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【社説】

新型コロナ対策 日中韓連携を強化せよ

 新型コロナウイルスの感染拡大を阻止するため、中韓両国からの新たな入国を規制する。国民の不安解消に向けた水際対策だが、感染症の脅威に対抗するには日中韓の連携をより強める必要がある。

 遅きに失したとか、適切な措置なのかとか、さまざまな批判がある入国規制の強化策である。

 政府が中韓両国からの入国者に指定場所で二週間待機し、国内の公共交通機関を使わないよう要請することを決めた。中国、韓国人に発行済みの査証(ビザ)は無効とし、韓国、香港、マカオはビザの免除措置を停止する。

 入国規制の強化は九日から適用し、当面三月末まで実施する。

 日中韓三カ国は距離的に近く、人の往来も多い。昨年、中国人の日本への入国者数は約七百万人、韓国人は約五百万人に上り、国・地域別では一、二位を占める。両国からの観光客は、日本経済を支える大きな柱となっている。

 入国規制の強化により、経済活動や観光へのさらなる打撃は避けられないが、国民の不安解消を優先したのだろう。

 ただ今回の入国規制には、現段階で有効な対策となり得るのか、との疑問の声も専門家から出ている。政治的メッセージにはなり得ても、本当に科学的見地からの決定かどうかは疑わしい。

 中国からの入国規制を早い段階から主張していた保守派の論客もいて、政府の対策の遅れを批判していた。今回、中韓両国に強硬姿勢で臨むことで、安倍晋三首相を支える保守層の要請に応えようとしたのなら、筋違いも甚だしい。

 日本の入国規制措置に対して、中国はおおむね冷静な反応だが、韓国政府は対抗措置を取った。

 日中は、習近平国家主席の国賓来日問題があり、緊密に協議していたことがうかがえる。一方、元徴用工問題などの歴史認識問題を抱える韓国との意思疎通は十分ではなかったのではないか。関係が悪化しているときだからこそ、より丁寧な説明が必要だった。

 日中韓三カ国には首脳会合をはじめ、さまざまな対話の枠組みがある。

 医療や保健分野を

担当する保健相会合は二〇〇七年以降、ほぼ毎年開催され、昨年十二月には、地理的にも近い日中韓は緊密に連携して感染症に対応する必要がある、と確認したばかりだ。何のための会合だったのか。

 感染症には国境がない。早期収束に向け、恩讐(おんしゅう)を超えて情報交換を図り、対策を講じるべきだ。いがみ合っている場合ではない。

 

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