豪モリソン首相「信じられないほど感動的だ」:安倍総理のダーウィン訪問
豪州ダーウィンへの安倍総理の歴史的訪問が、オーストラリアで感動を呼んでいます。
ほとんどの国内メディアが報じていませんが、英霊への慰霊と新たな経済協力を作るという、まさに過去と現在と未来を結び付けたという点において非常に意義深い安倍総理の訪問だったと言えます。
安倍総理、日豪両国にとって歴史的なダーウィン訪問
オーストラリアのメディアは、戦後日本の総理大臣としては初めてダーウィンを訪れた安倍総理を高く評価しました。今回のダーウィン訪問については現地では9月の時点ですでに歴史的訪問になると報じられていました。オーストラリアの公共放送ABCは「歴史的訪問」だと評価したのです。日本の公共放送NHKがそうした評価をしていないのが不思議ですが、彼ら豪メディアは連日報道していました。
日本の安倍総理、第二次世界大戦から75年を経てダーウィンを歴史的訪問
大日本帝国軍がダーウィンを爆撃した七十五年後、日本の総理大臣がオーストラリアとの現代の関係を築くために歴史的な訪問を行う予定。日本の3340億ドルもの巨額のINPEXガスパイプラインプロジェクトが、訪問の焦点になるだろうが、両首脳の議題では、より緊密な軍事関係への取り組みについても扱われるものと期待されている。
ABC Japanese PM to make historic visit to Darwin 75 years after World War II bombing
安倍晋三総理は第二次世界大戦中、ダーウィン沖で沈没した旧日本海軍の「忘れられた」乗組員に敬意を表する
安倍総理は、ダーウィンで戦死した80名の男性の名前が記念碑に明記されたことを「本当に感謝している」と記者会見で語った。
「北部準州豪日協会」の小林麻子氏は、「まさに夢が実現した。これは期待以上のものだ」と述べた。
慰霊碑に供えられた写真と折鶴
現地ダーウィンでは2017年2月に、地元交流団体の提案で戦没75年目に慰霊碑が建てられました。潜水艦という機密性の高い軍事行動ゆえに、オーストラリアはもちろん、日本でもダーウィン沖約80kmの地点で伊124が沈んだ事実はあまり知られていませんでした。まさに忘れ去られた英霊です。
安倍晋三首相は17日、訪問先の豪州北部ダーウィンで、寄港中の海上保安庁巡視船「えちご」を視察した。同船は海賊対策のため先月末から豪州などに派遣されている。首相は「法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋を世界の海で体現してもらいたい」と述べ、船員たちを激励した。
首相は第2次世界大戦中にダーウィン沖で沈没した旧日本海軍の「伊号第百二十四潜水艦」の乗組員の慰霊碑も訪れ、献花した。東南アジアに近いダーウィンは豪州にとって国防上の要衝の一つ。中国の南シナ海での軍事拠点化の動きもにらみ、2012年から米海兵隊も駐留している。1942年2月19日の日本軍による空爆では、250人ほどが犠牲となった。1901年に連邦となって以降、初の外敵からの攻撃だった。
ダーウィン軍事博物館のノーマン・クランプ館長は「国内には日本に対する怨嗟(えんさ)の感情は、ほとんど残っていない。ただ、当時の豪政府が短期間でアジア全域を占領した日本軍をみて、ダーウィン空爆に(自国への侵略の)心配を募らせたのは理解できる」と指摘。豪州国立大のジョン・ブラクスランド教授(安全保障)は、首相のダーウィン訪問を「とても重要な意味があり、象徴的だ」と話した。
ダーウィンは第二次大戦中、帝国海軍の機動部隊が空襲を行なった場所であり、また旧日本軍の潜水艦伊124潜水艦が沈没した地でもあります。しかし、日本人の多くはダーウィンを日本が襲撃したという歴史を認識しておらず、反対にダーウィンだけでなくオーストラリアに住む人々はこの歴史を忘れていません。何故ならば、これはオーストラリアを襲った歴史上最大の他国からの攻撃だったからです。
安倍総理による異例の花輪。ABC放送のレポーターが撮影
安倍総理、日本のリーダーによる初のダーウィン訪問
1942年2月19日、ダーウィンの爆撃で死亡した人々のために、より緊密な軍事関係と戦略的パートナーシップについて議論する前に、日豪首脳は花輪を慰霊碑に捧げた。その日、76年前、ダーウィンで日本軍が空襲を開始したとき、少なくとも243人が死亡した。安倍総理は両国の和解に貢献した人々の努力を称賛した。
「日本の総理としてダーウィンを初めて訪れることは大変喜ばしいことだ。ダーウィンはかつて、旧日本軍がオーストラリアに対して最初の空爆を行い、多くの犠牲を払った場所でした。モリソン首相と私は戦争記念館で花輪を捧げました。私は戦死した兵士全員に対し、敬意を表して哀悼の意をささげ、平和に向けての私の誓いの想いを新たにした。数多くの献身的な努力の結果、日本とオーストラリアは和解を達成し、地域の平和と繁栄を促進する特別な戦略的パートナーとなった。心温まるおもてなしで私たちを歓迎してくれた北部準州の皆さんに感謝します」オーストラリアのモリソン首相は、この式典が「信じられないほど感動的だ」と述べた。また、モリソン首相は「安倍総理はオーストラリアの偉大な友人として、偉大な恵みと偉大な謙虚さとともに降り立った。私たちは私たちの歴史を受け入れ、私たちの犠牲と死に対する慰霊式典を行ないます。なにより、重要なことは、私たちは良い友人であり、偉大なパートナーとしての素晴らしい関係をさらに強化してきたことです」とモリソン首相は述べた。
