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【国際】

<女性に力を>米憲法に男女平等明記を バージニアの州議会や若者が行動

「黒人、中南米系女性の賃金格差はさらに大きい」と訴えるアヤラさん=南部バージニア州リッチモンドで

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 米国で合衆国憲法に「男女平等」を明記するよう求める動きが活発化している。今年一月には南部バージニア州の州議会が憲法修正に向け、男女平等修正条項(ERA)を批准。一九二三年に始まり、一度は消えかけた運動は若い世代にも受け継がれている。 (アメリカ総局・岩田仲弘、写真も)

 「合衆国と各州は、性別を理由に法の下の平等を否定もしくは奪ってはならない」-。ERAは男女平等をこう明記するが、保守的な共和党が支配的だった州議会で四十年以上、たなざらしにされてきた。

 転機は二〇一七年秋の州下院(定数一〇〇)の選挙。民主党は女性十一人が当選する活躍で、過半数にあと一議席まで迫った。

 初当選したハラ・アヤラさん(46)もその一人。「米人口の半数以上が女性なのに法的には二級市民。なぜ男女間に賃金格差があるのか」。女性権利団体の幹部だったアヤラさんは長年、州議会にERAを批准するよう陳情を繰り返してきたがなしのつぶてだった。追い打ちをかけるように一六年の大統領選で女性蔑視的な言動を繰り返すトランプ大統領が当選した。

 「絶望的だった。自分でやらなければ」と出馬を決意。一九年の選挙でも再選し、民主党は過半数を得てERAの批准にこぎ着けた。

 憲法修正には全五十州のうち三十八州の州議会の批准が必要。バージニアはちょうど三十八州目で修正要件を満たした形だが、司法省は「批准は一九八二年が期限」として受け入れない見解を示している。

 一方、連邦議会は二月、民主党が多数を占める下院が批准期限を撤廃する法案を可決。共和党が多数の上院の壁は厚いが、アヤラさんは「憲法に女性を反映させてこそ民主主義は機能する」と、期待を込める。

今後の活動について話し合うクチュールさん(左)とエルツォフさん=同州アーリントンで

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 アヤラさんらの行動は若い世代にも刺激を与えた。「男女平等が憲法に明記されていないなんて知らなかった。何かしなければと思った」。そう話すバージニア州の高校生ロージー・クチュールさん(16)は昨夏、批准を後押ししようと、友人のタナクィル・エルツォフさん(16)らと若者団体「ジェネレーション・ラティファイ(批准)」を結成。会員制交流サイト(SNS)などで仲間を募ったところ、登録メンバーは瞬く間に三十州、四百人に広がった。

 エルツォフさんは「生理用品をぜいたく品扱いで課税したり、LGBT(性的少数者)の友人が学校でトイレ使用の制限に苦しんでいるのを見ると、ERAは必要だと思う」と強調。団体は今、批准期限の撤廃を求めて共和党の連邦上院議員の事務所訪問を繰り返す。

 「期限撤廃に動かないなら、今秋の上院選でERA成立を争点化し、賛成する候補を支援したい」。クチュールさんは真剣なまなざしでこう語った。

<男女平等修正条項> Equal Rights Amendment(ERA) 1923年に連邦議会に初めて提出。72年に憲法修正に必要な連邦議会上下両院の「3分の2」以上の支持を得る。82年までに全50州の「4分の3」の38州の批准が修正の成立要件だったが、35州にとどまった。2017年以降、ネバダ、イリノイ両州が批准し、バージニア州が今年1月、38州目の批准を実現。3州の司法長官はトランプ政権に憲法修正を認めるよう求めて連邦地裁に提訴した。

 

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