「これは...」
モモンはベル達の救助のため、ダンジョンに潜っていた。しかし、モモンの前には崩落した壁と瓦礫の山がそびえ立っていた。瓦礫の中には冒険者が巻き込まれたのか武器やアイテムの破片が落ちている。
「アウラ、ソリュシャン、ルプスレギナ、この辺りにベル達はいるか探せ」
アインズの号令で探索を開始するがすぐに回答が帰ってきた。
「ア、...モモンさん、ここにはおりません。この瓦礫の奥にも魔石やアイテムが点在しています。おそらく、持てなくなった荷物を捨て奥に進んだと考えられます」
モモンはアウラの話を聞き、確認のためソリュシャンとルプスレギナにも目で確認を求めるが、二人とも同意見だと返答した。
「そうか、では先に進むぞ」
モモンは少し安心したように先に進む。ダンジョンの中層には上層よりもさらに薄暗く、上層では見られなかった強力なモンスターも多く出現する。
しかし、このパーティにはその境界など微塵も感じさせないほど変わらぬスピードで進んでいった。ランクアップした冒険者でも恐れるヘルハウンドの吐く炎がモモン達を襲う。しかし、モモンに炎を向ける前にアウラの鞭でヘルハウンドはこの世から去った。
「アウラ、すまんな。この階にはいそうか?」
現在、モモンは16階層に辿り着いていた。相変わらず命知らずなモンスターが襲ってくるがモモンに近づく前に一蹴されている。
「いえ、この階層にも気配を感じません」
モモンがアウラから報告を聞いていると、ソリュシャンが冒険者が落としたらしい汚れた袋を見つけた。
「モモンさん、こんなものが落ちていました」
「クサッ!!ソーちゃん、それ臭いっす!」
モモンは手にとってみたが特に何も感じない。
「ルプスレギナには臭いを感じるのか?」
「う~、はいっす。大分薄れてるみたいっすけど、モンスター避けに使ってたみたいっすね。あと、リリちゃんの臭いも微かにするっす」
モモンはまだ彼らが諦めずに生き延びていることを確信する。
「すぐに出発するぞ、この階にいないのならばさらに下に行く」
モモン達が 17階層に来るのはこれで二回目だった。初めて来たときは無駄に広いスペースがあり、モンスターも出てこなかったため特に気にせずに通りすぎた。しかし、エイナの講習を受けこの先に何がいるか思い出す。
通常のモンスターとは次元の異なる存在、
モモン達が17階に到達すると同時にけたたましいうなり声と大きな岩が砕ける音がフロアに響いた。
「オオオオオオオオオオオオオオッッ!!!」
「モモンさん、こちらです!」
うなり声の聞こえた方向にアウラがモモンを誘導する。モモンがゴライアスが現れる大広間《嘆きの大壁》に到着したとき、ゴライアスに追われるベルの後ろ姿を捕らえることができた。ベルはボロボロの体に加え、意識を失ったパーティ二人を抱え18階層に繋がる反対側の出口に向け必死に逃げていた。後ろからせまるゴライアスの巨大な拳をぎりぎりで避け、最後の力を振り絞って出口の通路に飛び出した。ゴライアスもベルを逃がすまいと拳をベルに叩きつけるが、僅かにベルのスピードが上回りベルが通りすぎた後の通路を破壊するだけに留まった。
18階層はモンスターが出ないセーフティーポイントであることを知っているモモンは一先ず安心をする。
ベル達を取り逃がしたことが腹立たしいのかまだゴライアスは壁を破壊していた。
「アウラ、この木偶は階層主と呼ばれているみたいだぞ」
モモンの言葉にアウラがゴライアスを見つめ暗い笑みを浮かべた。
「へぇー、あんたも階層を任されてるんだ?じゃああたしとどっちが強いのかな」
アウラはルプスレギナ、ソリュシャンに手出しをしないように伝えた。未だに背を向けているゴライアスにアウラは鞭を地面に叩きつけ気付かせる。
ようやく新たな敵に気付いたゴライアスはけたたましい咆哮とともに地響きをたてながらアウラに近づいてきた。七メートルもある巨体はアウラと比較するとあまりに大きい差がある。しかし、アウラは微塵も恐れてはいない、恐れる理由などないからだ。
ゴライアスの大きな手がアウラを掴みあげる。今この場に来た者がいれば少女が紙くずのように握り潰されてしまう凄惨な場面を想像するだろう。しかし、いつまでたってもゴライアスは動かない。いや、動けなかった。アウラの細腕にゴライアスの腕力が押し負けていたのだ。
