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【大相撲】

【北の富士コラム】番付は力士の命 賞金も懸賞金も出るし無観客など関係あるものか

2020年3月6日 16時37分

観客はいなくても優勝賞金、多少減るが懸賞金も出る=写真は2018年の夏場所

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 春場所は無観客。ここまでの流れは、本紙で詳しく書いているので、私が付け加えることもありません。今、私が言えることは、国難とも思えるご時世に、相撲をとれる幸せを力士一同は決して忘れてはならない。その一言だけです。

 無観客と言っても、本場所であることに変わりはない。テレビの実況もある。いつも通りとは言うものの、初めてのことで相撲をとらない私でさえ、戸惑いを禁じ得ない。当然、力士諸君も同じだろう。それでも、序盤をすぎるころには慣れてくるだろう。

 最近、ファンの方からお客さんがいないと力が出ないのでは? と質問されることが多い。心配はごもっとも。しかし心配はご無用と言いたい。力士にとって番付は命。その一枚の上り下りに命をかけて力士は戦うのです。言葉は悪いが、お客さまがいようがいまいが関係ありません。

 優勝や三賞の賞金も変わらずに出ます。不景気の風が吹き荒れるのに懸賞金も、多少は減ったが、たくさん懸けていただいている。これで文句をいったらバチがあたる。きっと力士たちはいつも以上にいい相撲をとってくれると私は信じている。

 力士たちは四股を踏む。五穀豊穣(ほうじょう)を願い、邪悪な者を追い払うのが力士本来の姿である。館内は無人でも、テレビの前では不要不急の外出を禁じられた人たちが初日を楽しみに待っている。さあ、待ったなしだ。

 しかし、今場所はこれという話題がない。優勝争いも予想が難しい。1年前までは白鵬といっておけば、ほぼ間違いなかったが、下克上がさかんな今は、誰が優勝してもおかしくない。初場所の徳勝龍が典型だが、予想はしなければならない。

 稽古は見ていないし、各部屋とも稽古は見学禁止。仕方ないから勘で占うとしよう。数少ない情報では、鶴竜がやたらに調子が良いらしい。3日間で50戦無敗と絶好調。舞の海君に話を聞くと、稽古場の強さは当てにならないと一笑されたが、私はそれでも1番手に挙げる。今場所に進退を懸けている。不本意な成績なら、引退も覚悟しているだろう。その覚悟が吉と出るか凶と出るか、序盤が大事である。

 続いては白鵬か。貴景勝は先場所、孤軍奮闘で頑張ったが、徳勝龍に赤っ恥をかかされた。一番優勝したいのは、貴景勝ではないか。.

 朝乃山は初場所、10勝5敗と何とか大関昇進の権利は得たが、先場所のように下位力士に負けてはいけない。勝った時の相撲のスケールの大きさと右四つの型は申し分ない。内容も問われるだろうが、12勝は可能だろう。新関脇の正代も11勝、12勝と急速に勢いを増してきた。素質は申し分はない。本人のやる気だけだ。大いに期待している。北勝富士も上位に強いだけにチャンスはある。本人も意欲的だ。

 平幕上位陣にも、ひとくせもふたくせもある力士が多い。先場所の覇者徳勝龍は、何番勝てるのか。元大関の高安も気になる。中でも油断できないのが御嶽海だ。調子に乗ると一気に優勝してもおかしくない。

 今、初日の取組が入った。白鵬は遠藤。先場所の悪夢が残っていると苦戦は必至。鶴竜は大栄翔。これも難敵だ。引いたら一気に押し出される。

 そのほか見どころは多いが問題は内容。見ている人が元気が出るような相撲をとってもらいたい。力士諸君も体調を崩さず、全身全霊をかけて土俵を務めてほしい。不肖私めも老骨にムチ打って大阪に向かいます。本来なら、不要不急の人は、家でジーッとしているのが一番良いのだが、それでは男がすたる。何とか15日間、頑張ります。では、行ってきます。(元横綱)

 

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