東京2020 祝祭の風景
アスリートや市井の人々の思いに耳を傾けながら、この国の風景を見直す
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【社会】<女性に力を>性暴力 もう黙らない 国際女性デー 全国でフラワーデモ花を手に性暴力撲滅を求め声を上げる「フラワーデモ」が、国際女性デーの八日、三十八都道府県で行われた。昨年四月から月一回開かれてきたデモは、この日で一年となる十二回目。新型コロナウイルスの影響で街頭の開催を断念した地域もあったが、インターネット中継や会員制交流サイト(SNS)などさまざまな手段を取り、深刻な被害の実態や、被害者を守らない刑法を改正する必要性を訴えた。(出田阿生、浅野有紀、竹谷直子、佐々木香理) ■調布東京都調布市では、調布駅前広場で初めて開催された。「調布にも声を上げる人、耳を傾ける人がいることを示したい」と、同市の國中咲枝さん(42)が友人らと企画。新型コロナウイルスで断念も考えたが、午後二時から三十分間限定で開くと、雨にもかかわらず約四十人が花を手に集まった。 「#With You」などと書いた手作りボードを掲げるサイレントデモにする予定で、マイクは用意していなかった。しかし「せっかくだから」と促すと、参加者が被害を打ち明け始めた。 六~十五歳ごろまで兄から性暴力を受けた女性。小学生のころ近所の男性に抱きすくめられた女性。時折声を詰まらせ「被害者の声を受け止める社会が続いてほしい」などと訴えた。 國中さんは十年間、大学でソーシャルワーカーとして学生らからセクハラの相談に乗った経験がある。「加害者への処分が公表されると、わっと相談が増えた。被害者の声を聞いて解決につなぐ仕組みが大事。これからも寄り添い、声を聞きたい」と語った。
■東京駅前東京駅前では、最初にフラワーデモを呼びかけた作家の北原みのりさんや関東近郊のデモ主催者らが集まり、ネット中継した。中継は約六千人が視聴。北原さんは「今度は社会の側が性暴力被害者の声を聞き取って、変化する番だ」と訴えた。 茨城県つくば市で先月フラワーデモを始めた佐々木愛美(まなみ)さん(25)は「父に性虐待を受けて育った。自分一人でも街頭に立つと決心して呼びかけたら、十人以上集まってくれた」。 横浜市のデモ主催者の森澤法子さん(48)は「被害者の落ち度を責める世間も、加害者に優しい刑法も変えたい」と訴えた。 昨年デモに参加し、がんで死去した女性がのこしたメッセージも代読された。 女性は二十代で性被害に遭い、母と姉に打ち明けたが「黙っていろ」と口止めされた。実は、女性の母も、夫からの暴力を訴えた時、祖母に「我慢しろ」と言われていた。性被害を黙って耐える負の連鎖。「今の社会に祖母が生きていたら、我慢せんでよか、と言ってくれると思う」と読み上げられると、参加者からおえつが漏れた。
■さいたまさいたま市のJR浦和駅前では、DV被害者らを支援する野田静枝さん(72)ら十五人が、足元に並べたろうそくの明かりの中で「性暴力を許さない」などのプラカードを掲げ、静かに立ち続けた。ライブ配信サイトで中継され、「想(おも)いはつながっています」と共感のコメントが届いた。 シングルマザーの野田さんは、三十代半ばから広告代理店で勤務。接待の席で顧客の男性がスカートの中に手を入れても、苦笑いでいなした。男性上司に太ももを触られた時も周囲は「大人になれよ」と繰り返した。自分もあらがって仕事を失いたくなかった。 だが、昨年三月、女性の地位向上を訴えるパレードで若い女性が「波風を立てないと社会は変わらない」と話す姿を見て目が覚めた。「こんなに被害があるのは私たちの世代が我慢してしまった結果。ようやく声を上げられる。一過性で終わらせたくない」 ■名古屋名古屋市の久屋大通公園でも、被害者が体験を語った。 六歳から十年間、父親の被害に遭った女性(29)は「部屋に入って来ないように入り口に家具を置くのが精いっぱいだった。加害者が誰でも抵抗は容易ではない」と振り返り、同意のない性行為の厳罰化を求めた。 知り合いから被害を受けた女子生徒(13)は「誰かの勇気になれるのではと思って立った。話さなくてもいいけど、話したら一緒に考えてくれる人は必ずいる」と訴え、約百三十人の参加者から「そうだ」と共感する声や拍手が上がった。
◆世界各地でも更新や集会【クアラルンプール=共同】八日、世界の複数の都市で女性の権利向上などを求める行進や集会が開かれた。マレーシアのメディアによると、首都クアラルンプールで約三百人の女性が行進し「自由が欲しい、平等が欲しい」「児童婚を廃止しろ」などと社会の変革を求めた。 一方、新型コロナウイルス感染の拡大を受け、世界各地で予定されていた多くのイベントが中止になったとみられる。 マレーシアの女性権利推進団体の代表者は「女性は男性に従うものだという狭い価値観から私たちはいまだに逃れられないでいる」と述べ、女性差別を犯罪とする法律が必要だと指摘した。参加者はインターネット上での誹謗(ひぼう)中傷を恐れ、いずれも名前を明らかにせず発言した。 バングラデシュの首都ダッカでも行進があり、多くの女性が「性差別に基づく暴力に立ち上がれ」などと書いたプラカードを掲げ声を上げた。
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