トップ > 中日スポーツ > 大相撲 > 記事一覧 > 記事

ここから本文

【大相撲】

[北の富士コラム]ないない尽くし…形容のしようがない寂しさだった初日 私には協会員全員が無事千秋楽を迎えるのは奇跡にしか思えない

2020年3月8日 21時52分

白鵬(右)がはたき込みで遠藤を下す

写真

◇大相撲春場所初日(8日・エディオンアリーナ大阪)

 ある程度は予想していたが、この寂しさは形容のしようがないほどだった。ある物がない。いるべき人がいない。ないない尽くしの初日だったが、何とか無事に終えることができた。ホッとひと息と言いたいところだが、あと14日間を考えると悲しいものがある。

 力士たちがいくら健康に留意しても、相手は悪質なウイルスである。約1000人の協会員全員が無事、千秋楽を迎えるのは、私には奇跡にしか思えないのである。その奇跡を信じて力士は一段と強い四股を踏み、邪悪な物と戦ってもらいたい。くしくも八角理事長の協会あいさつにも、この事が力強く語られていた。並々ならぬ決意が込められた立派な初日あいさつで、力士諸君も奮い立ったと思われる。

 初日の土俵は、多少の戸惑いも感じられてはいたが、いつもの場所と変わるものではなかった。全般的には淡泊な相撲が多いようにも見えたが、私の気のせいかもしれない。

 では、めぼしい取組を見てみよう。新入幕の琴ノ若が落ち着いた相撲で完勝した。祖父の琴桜さんより、父の琴ノ若に似ている。親子だから当たり前と言えば当たり前。父親のように長い相撲はとらないで、琴桜さんの馬力を見習ったら、強くなるだろう。私も大いに楽しみにしている。

 炎鵬と御嶽海の好取組も少しばかり力の差が違ったようである。完全に炎鵬は封じられたが、そのうちには好勝負を見せるだろう。

 正代は先場所の優勝者を全く寄せ付けなかった。左差しから落ち着いて寄り切ったが、今までになかった力強さを感じた。ひょっとすると朝乃山の好敵手になるかもしれない。

 その朝乃山は右四つの強みをたっぷりと見せた。何度も言うが、下位の力士には、絶対に落とさないことが、大関への近道である。

 両横綱はともに好スタートを切った。特に白鵬は右の張り手2発で遠藤を撃沈させた。あまり感心しない勝ち方だが、今さら何を言っても通じないだろう。今場所は両横綱中心に展開するだろうが、そうはすんなり行くとは限らない。という訳で初日は波乱もなく終わったので、ひとまずはよかった。

 それにしても静かな初日であった。2、3日もたてば、この雰囲気にも慣れてこよう。私はすっかり疲れてしまった。得意の冗談も出ず、先が思いやられる。何とか気力で乗り切ろうと思う。今場所は外出外食も禁止である。もちろん、酒と女性の話なんぞはもってのほかである。

 では、またあした。(元横綱)

 

この記事を印刷する

PR情報

中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日スポーツ購読案内 東京中日スポーツ購読案内 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