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【ドラニュース】

戦略は現場じゃなく、会議室で決まる…『データ野球』 アナログ人間にはその“時々不正解”が気持ちいい

2020年3月7日 紙面から

4回表2死、右前打を放つビシエド(益田樹撮影)

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◇龍の背に乗って

 7回、ビシエドが外角のカットボールを打ち返し、右翼・ブラッシュの頭上を越える二塁打を打った。イニングの先頭打者。あなたが守備側の監督なら、どこを守らせますか? 引っ張る打球に備え、内野手は全体的に左に寄る。長打を警戒し、外野手は定位置より下げる…。ざっと、こんな感じだろう。ところが、楽天は右翼だけは定位置より前に置く。その理由を聞いたとき、僕は深く考えさせられた。

 「ビシエド選手の右翼への打球は、とらえたときはフェンスを越えるからですよ。それなら弱い打球に備えて、少し前に守る方がいい」

 ファンならご存じのように、ビシエドはナゴヤドームの右翼席にも打ち込むだけの力はある。「だから後ろに下げる」ではなく「だから前に寄せる」という発想だ。

 感情としては否定したいのだが、僕のようなアナログ人間には、それだけの根拠も知識もない。時代は動く。野球は変わる。専属のアナリストを雇い、トラックマンのデータをとことん洗い出して守備位置を決めている球団は、楽天以外にもIT系の親会社を中心にいくつか存在する。選手によっては「何を投げても絶対にそこには飛ばないコース」があるからだ。

 「今日は(打者にとって)アゲンストだったし、球場も狭いからなおさらでしょうね。タンケはライトには詰まったヒットもありますし。他にも筒香選手(レイズ)も引っ張られたらホームランなんて傾向は出ていましたから」

 中日の鈴木スコアラーはこんな感想を聞かせてくれた。今や会議室で戦略が決まる時代。だからこそ、僕はひそかに気持ちよかった。ビシエドの4回の右前打は前に守っていたのに捕れない弱い打球だったし、7回は普通に守っていれば追いついたはず。たぶん偶然。楽天の方針がこれでブレないこともわかっている。だけど「正解」がときに「不正解」になってこそ、スポーツは楽しいのだ。

(渋谷真)

 

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