ナザリック in オラリオ   作:タクミ( ☆∀☆)

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思ったより長くなったのだ途中で切りました・・・



二人の超越者

「ほう、面白い。その提案受けようではないか。」

 

ナザリックの玉座の間にナザリックの僕達はアインズの言葉に驚いた。そしてなぜそのような提案を受け入れるのかアインズの智謀に追いつけない自分自身を恨んだ。理解が追い付いたのはデミウルゴスとアルベド位であろう。もちろん彼らもアインズの考えの一部しか理解しきれていないのは承知の上だ。

そして不敬にも絶対の支配者であるアインズにペラペラとのたまう男に視線が集まる。人間の姿に近い僕だけではない。悪魔やドラゴン、アンデッドなど玉座の間に入ることを許された精鋭達からそのようなプレッシャーを受ければ、指一本すら動かすことはできないだろう。実際に男の従者は完全に固まって、固唾を呑んで動向を伺っている。しかし、視線の中心にいる彼は場違いのように笑みを浮かべていた。なぜなら彼もアインズと同じ超越存在(デウスデア)なのだから。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

「この前のモンスターフィリアでの騒動は何か分かったか?」

 

アインズは自室の机に座りセバスからの報告書を眺める。報告書には彼の性格が表れているのだろう、要点を分かりやすく纏められている。アインズは軽く目を通し、既に内容を把握しているであろうアルベドに訊ねる。

 

「はい、セバスからの報告ではモンスターを脱走させた犯人は不明とのことです。」

 

「ん、それなりに警備も居たんだろ?誰も目撃していなかったのか?犯人がかなりの強者なのか、それとも警備がお粗末なほど脆弱だったのか?」

 

「事件後の聞き取り調査では、襲われた者は事件前後の記憶を無くしているようです。そしてその者達は心を抜かれたように倒れていたようです。」

 

「ほう、では犯人は《人間種魅了(チャームパーソン)》のような精神支配の能力があるようだな。いや、モンスターも支配していた可能性が高い。《全種族魅了(チャームスピーシーズ)》の方が近いか。」

 

「はい、アインズ様のご推察の通りかと。さらにアウラの支配を上回ることを考えるとかなり警戒をするべきです。」

 

「ニューロニストの所に持っていったミノタウロスはどうなった?」

 

「はい、やはり記憶は不鮮明ですが()()()()()を探させていたようです。ここからは推測ですが、アインズ様の前で畏れ多いですが、神と称する不敬な輩が関係していると愚考します。」

 

「やはりアルベドもそう思うか。神と言うだけあって厄介だな。神の力がどの程度か考慮しなければならない。最悪、精神支配が無効のアンデッドである私すらも支配できるかもしれんからな。」

 

その瞬間、ピシリと空気が凍る。見るとアルベドから黒いオーラが漂っていた。

 

「ではナザリック全軍を持って早急に対処させていただきます。」

 

「よせ、よすのだ、アルベド!!事は慎重に進めなければならん。まだ敵対するような行動は控えるのだ。」

 

「ですが、アインズ様の御身に万が一のことがあってからでは遅いのです。そのためにも徹底的に危険は排除すべきです。」

 

「アルベドが心配してくれるのは嬉しいが、私の計画があるのだ。そちらに影響が出てしまっては意味がない。すまんな、アルベド。」

 

NPCがはやまった行動をしないよう適当に思い付いたことを口にして未来の自分に問題を丸投げする。なんとか納得してくれたかとアルベドをうかがうとクネクネと体を揺らしながらポツリと呟いた。

 

…ですから。」

 

「・・・アルベドよ、お前の設定を変えて「御迷惑でしょうか?」」

 

「いや、その「御迷惑でしょうか?」」

 

被せぎみに問いかけてくるアルベドの気迫にアインズは否定することしかできなかった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

旅人の服装に身を包み、特徴的な羽の付いた帽子を被る一人の男。その顔立ちは端整で多くの女性がその甘いマスクに惹き寄せられる。彼の名はヘルメス、オラリオでも中位ランクに属するファミリアの主神である。娯楽に飢えているオラリオの神達の例外に漏れることもなく、彼も自由気ままに歓楽街や旅に出るなど勝手気ままな生活をしている。彼は今、オラリオの西のメインストリートの雑踏の中に紛れ歩いていた。

その後ろを歩くのは彼のファミリアの団長であり、勝手気ままに過ごすヘルメスの代わりにファミリアを纏めているヒューマンの女性、アスフィ・アンドロメダだ。チャームポイントの彼女の眼鏡の奥にある目の下にはくまができており、彼女の気苦労がうかがいしれる。

 

「どうだい、アスフィ?手がかりは見つけられたかい?」

 

「はい、いくつか目撃情報があります。対象の名前はモモン、そしてナーベです。また別の日に双子と思われるダークエルフの子供がいますが名前は分かっていません。」

 

