メディアが報じない「戸籍法改正案」:立民と共産の対立構造が明らかに
5月24日に成立した「戸籍法改正案(戸籍法の一部を改正する法律案)」。この法律によって、戸籍謄本の入手が以前よりも容易になる。
また、この戸籍法改正案をめぐり、日本共産党と立憲民主党が共闘できない状況が浮き彫りになった。
戸籍法改正の背景と概要
戸籍は市区町村ごとに管理されるため、現行では、別の自治体の役所で直接取ることはできない。本籍地が現住所から離れている場合などは、戸籍のある自治体に電話や書類などで問い合わせ、請求して、送ってもらう必要があり、数日かかってしまうケースもある。
取り寄せる戸籍が、自分のもの1通ならば、それでもいいかもしれないが、遺産相続となるとそうはいかない。
例えば、父親が亡くなったとすると、親子関係などを証明する必要もあるため、父親と残された母親の故郷の本籍地から、戸籍を取り寄せなければならない。
しかも、戸籍はそれぞれ1通とは限らない。本籍地は結婚や転居に伴う転籍(除籍)などで変わり、複数の市区町村に戸籍が存在することは珍しくないためだ。相続の際には、こうした複数の戸籍をそろえなければならないため、手続きはかなり煩雑になる。
今回の改正は、この手続きをシンプルにし、現在住む自治体で、自分と直系尊属(父母、祖父母など)と直系卑属(子や孫など)の戸籍を請求できるようにするもの。請求を受けた自治体が、全国ほとんどの市区町村の情報を集約する国の新システムに照会する形で、異なる自治体が管理する戸籍を提供する。
この法律は、国民の手続きを簡素化する画期的な内容である。
上記以外にも、マイナンバーの番号を伝えれば、戸籍証明書の取得なしに婚姻届の提出や養子縁組、パスポートの発給申請、年金や児童扶養手当などの受給申請をできるようになる。わざわざ戸籍謄本を本籍地に請求して、郵送で入手するという面倒な手続きを回避できる。
戸籍法改正案でぶつかった立憲民主党と日本共産党
また、興味深いことに、立憲民主党と日本共産党がこの法案をめぐって対立した。
立憲民主党や国民民主党は賛成し、日本共産党は反対した。こんなに重要で、国民生活に影響する法案で、対立しているような両党が「候補者調整」や「選挙協力」とはお笑い草だ。
では、日本共産党の反対の理由は何か?
・戸籍法改正は、戸籍情報や保険情報を、悪しき制度のマイナンバーと結びつけ、一層のマイナンバーカードの普及の促進を狙うもの。
・出自や家族関係などの機微な個人情報を行政が一体で管理するため、個人情報が漏えいした場合のリスクが高まる。
というものだった。(参考)
そう、日本共産党は、マイナンバーの存在自体に反対しているのだ。こんな主張の政党と共闘して政権を獲得しても、一日で崩壊するのは目に見えている。マイナンバーの存続をめぐって衝突してしまうからだ。
マイナンバーのイメージキャラクター、マイナちゃんも共産党の主張にはびっくりだろう。
また、日本共産党はマイナンバー制度による個人情報漏洩を危惧しているが、個人情報がひとつの共通データベースで管理されることはない。税金は税務署、生活保護は市役所、年金は年金事務所で管理され、マイナンバーデータベースなどというものは存在しない。
繰り返すが、こんな極端な考えを持つ日本共産党と、まったく真逆の考えを持つ他の野党が、どうやって一緒に手を取り合いながら政権を担えるというのか。政権を一緒に担えないのに、選挙では協力するのは有権者への卑劣な裏切りだ!
戸籍法改正案は、現在、野党各党が目指している「野党共闘」が野合でしかないと示しているのだ。