「ねぇ、こんなもんなの?あんまり服汚したくないんだけど」
相変わらずゴライアスは咆哮をあげながら手の中の少女を潰そうと力を込めている。
「あっそ、まぁいいや。あまりモモンさんをお待たせするのはいけないからね。じゃあ死んで良いよ」
そう言うとゴライアスの手をへし折り拘束から抜け出した。ゴライアスはもう片方の腕でアウラを捕まえようと手を伸ばすが、すでにアウラはゴライアスの後方に移動していた。
アウラの鞭がゴライアスの首をめがけ勢いよく振られた。
グシャ
熟れた果実が落下したような音とともにゴライアスの頭が地面に落下する。
「ブイッ!!」
アウラは両手でピースサインをつくりながらモモンの方を向いて得意気な顔をしている。
「よくやったぞ、アウラ。こいつはどうだった?」
「体がでかいだけで、力もスピードも無くて、よくこんなので階層主なんて呼ばれているか不思議ですね」
「ナザリックの基準にあわせたらそう思うだろうな」
アウラの頭を撫でながら消えていくゴライアスを見つめる。
「さて、こいつも片付いたし、さっさとベル君のところに行くか」
ゴライアスが破壊した通路の瓦礫を吹き飛ばし、18階層のセーフティーポイントに到達した。一面には17階層のゴツゴツとした岩肌ではなく、草木が生い茂っていた。天井にはクリスタルの輝きで昼のように明るい。ダンジョンの中とは思えない光景に息を飲む。さながらナザリック地下大墳墓の第六階層ジャングルと似たところを感じた。もちろん負けるつもりはないが。
モモンは入り口の辺りに転がっているであろうベルの姿を探したが見つからなかった。代わりに金髪金眼の少女がベルをお姫さま抱っこをしている状況に出くわした。
「ア、アイズさん?」
「モモンさん?」
互いにお互いの存在を確認し疑問を浮かべた。
「私達はベル君達を探していました。ベル君達が中層に進出してから帰ってこず、捜索のクエストが発生し、それを受けてここまできたところです」
「そうなんだ、もう中層にまで来たんだね」
胸の中で眠るベルに顔を落としながら、アイズは改めてベルの成長に驚く。
「すまないが、先に彼らを休ませてあげたいんだが、どこか良い場所は無いだろうか?」
モモンの言葉に重症をおったベル達の状況を思いだし、モモン達を自分達のキャンプ地へ案内する。
「こっちに私たちのキャンプ地がある、彼らを運ぶのを手伝って貰っても良い?」
ベルはアイズに抱えられているが、アイズだけではリリとヴェルフは一度に運べず往復を考えているところだった。
「分かりました。問題ありません」
ここでもNPC達が自分達でやると言うが体格的に一番恵まれているモモンが女子供に運ばせている姿はさすがに不味いと感じ、ベルのパーティのリリとヴェルフを肩に背負いロキファミリアのキャンプ地まで連れていった。
「すいません、お世話になってしまって」
「なに、気にすることじゃない。それに君達は彼らを助けるためにわざわざここまで来たんだ。誇ることはあっても邪険にするようなことはしないさ」
モモンはロキファミリアのキャンプ地で最も大きなテントの中に居た。モモンの前で話を聞いているのはロキファミリアの
「紹介が遅くなってしまい申し訳ありません、モモンと言います」
「こちらこそすまない。僕はフィン・ディムナ、そして彼らはリヴェリアにガレスだ。申し訳ないがモモンという名前は聞いたことがない。どこのファミリアなんだい?」
「ヘルメスファミリアです。最近、オラリオに来たばかりなので仕方ありませんよ」
その後、ベル達が目が覚めるまで休ませてもらうようお願いし、モモン達は自分達はこれ以上迷惑はかけれないとキャンプ地から出ていった。
フィンはモモンの代わりに入ってきたアイズにモモンの印象を尋ねる。
「アイズ、彼について何か知っていることはあるかい?」
「分からない、ただ彼の力はLv.1の限界を軽く突破している。ステイタスだけで言えば私達すら超えている部分もあると思う」
アイズの答えにガレスやリヴェリアも驚く。フィンは右手の親指を舐め、モモンが出ていった入り口を見つめていた。
もう4月・・・早いっす。
でもアニメは楽しみです(о´∀`о)