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【ドラニュース】

「何で中日はあんな選手をくれたんや…」楽天・野村元監督の“鉄平開発秘話” 移籍1年目で3割打てたワケ

2020年3月8日 紙面から

練習を見る楽天の鉄平打撃コーチ(益田樹撮影)

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◇龍の背に乗って

 2005年の秋だったと思う。楽天の次期監督就任が決まった野村克也さんから、電話がかかってきた。ある選手の特徴を知りたいと言う。「俊足と巧打。監督が好きなタイプだと思います」。聞かれたのだから仕方ない。素人なりに答えた。次に会ったのは交流戦のとき。僕の顔を見るなり、野村監督はぼやきもせずにこう言った。

 「なんで中日はあんな選手をくれたんや…」。その選手が楽天の鉄平打撃コーチだった。監督と同じ06年に移籍。すぐに試合で使っていた。

 「今の僕があるのは、見いだしてくれたからです。(移籍)1年目に僕は9打席連続三振したんです。20打席以上ノーヒットもあった。でも、変わらず使ってもらえたから3割打てました。選手って、使ってもらえなければ何もできない。すごく我慢してくださったと思います」

 野村語録の第1条は「固定観念は悪。先入観は罪」だ。数々の再生工場の傑作は、この考えから生まれている。鉄平の場合は再生ではないが開発。当時の中日は外野の層が厚かった。「うちでは無理だ」。育ってから使うのが中日で、使いながら育てるのが楽天だった。金銭で譲り受けた鉄平は、野村監督には少し磨くだけで光る宝石にしか見えなかった。

 「すべてのプレーには相手がいる。そこには意図や狙いが必ずある。だから自分も打つ、守る、走る、捕るに必ず意図をもって取り組め」

 鉄平コーチが野村監督から最初に教わり、今も大切にしている言葉だ。退任した09年には打率3割2分7厘で首位打者を獲得し、恩返しをすることができた。大恩人は天国から鉄平コーチの指導を見ている。

 「うちの若い選手はいいものをもっているんです。飛躍するきっかけをつくれれば…」。責任ある立場にいる人間は、忘れてはいけない。固定観念は悪。先入観は罪。第2、第3の鉄平は、どんな組織にもきっといるはずだ。

(渋谷真)

 

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