安倍総理、フランスからの全面協力を取り付ける〜アベノミクス、G20、対中・北朝鮮問題
4月下旬、平成最後の外遊として安倍総理は欧米を歴訪した。今回の外遊も多くの収穫があったが、日本のメディアが報じないので、一連の外交成果を数回にわたって国ごとにご紹介する。まずご紹介するのは、4月23日に行われた、仏エマニュエル・マクロンとの日仏首脳会談である。
G20での全面協力を確保
安倍総理は、6月に大阪で開催されるG20サミットでのフランスの全面協力を取り付けた。これは大きな意味を持つ。というのも、日本が今年のG20開催・議長国であるように、フランスもまた今年のG7の開催・議長国だからだ。
安倍総理とマクロン大統領は、G20とG7の主要な議題やプロセスで密接に連携し、成功に向けて相乗効果を高めていくことで一致した。歴訪で最初にフランスを選んだ、安倍外交の妙が発揮されたと言えよう。
また、安倍総理がG20の主要議題としている、「国境を越えたビッグデータや情報の自由な流通の確保」、「WTO改革と自由貿易体制の維持」、「海洋プラスチック問題や気候変動などの環境問題への対応」でもマクロン大統領は協力を確約した。
アベノミクスへの全面協力も取り付ける
また、日仏間での経済協力も深まり、フランスがアベノミクスに事実上、全面協力をすることになった。
マクロン大統領は、6月の訪日時に日仏両国で5年間の新たな行動計画を採択し、「特別なパートナーシップ」を確立したいと安倍総理に提案。これは、日仏での経済協力を中心とする協力を行っていきたいという意思の表れである。
また、安倍総理が重視する「データ交換」と呼ばれる、データの転送を含む商品やサービスの交換に関する国際的な規則を設定するための二国間協力についても、フランス側は同意し、協力していくことになった。
アベノミクスの新たな重点分野となっている、人工知能(AI)やイノベーションやスタートアップ、民生原子力の分野で両国の間の協力が拡大していることを両者は評価し、一層の協力でも一致した。
懸念されていたゴーン問題も、日仏関係には影響せず、日本の司法の対応を見守ることでフランス側を納得させた。
対中・北朝鮮問題を含む安全保障問題でもバックアップを取り付ける
安倍総理は、安全保障問題でもフランス側の全面協力を取り付けた。
まず、安倍総理が掲げる「自由で開かれたインド太平洋構想」について、マクロン大統領は維持・強化について立場を共にしていることを確認し、具体的な案件の実施に向けて取り組んでいくことで両者は一致した。
特に、マクロン大統領は、インド太平洋地域におけるより具体的な経済と安全保障協力を探求したい、とまで発言したという。これはインド太平洋で、日本が進める「日本版一帯一路(経済・安保協力を軸にした地域づくり)」に協力すると表明したに等しい。
一方、安倍総理は今月のフランス海軍のフリゲート艦と海自の共同演習、現在調整中の空母シャルル・ド・ゴールと海自の共同訓練、日仏物品役務相互提供協定(ACSA)の早期発効へ向けた協力など、具体的な連携の進展を高く評価した。
安倍総理が掲げる「自由で開かれたインド太平洋構想」が事実上の対中戦略であることは言うまでもないが、南太平洋のニューカレドニアを保有するフランスがそれに全面協力し、軍事協力も深めていくことは、日仏が中国の暴走を抑止していくことを意味している。この一点だけでも、今回の首脳会談は大成功だったと言える。
また、北朝鮮問題でも日仏は一致し、安保理決議に基づき、北朝鮮による全ての大量破壊兵器及びあらゆる弾道ミサイルの完全な廃棄に向けて緊密に連携していくことを確認した。しかも、マクロン大統領からは、哨戒機及び船舶の派遣による「瀬取り」対処で引き続き貢献したいとの意向が示され、安倍総理はこれを高く評価した。
北朝鮮問題でもさらなる協力を安倍総理は引き出したのだ。
日仏首脳会談は成功裏に終わった。平成最後の外遊のスタートに相応しい、実り多き日仏首脳会談だったと言えよう。
アベノミクス、G20、対中・北朝鮮問題への全面協力をフランスから取り付けたことで、今後の日本外交の足場を固め、令和におけるさらなる経済・安全保障の両面における今後の日本の成功の一助となるだろう。
今後の展開に要注目である。