瑞巌寺
清流をはさんで岩肌に観音菩薩

松坂の市街から車でものの20分も走ると、ちょっとした深山の景色になってくる。瑞巌寺のたたずまいは、そんな渓谷の中ほどにある。
境内の真ん中を流れる観音川、背後の山を観音岳と呼び、付近は古くから密教の修行の場となっているというから、その雰囲気も密やかなものだ。
瑞巌寺の開基は弘法大師と伝えられ、元は真言宗の寺であったが、戦乱や大地震で荒廃していたのを、江戸中期に知恩院から来た門超上人という僧が復興し、以後、浄土宗の寺として栄えてきた。川の崖上に建てられた本堂内に仏さまの姿はなく、正面に丸い穴が開いている。よく見ると対岸の崖にお顔だけが浮き出ている仏さまが拝めるが、この仏さまこそ、寺が守る弘法大師作の十一面観音の姿。一時は姿を隠していたが、門超上人ら一行が紫雲たなびくこの地を訪れた際に、念仏を唱えると一夜にしてそのお顔が、岩肌に現れたと伝えられている。境内には川の水をせき止めて作った鏡池、小高い山に三重の塔、伊勢湾を借景に弁天堂や数々の神仏がまつられる庭園などが自然の地形を利用して配されているが、これも観音さまのお告げで作られたもので、15年の歳月と多くの寄進で文化9年(1812)に完成したという。
寺の名物に紫蘇飯(しそめし)があるが、これは紀州藩主がこの地を訪れたときに、住職がもてなしのために、乾燥させた紫蘇の粉をまぜたご飯を出したところ大変よろこばれ、「これを寺の名物にせよ」との言葉をもらったことに始まるという。これは予約制なので、前もって連絡をとのこと。

浄土宗新聞平成4年9月号より記載

寺院情報
寺院番号 23-107
山号 妙法山
寺号 瑞巌寺
所在地 〒515-0847 三重県松阪市岩内町707番地
TEL 0598-58-2977
S