甘露煮などにして日野町で盛んに食べられているサワガニ。環境変化で天然ものが減っている中、日野町高尾の製材業・松本栄さん(76)らが養殖に取り組んでいる。まったくの素人で参考になる資料も少なかったが、養殖場を造って孵化(ふ・か)にも成功。「サワガニの町」への夢は膨らむ。
3年前の夏、松本さんの孫が遊びに来て近くの川でサワガニを4匹取ってきた。大きな植木鉢で飼育していると交尾の様子が観察できた。「養殖して、町おこしの事業にできないか」。松本さんが役員を務め、町の活性化に取り組む第三セクター「まちづくり日野」の有志で研究を始めた。
だが、卵が孵化しない。自然環境に近づける「企業秘密」の方法で試した結果、04、05年と続けて成功。餌は文献を参考に、魚のアラなどを与えている。
現在飼っているのは約5千匹。うち約1千匹が孵化させたものだ。昨年かえったカニは約500匹で、甲羅の幅が6ミリほどに育った。3年ほどで、出荷できる2・5センチほどの大きさに育つ。
屋外ではイノシシやイタチに食われてしまうため、松本さん宅にある約30平方メートルの空き部屋を飼育場に。費用は県の補助を含め180万円。2段の棚に、建設業者がセメントを練るのに使う深さ18センチの容器13個を置いて飼っている。水温が17度で一定した井戸水を3センチほどの深さになるよう補給。夏場はこまめに水温を測り、水の取り換えに注意を払う。
昨冬、地元の料理旅館に出荷してみたところ、殻が軟らかく食べやすいと好評だった。北陸地方から教材用に送ってほしいという要望もあり、50匹を送った。
県栽培漁業センターによると、サワガニは産卵数が少なく、採算に乗せるためにはかなりの数を飼育する必要があるという。ハードルは高いが、松本さんらはより大きな産卵場を今夏に造り、5年後には量産体制を整えたいと考えている。
松本さんと、まちづくり日野の窪田憲三社長(59)は「加工して土産として販売するとか、ペット用で売り出すとかできないだろうか。新たな事業の種にしたい」と話している。
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昔、捕まえたサワガニを生きたままから揚げにして食べたことを思い出しました。