立憲民主党と日本共産党との共闘は不可能
夏の参議院通常選挙が迫ってきている。選挙に向けた各党の動きで注目を集めるのが「野党共闘」。しかし、思想や政策が異なるのに実現できるとは到底思えない。立憲民主党と日本共産党の綱領や政策などを比較した。
●理念の違いは鮮明(綱領の比較)
まず、両党の綱領を比較し、基本理念の違いを検証する。
①立憲民主党:一応の市場経済容認と憲法原理主義
私たちは、市場経済を基本とし、過度な自己責任が押しつけられることなく誰もが安全で安心して暮らすことのできる社会を目指し、将来に希望の持てる経済を実現します。
立憲民主党綱領
立憲民主党は、一応は綱領において市場経済を容認している。
また、立憲民主党の枝野代表は、立憲主義について以下のような主張を唱えている。
「(憲法違反の)安保法制を前提としながら自衛隊を憲法に明記したら、立憲主義違反を事後的に追認することになる」
引用元 立憲民主党・枝野氏のデタラメな立憲主義を糾弾
枝野氏の主張は、すべての政策や法律は憲法の狭義の内容をよりよく体現するようになっているべき、という「憲法原理主義」と評すべき極端な主張をしているのだ。
②日本共産党:目標は社会主義革命
党は、この状況を打破して、まず平和で民主的な日本をつくりあげる民主主義革命を実現することを当面の任務とし、ついで社会主義革命に進むという方針のもとに活動した。
引用元 日本共産党綱領
日本共産党は、市場経済を否定する共産主義社会へ我が国を導こうとしているのである。この点からして立憲民主党と目指すべき社会を共有していない。
しかも、共産党の聖書であるマルクスによる『共産党宣言』には、「共産主義者は、これまでのすべての社会秩序を暴力的に転覆にすることによってのみ、自己の目的が達せられることを公然と宣言する。支配階級よ、共産主義革命の前におののくがよい」と書いてある。
暴力的に社会を破壊することでしか目的を達成できない。それが共産主義だ。
現行憲法を頑なに墨守する立憲民主党に対して、日本共産党の最終目標は、革命により現体制を破壊し日本を共産主義へと導くこと。しかも、日本共産党が共産圏国家と同じく、共産主義を憲法に明記する改憲を行うのは間違いない。立憲民主党がそれを許容するはずもない。実際、憲法論に関しては枝野代表の主張を志位委員長が批判したこともあるくらいだ。
両党間は基本理念からして、大きな隔たりがあるのだ。
●思想を反映した政策は当然異なる
思想が異なる以上、政策面でも不一致が当然見受けられる。
・日米同盟観の相違
立憲民主党は、党の外交・安全保障政策で「健全な日米同盟を軸とし、アジア太平洋地域、とりわけ近隣諸国をはじめとする世界との共生を実現します。世界の平和と安定と繁栄を推進するために、積極的な平和創造外交を展開します」と、一応は日米同盟を軸とすることを主張している。辺野古移転で右往左往し、平和安全法制に反対し、トランプ政権に批判的な立憲民主党だが、一応の建前はそういうことらしい。
集会で発言する、志位委員長
だが、日本共産党の政策は大きく異なる。彼らは日米同盟だけでなく、その基盤となる日米安全保障条約を廃棄&在日米軍撤退を目指している。実際、志位委員長は「今日のこの日を、日本全土を従属の鎖にしばりつけた日米安保条約をこれ以上続けていていいのかということを、全国民が真剣に考える日にしようではありませんか。そして、安保条約10条では、国民の総意によって安保条約廃棄を通告すれば、安保条約は1年後にはなくなると書いてあります。米軍には荷物をまとめてアメリカに帰ってもらう。沖縄からも日本からも帰ってもらう。そういう安保条約廃棄の国民的多数派をつくっていこうではありませんか。」と、日米安保条約廃棄派への参入の呼びかけを集会で行っている。
建前だけでも日米同盟を維持しようとする立憲民主党、日米安保即時破棄&在日米軍撤退の日本共産党の政策の矛盾は、とてつもなく大きい。
・自衛隊の存在
2017年10月8日の、8党党首討論会で、枝野代表は「そうです。自衛隊は合憲です、われわれは。」と、自衛隊を合憲だと認めている。
それに対し、日本共産党は、自衛隊を違憲だとして完全に否定的だ。日本共産党第27回大会決議で、「安保条約を廃棄した独立・中立の日本が、世界やアジアのすべての国ぐにと平和・友好の関係を築き、日本を取り巻く平和的環境が成熟し、国民の圧倒的多数が「もう自衛隊がなくても安心だ」という合意が成熟したところで初めて、憲法9条の完全実施に向けての本格的な措置に着手する。」と、自衛隊の解散を主張している。
このように、自衛隊についての基本政策においても両党の間には隔たりがあることがわかる。
●国会での採決の対応
前回の国会で、採決がとられた案件は40件(参議院)。そのうち7件の案件で、立憲民主党と日本共産党は、別行動している。
その7件は、以下の案件である。立憲民主党は賛成、日本共産党は反対である。
・日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件
・研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律の一部を改正する法律案
・天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律案
・サイバーセキュリティ基本法の一部を改正する法律案
・国家公務員等の任命に関する件「個人情報保護委員会委員(中村玲子君及び藤原靜雄君)、地方財政審議会委員(堀場勇夫君、植木利幸君、野坂雅一君及び宗田友子君)及び公安審査委員会委員(外井浩志君)」
・国家公務員等の任命に関する件「公安審査委員会委員(遠藤みどり君)」
・特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案
衆議院でも以下の法案で、立憲民主党は賛成、日本共産党は反対した。
・研究開発システムの改革の推進等による研究開発能力の強化及び研究開発等の効率的推進等に関する法律の一部を改正する法律案
・サイバーセキュリティ基本法の一部を改正する法律案
・特別職の職員の給与に関する法律の一部を改正する法律案
・天皇の即位の日及び即位礼正殿の儀の行われる日を休日とする法律案
・日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件
日欧EPA、サイバー対策、陛下の即位日の休日化、研究開発の推進にまで反対するのが共産党だ。恐れ入る。このように数多くの法案で立憲民主党と日本共産党は国会で別行動をとった。にもかかわらず、選挙の時だけ野合しようとするのは、支持者や国民への裏切りに他ならない。
もしも、こんな連中が政権を強奪できたとしても、一瞬で空中分解は間違いない。そして、それは国民生活の大混乱に間違いなくつながる。
机の上では笑顔で握手をしておいて、机の下で足の蹴り合いをしているのが立憲民主党と日本共産党なのだ。