彼らが追っているのはモンスターフィリアの際にミノタウロスを剣で吹き飛ばしたとされる冒険者だ。その全身鎧の男はまだファミリアに入っていないという。もしそれが本当であればかなりのイレギュラーだ。娯楽好きのヘルメスにとってぜひ会ってみたいものだ。

そして、アスフィがさらに報告を続ける。

 

「騒動以降、彼らの姿を目撃したものはいません。」

 

「どういうことだい?オラリオの外に出た訳でも誰かが匿っている訳でもダンジョンにいるということでもないのかい?」

 

「はい、忽然と姿が消えています。いくらどこに居ようと痕跡を消すことは出来ません。しかし、ミノタウロスと闘っていた場所を最後に完全に消息を絶っています。」

 

ヘルメスはアスフィの報告に考えを巡らせる。

 

「それともう一点気になることが。この二人が現れた同時期にラキアから取引で来ているという商人の娘とその執事が居るのですが、オラリオを出る際にラキア方面ではなく例の丘に向かっているようです。」

 

「例の丘っていうと一夜にしていくつもの丘が出来たという曰く付きの場所かい?」

 

「はい、発見時に調査したときは特に何も見つけられませんでしたが・・・。それと取引と言うことですが、彼らは魔石を売っているようです。もちろん冒険者でもない彼らが正式な取引は出来ませんので裏ルートで安く買い叩かれているようです。」

 

「商人が魔石を?かなりきな臭いな。今、その二人はどこに居るんだい?」

 

「今はオラリオに滞在しています。しかし、周りを警戒をしている素振りは全くなく、逆に罠なのではないかと考えたくなる程です。」

 

「そうか。・・・分かった、じゃあ案内してくれ。」

 

「って今の話聞いてたんですか?罠の可能性が高いんですよ!」

 

「罠なら喰いついてあげなきゃ何も得られないだろ。なぁにいざとなったらしっかり俺を守ってくれよ。期待してるぜ。」

 

そう言うとヘルメスはアスフィの頭をポンポンと叩いた。

 

「もうやだ・・・」

 

アスフィのため息混じりの言葉はヘルメスには届かなかった。

 

ーーーーーーーーーーーー

 

ヘルメスとアスフィが訪ねたのはオラリオでも中級レベルの宿の一室だった。清潔さは低レベルな宿に比べれば高いが、簡易のベッドがあるだけの質素な宿だ。しかし、その部屋に入ると周囲と隔絶した雰囲気を感じた。

 

中に居たのは調査通り二人。しかし、明らかに雰囲気が違う。報告では商人の娘は我儘で傲慢なお嬢様らしく滅多に人に会うことはないが、絶世の美女と聞いている。しかし、中に居た彼女はあまり見かけないデザインだが遠くから見ても高級な素材のメイド服を着て迎えている。その姿はこの姿が本当の姿であるように様になっていた。またもう一人の執事は格好こそ代わりないが温厚な好々爺という報告とは対照的に鋭い眼光でこちらを迎え入れた。

 

「ようこそ、お待ちしておりました。()()()()()、我が主、アインズ・ウール・ゴウン様が歓迎したいとのことです。」

 

アスフィは聞こえない程度に舌打ちをした。すでにこちらの情報を把握しているだけでなく、先程ここに来ることを決めたことすらも知られているからだ。

 

「ヘルメス様、ここは危険です。お下がりください。」

 

しかし、ヘルメスはアスフィの手で制し、下がるように促す。

 

「アスフィ、大丈夫だよ。彼等は僕達を歓迎してくれるみたいだ。」

 

ヘルメスはアスフィの頭をポンポンと叩き落ち着かせる。普段と変わらないヘルメスの姿に安心を感じる。冷静さを取り戻したアスフィはヘルメスの言う通りヘルメスの後方に下がった。

 

「準備は整ったでしょうか?それではこちらになります。」

 

セバスは何事も無かったかのように二人を奥に案内する。アスフィはヒヤリと汗を流した。少し前まで一触即発の可能性があったにも関わらず、セバスはそれを意にも介していなかったからだ。

セバスが案内した先には人が全身を写すほど大きな鏡のようなものの前が置かれていた。しかしそこに写るのは前に立つセバスの姿ではない。全てを飲み込みそうな深い深い闇が渦を巻いて広がっていた。

 

「この中をくぐっていただければ我が主、アインズ様がおられるナザリック地下大墳墓へと繋がります。それでは私は先に失礼いたします。」

 

そう言うとセバスは闇に飲み込まれるように消えていった。その光景を目にした万能者(ペルセウス)の二つ名をもつアスフィは驚愕する。しかし、意を決し前を歩くヘルメスへと続くのだった。

 

 

 

 

 




二人の超越者がついにナザリックで接触を果たします。
さていったいどうなることやら・・・

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