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【社会】<新型コロナ>地方議会、一般質問の中止相次ぐ 「議員の大切な権利」疑問の声も
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、各地の地方議会で一般質問の中止が相次いでいる。感染拡大への懸念や臨時休校、予防の対応に追われる執行部側への配慮が主な理由。だが、議会は「民主主義の学校」とも呼ばれる地方自治の根幹であり、一般質問は議員が行政全般に関して自由にただせる貴重な機会。識者からは「安易な中止は望ましくない」との指摘も出ている。 (近藤統義、渡部穣、曽田晋太郎、福浦未乃理、三輪喜人) 埼玉県内では、川越、所沢、草加、北本、鴻巣各市など既に十を超える議会が一般質問の中止を決定した。 中止の理由を感染拡大防止とした北本市議会の滝瀬光一議長は「ここ二週間が感染拡大防止のヤマ場ということでやむを得ず決めた」と説明。市内で農業を営む男性(51)は「一般質問の中止なんてやりすぎだと思ったが、ここまで自粛ムードが広がってくると、やむを得ないのかな」と複雑な表情。 鴻巣市議会では、市議から「閉庁しているわけでもないし、『大事な予算議会なのに審議をしない』と市民から捉えられかねない」として、中止反対の意見も出たという。 千葉県では通年議会を採用している鎌ケ谷市が六日、一般質問の中止を決めた。本会議では一般質問を求める意見も出されたが、森谷宏議長は取材に「通年議会のため、議長権限で必要に応じて招集、審議できる」と述べた。 茨城県では守谷、常総、つくばみらい各市が対策に追われる市執行部の負担軽減を理由に一般質問を見送った。 神奈川県内では感染者が相次いでいる相模原市や大和市、厚木市、海老名市、秦野市、愛川町、箱根町の議会が一般質問を取りやめた。各市町の議会事務局は「市民の安全安心を最優先した」と口をそろえる。ある自治体の議会事務局担当者は「一般質問が重要と言う議員もいた」と明かす。 相模原市では二月二十八日、全会派一致で一般質問を取りやめ、会期の十日短縮を決定。議会の会期短縮は、二〇一一年三月の東日本大震災の発生時以来。 一般質問は答弁書作成など職員が準備に相当な時間を要することを考慮した。四月の新年度から市民生活に影響する条例案や予算案の審議は行う。石川将誠議長は「苦渋の決断だったが、職員には市民の安全、安心を最優先に対応してほしいと考えた」と話した。 東京都内では武蔵村山、町田、稲城市などの議会が一般質問を中止した一方、二十三区では取りやめた区議会はない。杉並区議会は審議時間は変えないものの、第三者と接触する機会を減らすため、議会の日程を短縮して二日早く終える。 一般質問が中止になった神奈川県内のある市議は「質問は議員の大切な権利で、この時期だからこそ議論できることもあった。時間の短縮などできることがあったのでは」と残念がる。 ◆安易な中止よくない<埼玉大の斎藤友之教授(地方自治)の話> 年度末まで会期を延ばすこともでき、安易に中止するのは望ましくない。議会には必ずしも首長が出席しなくてもいい。もう少し冷静に対応し、審議の機会を設ける工夫をすべきだ。 ◆対策など十分検証を<地方議会に詳しい近畿大の辻陽教授の話> 首長にコロナ対策を優先させる判断もあり得なくはない。ただ、その後に開かれる議会で、それまでに行った対策などを十分検証することが必要だ。 PR情報
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