済面における具体的な効果を投資の面から絶賛している。つまり、日本の対外投資が中国以上の成功を収めているというのだ。
中国のアジアインフラ投資銀行に勝利する、日本のアジア開発銀行
中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、日本と米国が中心のアジア開発銀行(ADB)に対抗する機関だが、2016年の発足以降の融資は控えめであり、2018年9月までの融資残高は64億ドルにとどまっている。これとは対照的にADBは2018年だけで358億ドルを融資している。2年前に比べると40%増だ。
アジア開発銀行は日本政府が中心となって創設した、アジア地域の開発を進めるための国際機関だが、中国のアジアインフラ投資銀行に勝利した背景には、安倍総理の戦略があった。
安倍総理は2015年5月21日に、総額13兆円ものアジア開発銀行やODAを通じた援助やアジア開発銀行の改革を含む、対中巻き返し戦略を発表した。その中身は、以下のようなものだった。
・円借款や技術協力などODA支援の拡大・迅速化
・融資能力の拡大などのアジア開発銀行(ADB)改革を後押し
・政府系金融機関の国際協力銀行(JBIC)によるリスク資金の積極的供給
・質の高いインフラの世界標準化
まさに、上記戦略が実現し、投資額が中国を上回るという結果をもたらしている。
2015年5月、巻き返し戦略を発表する安倍総理。
円も人民元に勝利!外貨準備高でも日本の優位
さらに「一帯一路」は人民元の国際化を図るという一面を持つが、これまでのところ国際的な融資は圧倒的にドル建てが占めている。実際のところ、日本は自国通貨の海外での利用促進について中国よりうまくやっているように見える。
(中略)
中国が最も成功しているとみられている外貨準備高でさえ、日本に負けている。
(中略)
中国はいつの日か、日本からアジア最大の対外債権国の座を奪うかもしれない。また人民元は世界の金融システムでより大きな役割を担うようになるかもしれない。中国の経済的影響力の大きさを考えれば確かにそうなるだろう。だが現段階では、中国政府の対外的野心は実績が言葉に追い付いていない。
自国通貨の国際化でも、外貨準備高でも中国に勝利しているとする。
そして、いつか中国がアジア最大の対外債権国や金融システムにおける主要な地位を日本から奪うかもしれないが「現段階では、中国政府の対外的野心は実績が言葉に追い付いていない」と指摘する。
裏を返せば、絶対的な日中の国力の差を埋めているのが現政権の外交戦略なのだ。その意味で、安倍政権の継続こそが、日本のアジアにおける経済的な優位性と影響力を残し続けるための唯一の道なのである。