新型コロナウイルスを巡る首相の唐突で場当たり的な判断が混乱を拡大させている。全国一斉の休校要請、そして中韓両国からの入国制限強化である。
安倍晋三首相が休校を要請し、全国のほとんどの小中高校が休校に入ってから1週間が過ぎた。この間に、居場所がない子どもたちへの対応で各地の教育現場が苦慮したり、子どもの世話を巡って親たちが悩んだりしている実態が浮き彫りになっている。
共同通信の調査では、県庁所在市や政令市など84自治体のうち那覇市など77%に当たる65自治体が、休校中も児童を学校で受け入れている。小学校低学年を中心に、共働き家庭で自宅に残ることが難しかったり、放課後児童クラブ(学童保育)の利用に限りがあったりするためだ。教室や学童保育で受け入れても、感染を防止するのに十分な空間確保が難しい場合もある。
首相による突然の要請に、自治体からは反対や不満の声も上がっている。「感染拡大防止に対する科学的根拠が分からない上、首相要請が唐突で準備期間が少なかった」「受け皿となる学童保育などでの感染の広がりも懸念される」といったものだ。態勢を整えるため休校時期を政府要請の3月2日より遅らせた学校も多い。県内でも実施期間で対応が分かれた。
家庭の負担も大きい。県内では、子どもの貧困を支援するため整備が進んできた子ども食堂が一部休止するなど、子どもの居場所にも影響が及んでいる。一人親世帯や経済的に厳しい家庭では、給食がない中、子どもの世話について悩んでいる親もいる。
全国一斉休校が感染拡大防止にどれだけ効果があるのか疑問は拭(ぬぐ)えない。理由付けるデータなど科学的根拠が示されていないからだ。感染状況に差がある地域の実情を無視して全国一律にした根拠も説明がない。
休校要請は先月27日、安倍首相が感染防止へ「ここ1~2週間が極めて重要な時期だ」として、突如打ち出した。政府専門家会議による先月24日の見解を基に判断した。この認識によればヤマ場は3月12日までで、専門家会議の見解だとヤマ場は3月9日までとなる。
専門家会議の意見も聞かず、なぜ春休みまで臨時休校を要請したのか判然としない。あまりにも乱暴な判断だ。
中韓両国からの入国制限強化も専門家会議での協議を経ずに決めている。もっと前の段階ならまだしも、事ここに至っては意味がないとの指摘もある。未曽有の事態にどう対処していいか分からず、迷走しているように映る。
まずは感染の状況を正確に把握しなければならない。感染拡大防止の対策は思いつきではなく、疫学調査など、科学的根拠を踏まえて実施することが不可欠だ。「やってる感」をアピールしている場合ではない。