中国「五毛党」のやらせ書き込み、年間4億件超=ハーバード大研究発表

2016年05月27日 21時07分

 米大手総合情報サービス会社、ブルームバーグはある研究を引用しながら、中国政府が世論操作のためにSNSに投稿させている「やらせ書き込み」は、年間で4億8800万件に上ると発表した。

 米ハーバード大学政治学者のゲイリー・キング氏は公共政策専門家2人と共に、中国共産党のネット宣伝工作員、いわゆる「五毛党」について初めて体系的に研究を行った。「五毛党」という名は、宣伝工作員としてレビュー1つを書き込むごとに、政府から五毛(貨幣0.5元の別称、約8.5円)の報酬を得ていると言われていることに由来している。

 「五毛党」のほとんどは政府機関に所属する公務員

 研究チームによると、中国国内で定着している認識とは違い、 五毛党には他人との直接な議論を避け、外国政府をあげつらうこともしないという特徴があるという。彼らの役目は、世間によいニュースを流したり、共産党を賛美したりして、一般市民の目を当局に都合の悪い話題からそらすことに絞られている。

 キング氏はブルームバーグの取材に対し、中国当局はネット論争に勝って民衆を承服させるのではなく、不満を抱える民衆の注意を分散させ、話題を変えることによって、「好ましくない話題」の議論を収束させているとの見解を語っている。またこうした戦略は、以前は外部の人間には知られていなかったことだとも分析している。

 さらに驚くべきことに、これまで五毛党は政府に雇われて小金稼ぎをしている一般市民だと言われてきたが、実はほぼ全員が政府機関に所属する公務員であり、例えば税務署や人的資源部門、司法関係といった職員だったことも明らかになった。研究者らは、こうした公務員らがレビューを入れて報酬を得ているという証拠は見つかっていないため、おそらく書き込みは彼らの仕事の一部であるとの見方を示している。

 五毛党の書き込みの約半分は政府系ホームページに投稿されており、残りの半分はSNSの約800億件もの書き込みのなかに紛れている。単純計算すると、178個の書き込みのうちの1つが政府によるやらせレビューということを意味している。

 世論操作のかなめは、「その問題に関係のない興味を引く話題」で民衆の関心を誘導すること

 ブルームバーグは、今回の研究の発端は、江西省贛州市章貢区ネット宣伝弁公室から漏洩した2013年と2014年のアーカイブ文書だったと報じている。これらの文書には多種多様なメール形式や操作手続きの流れ、添付書類などが大量に含まれていた。キング氏の研究グループはこれらの文書に対し解読や分析、データの自動抽出や分類を行った。

 その結果、彼らが抽出した特徴ある2341通の電子メールの半分以上に五毛党の書き込みが含まれていたことが明らかになった。五毛党の書き込み総数は43797個で、それらの特徴は他のやらせレビューを識別するための目印となっていた。研究者らは電子メールの情報とSNS上の名前を照らし合わせて、五毛党の人物を特定するところまでこぎつけている。現在、多数の五毛党に関する氏名や連絡先、写真に至るまでの情報を入手しているが、公開は避けるとしている。

 これら五毛党によるやらせレビューが書き込まれる時期には、ある一定の規則性が見られるという。通常、社会不安や何らかの抗議行動が一旦生じれば、五毛党は直ちに書き込みを始め、「その問題に関係のない興味を引く話題」を提供して民衆の注意をこちらに誘導しようとする。例えば研究チームは、2013年7月に起きた新疆ウイグル自治区での暴動後に、五毛党がネット上に1100個もの書き込みを投稿したことを突き止めている。書き込みはいずれも、地方経済の発展を称賛し、「中国の夢」を賛美するものだった。

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