【埼玉県知事選挙】無念…陣営にはしごを外された行田邦子氏、異例の「青島健太氏に投票します」
令和元年8月8日告示、同25日投開票の埼玉県知事選挙ですが、この埼玉県知事選に異変が起きています。
まず、この選挙は、現職が出馬しません。現職は上田清司知事で、現在4期目で5選出馬すれば多選批判を浴びるのは必至で、もともと3期12年で退く考えだったそうです。(参考)
この上田知事の後継として立候補したのが、国民民主党の大野元裕氏で、上田知事と同じ民主党系。
対するは、自公推薦の青島健太氏で、事実上大野氏と青島氏の一騎打ちとなっております。
不可解な行田邦子氏の離脱
冒頭で異変といいましたが、ここまでを見ると、自公推薦VS野党共闘という、これまで参院選や統一地方選で見た構図とまるで同じであります。しかし、告示直前に立候補を取りやめた候補者がいます。元参院議員の行田邦子氏です。
知事選への出馬を表明していた元参院議員の行田邦子さん(53)は、六日午後に体調を崩して緊急入院し、同日夜の選挙対策会議で陣営が出馬断念を決定した。
同日夜の時点で家族も面会できていない状態だといい、陣営の担当者は報道陣に「彼女の将来にも関わるので、本人の意思とは関係なく出馬を断念させる」と話した。
上記は東京新聞の記事ですが、出馬を断念したのは、本人の意思ではなく、陣営がそう決めたとなっています。
憶測の話しになりますが、あくまでも陣営は健康上の理由を訴えています。しかし、普通に考えて、大野氏と行田氏は、共に民主党系の候補者で、両名が揃って出馬すれば票が割れるのは明らかです。そうなれば、青島氏に有利に働くことは間違いありません。
それに、これまでの選挙の流れを見れば、候補者を一本化するのが野党共闘の流れであります。
そうなると、行田氏の断念は、上の力が動いたのではないかと思わざるを得ません。
大野氏(中央)の全面支援を表明した上田知事(右)
上田知事も大野氏を全面的に支援することを表明していました(参考)。そうなると、単純な消去法で、行田氏の出馬を断念させる方向に働いたのでしょう。しかし、どうやら行田氏の不出馬の理由はそれだけではないようです。
トリッキーな入れ替え
上田知事は、多選批判を浴びるのを防ぐために、出馬しないと言いましたが、政界引退は否定しています。
5選不出馬を表明した上田知事
しかし、上田氏は6月になっても態度を明らかにせず、大野氏らの出馬の動きを見極めた上で、ギリギリのタイミングで不出馬を表明する一方、政界引退は否定した。
知事選を不出馬なのに、政界引退を否定?上田知事は71歳なのに知事選に出ずに、政治家を続けるという。3年後の参院選か?それとも衆院選か?とも思いましたが、ココがミソです。
上田知事の代わりに大野氏が出馬するということは、参議院の現職の椅子が一つ空くということです。
そこで問題となったのが、大野氏の議員辞職のタイミング。
参院選公示(7月4日)前の辞職なら、補欠選挙が今回参院選に合わせて実施されるため、定数4の埼玉選挙区は当選枠が一つ増え、最下位当選者が大野氏の残り任期(3年間)を務めることになる。
しかし、大野氏が知事選に合わせての自動失職を選んだため、10月27日の補選が確定した。
上田氏は6月15日の不出馬宣言の際、「政治活動は続ける」と国政復帰への意欲もにじませており、野党陣営も「上田氏が補選に出れば、野党の支援で当選確実」(立憲民主幹部)と読む。
上田知事は長期政権をこれ以上続けられない。しかし、政治家を引退したくない。そうなれば、国政復帰しかありません。
そのためには、次の選挙まで待っていられない上田知事は、代わりに現職国会議員を出馬させて、自分は補選で当選を目指せばいいだけで、それだけの自信もあったのでしょう。
そうなれば、現段階で国会議員ではない行田氏ではダメなんです。埼玉県選挙区の現職の大野氏でなければ。
野党が目指すのは大野氏と上田知事の入れ替えです。
そうなれば、黙っていられないのは、先の参院選を蹴ってまで埼玉県知事選に照準を合わせてきた行田氏です。
行田氏、異例の青島健太氏を支持
ギリギリまで出馬をするかどうかを明かさなかった上田知事ですが、大野氏がギリギリまでどうなるか分からなかったため、そうせざるを得なかったようです。
そんなギリギリまですったもんだしている両名に対して、出馬を断念させられた(?)行田氏は、4月に出馬を表明していて、実は、先日の参院選の不出馬を表明したのは、今年の1月です。(参考)
1月の段階から準備していたのではないでしょうか。
それなのに、(想像ですが)上田知事の都合で出馬を見送ることになるなんて、心中お察しします。
そんな行田氏ですが、動画で異例のコメントをしています。
動画4分30秒あたりで、「青島健太氏に投票します」と語っています。
通常ならば、同じ野党、同じ民主党系なのだから、大野氏を支持するはずです。
理由は「(青島氏の)県政運営のスタンスが(行田氏に)最も近い」ということらしいのですが、行田氏の無念の表情が全てを語っているように見えます。
行田氏は「私自身は病状を推してでも立候補したい気持ちでいましたけども、選挙戦は候補者一人では戦えません。選挙戦を戦い抜く状況ではない」と話しています。
「私は出たかったが、陣営から反対された」ということでしょう。そうなると、体調不良も告示前の急遽断念の理由づけに思えてしかたありません。
心痛な面持ちで「無念」と語る行田氏。
「無念です」という行田氏の発言が非常に印象的です。
ここまでをまとめると
・行田氏は1月に参院選不出馬を表明、4月に埼玉県知事選を表明。しかし、それ以前から準備をしていた模様。
・6月に大野氏が出馬表明。ほぼ同じタイミングで上田知事不出馬を表明。(上田知事と大野氏の入れ替えの密約が成立した模様)
・上田知事が大野氏の全面支援を表明。
・行田氏を陣営が説得。
・体調不良で行田氏が入院。
・行田氏が入院している間に陣営が出馬辞退を発表。
・怒りの行田氏、動画で青島氏の支持を発表。
という流れです。
SNSなどを見ていると、行田氏の不出馬にたいして「あやしい」「キナ臭い」といった意見が多く見受けられました。それだけ有権者も腑に落ちない状況だったのでしょう。
それに、埼玉県の初の女性知事誕生の可能性がなくなったことに対して、残念がる意見も多くあります。
志がある人物が、出馬を直前であきらめなくてはならない状況を作ったことに考えさせられるものがあります。
それと同時に、本当に上田知事の暗躍があったのならば、上田知事の都合で筋書きが作られたと言っていいでしょう。つまり、上田知事が政治を私物化し、野党も埼玉で人気のある上田知事に乗っかったことになります。
ネット上でも、色々憶測が飛び交っているようですが、今回の埼玉県知事選は、それだけ異例づくめだということです。