文化も言語も違う外国人のマネジメントは、不安なこともあるでしょう。日本よりも警備体制をしっかりしなければならないかもしれません。

 例えば、社員がお金を持って逃げるのではないかという不安があったとします。それなら金庫の上に監視カメラをつけるなど、リスクを回避する方法はあるはずです。

 ただ、それを日本人のリーダーが考えるのは難しい。現地ならではの回避の仕方があるので、現地のリーダーがマネジメントするのが理想だと思います。

 つまり、海外で新店舗を出店したり、現地法人を立ち上げたりする場合は、日本人がリーダーとして現地に行くのではなく、現地のリーダーに任せるのです。まず、現地で採用したリーダーに、最初に日本に来てもらって会社の理念や思想を学んでもらった上で、現地の人が現地をマネジメントするのが成功するパターンなのです。

 ストライプは今後、KOEの欧米展開を計画しています。そのときは、いかに現地の優秀なリーダーを雇うか、そしてどれだけ現地のスタッフを雇用できるかがポイントになると思っています。

石川康晴社長は「社員一人ひとりの個性を最大限に活かせる組織を目指す」と語る(写真:菅原ヒロシ)

日本の会社は人への投資が少なすぎる

 自分への戒めも込めて僕が思っていることは、日本の会社は、人への投資が少なすぎるのではないかということです。例えば事業に必要なシステムをアップデートするのに3億円が必要であれば、すぐにシステム開発費として予算を組む経営者は多いでしょう。

 でも、海外で現地法人を立ち上げるために3億円の社長を雇いましょうとは、なかなか決断できません。「いやいや、社長のコストは5000万円まででしょう」「2000万円の社長はいないのか」というような議論になるのが普通です。

 億単位のシステム開発費を出す感覚があるなら、それと同じように外国人の採用にも予算を割くべきなんです。人と機械の投資の感覚をフラットにするというのがこれからの経営者の重要な視点ではないかと思います。

 特に、海外の現地法人のボードメンバーや新会社のボードメンバーにはきちんと投資をするべきです。

 例えば、「チャイナ法人をつくります」「新分野の企業を作ります」といった場合、ノウハウがない分野への挑戦になります。分からないことをするときに出し渋ると、たいていうまくいかずに大きな損失を出してしまいます。

 今回、LGBTと外国人の働きやすい環境づくりについてお話してきました。今後ストライプは、グループ全体でダイバーシティを推進し、長期的にグループ従業員の3人に1人を外国人に、そしてすべての人が自分らしく働ける環境を整えたいと考えています。多様性を持ち、強い競争力を誇れる組織を目指します。

(構成:尾越まり恵、編集:日経トップリーダー