ABC Shinzo Abe arrives in Darwin for first visit by Japanese leader
モリソン豪首相が述べているように、今回の訪問は両国の歴史において大きな意味を持つものであり、今後の両国のさらなる関係強化を後押しするものになるのです。一国の首相が「感動的」とまで言い切ることの重要性は忘れるべきではありません。
両国の歴史を考えればダーウィンを安倍総理が訪問したことは大きな意義を有するもの
戦死者の慰霊と日豪の歴史的和解を実現、安倍総理は戦死者を忘れたわけではない
いままで、オーストラリアのダーウィンに日本の総理が訪れることがなかっため、日本ではダーウィンが戦地になって多くの戦死者が出た事や、ダーウィンに日本海軍の戦死者が眠っていることを忘れ去っていると現地の人は認識していたようです。
当然、現地ではそういった日本に対し不信感を持っていたと思いますが、安倍総理がダーウィンの戦没者慰霊碑を訪問したことで、立場は違えど両国に共通の歴史認識が生まれ、和解と日豪のさらなる友好が実現されました。また、日本の保守派の中には、安倍総理が最近、靖国参拝しないことを批判する向きがありますが、だれもが忘れていた英霊たちの眠る場所を日本の総理としては初めて訪問し、こうして日豪の関心を高めたことこそ、安倍総理が英霊を大事にしていることの何よりの証です。
安全保障上の要衝を訪問した意義は大きい
ダーウィンは安倍総理が「自由で開かれたインド太平洋戦略」を推進する上でも重要な意味を持ちます。
『東南アジアに近いダーウィンは豪州にとって国防上の要衝の一つ。中国の南シナ海での軍事拠点化の動きもにらみ、2012年から米海兵隊も駐留している』とあるように、ダーウィンはその地理的にインド洋と太平洋を結ぶ重要な要衝であります。ですが、駐留拠点にほど近い港湾を中国企業に99年間貸与する契約が締結される等、非常に危惧が高まっていたところでした。今回の訪問の成果は、まさに「自由で開かれたインド太平洋戦略」の橋頭保づくりに成功し、中国の影響力拡大を食い止める素晴らしい一歩となったのです。
「自由で開かれたインド太平洋」についてはコチラ⇒[外務省;自由で開かれたインド太平洋戦略]
イクシスLNGプロジェクトの意義!進む日豪経済協力
日豪間の経済協力も着実に進んでいます。その代表例がイクシスLNGプロジェクトです。このプロジェクトで生産するLNG(天然ガスを低温で加圧して液化させたもの。液化天然ガス。)は、日本の年間LNG総輸入量の1割に相当する量を予定しています。そして40年の長期にわたる稼働が見込まれるため、日本のエネルギーの安定供給に資するものです。これで日本のエネルギー安全保障は安定性を増しました。
LNG生産量は年間840万トンで、日本の年間総輸入量の1割程度を占める大規模なプロジェクトであり、日本にとってのエネルギー安定供給の観点からも重要な案件に位置づけられています。イクシスからのLNG年間生産予定数量の全量はすでに売買契約を締結済みで、2017年から日本の電力・ガス会社を中心にLNG生産量の7割相当が日本に向けられる予定です。
イクシスLNGプロジェクトとは
国際石油開発帝石株式会社(INPEX)が推進するイクシスLNGプロジェクトは、世界最大規模の複合的な石油・ガスプロジェクトです。本プロジェクトは、西豪州沖合の世界最大級かつ最先端の洋上生産設備、ダーウィンの大型LNGプラント、そしてその2つを結ぶ全長890kmの海底ガスパイプラインの三つの主要施設で構成されています。
安倍総理、モリソン豪州首相、両国関係閣僚出席のもと操業開始記念式典が開催され、生産目標達成へ向けて動き出しました。
安倍首相は日豪両国が参加する米国抜きの環太平洋連携協定(TPP11)に触れ、「われわれの経済関係は幅と深みを増している」と指摘。同事業の開始を「日豪の絆を一層太くする」と歓迎した。
同事業によるLNG生産量は年間890万トンに上り、約7割が日本に出荷される見通しだ。時事通信社 LNG生産事業の式典出席=安倍首相より
参考資料:イクシス LNG プロジェクト 操業開始記念式典の開催について
日本とオーストラリア両国の歴史に深く刻まれ、インド洋と太平洋の要衝でもあるダーウィン。日豪経済協力の象徴ともいえるイクシスLNGプロジェクト。今、日豪関係は新たな局面へと発展しつつあるのです。そして、安倍総理が進める「自由で開かれたインド太平洋戦略」は着実に進んでいます。