おじいちゃん、ごめんなさい。
僕の冒険は冒険に出る前に終わりそうです。
なんでこんなことになっちゃったんだろう。
今、僕の目の前には魔王が座っています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「申し訳ございません。」
その老齢の執事に声をかけられたのは、僕がおじいちゃんの死を期に冒険者になろうとオラリオヘ向かっている途中だった。さっきまで誰もいなかった気がしたんだけど、気のせいかな。どこかの貴族の執事なのかものすごく凜としていて、僕のおじいちゃんとは全然タイプが違うから突然でかなり緊張した。
「は、はい!何でしょうか。」
「突然で申し訳ありません、我が主が話をお聞きしたいとのことで大変申し訳ありませんがお時間をいただいてもよろしいでしょうか。勿論、謝礼は出させていただきます。」
突然の申し出に頭が混乱しながら貴族様相手に変なことしたら大変だと断ろうと考えたが、目の前のお爺さんの顔を見ると亡くなったおじいちゃんを思いだしなかなか断れず渋々了承した。
「ありがとうございます。自己紹介が遅れました、私はセバスと申します。」
「あ、えと、僕はベル・クラネルです。」
「ではクラネル様、お手数ですが、私についてきて頂けないでしょうか?」
そう言うとセバスさんはオラリオとは逆の方向に歩きだした。貴族様のお屋敷に行くんじゃないのかなと疑問を抱いていると、今まで聞いたこともないような大きな霊廟が目の前に現れた。
「せ、セバスさん、…こ、ここって?」
「遅ればせながら、我が主がおわすナザリック地下大墳墓でございます。」
僕の常識は一気に崩壊した。貴族様はお墓に住んでるってこと?直ぐに帰りたいが了承してしまったため言い出しずらい。僕がお墓をキョロキョロと見回していると、セバスさんは誰かと話してるみたいだった。一人しかいない気がするけど…。
突然現れた黒い靄を潜るとそこはまさにお伽噺に出てくるような世界だった。一つ一つの調度品が一年働いても買えそうにない豪華なものが飾られていた。セバスさんの後ろを縮こまりながら歩いていると、審判の門とでも言うような扉の前に着いた。ひとりでに開いていく扉に緊張がピークに達していた。どんな御方なんだろうか、失礼のないようにしないとと考えながら門の奥を眺めた。
世界が凍ったような気がした。
そこには高さが優に2メートルはある白銀の昆虫のようなモンスター、蛙の頭に羽まで生えている悪魔、綺麗な女性には角と黒い羽が生えている。さらに双子のダークエルフと綺麗な女の子……ってこれはいいのか。そして一番奥に堂々と座っている骸骨のアンデッド。
見ただけで分かる。絶対に強い、僕は今日死ぬ。セバスさんを見ることも出来ない。もし見たときにヒューマンじゃなかったら立ち直れない。
固まっている僕に骸骨の主は声をかけてきた。
「ようこ「うわぁーーーーわーー」…」
僕は全力で逃げ出した、逃げ道なんて分からないし逃げれるとも思わないけど。後ろから何か聞こえるけどまるで頭に入ってこない。すると突然、何か耳心地の良い声が聞こえてきた。
「御身の前で失礼ですよ。「戻りたまえ。」」
するとそうするのが当たり前のように僕の意思に関係なく体が玉座の間へと歩きだした。全く言うことを聞かない体に抵抗しようとするが
「大人しくしたまえ。」
この声になすすべもなく玉座の前に連れていかれる。僕は一体どうなってしまうんだろう。やっぱり逃げたのは不味かったよね。自分の身に降りかかる近い将来に悲観しながら断頭台の上に立たされた死刑囚の気分で骸骨の主の言葉を待った。
「部下が失礼をしたな。すまなかった。」
………あれ、言葉が通じてる。って言うか謝罪された!もしかしたらなんとかなるかもしれない。そう考えていると骸骨の主は自己紹介をし出した。
「我が名はアインズ、アインズ・ウール・ゴウン!!」
名前とともに放たれたものすごいオーラにあっさりと僕は意識を手放した。
一応、アインズ様が主人公のつもり。
次からはアインズ様ターン。