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【格闘技】

空手の発展に貢献した“きゃりぱみゅ”植草歩 これからは絶対王者目指して燃えてくれ 【山崎照朝コラム】

2020年3月5日 11時10分

東京五輪代表が内定した組手女子の植草歩(右)と宮原美穂

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 空手の組手女子61キロ超級で五輪代表が確定している植草歩(27)=JAL=が3日、プレミアリーグ・ザルツブルク大会から帰国し、「(五輪会場の)日本武道館できちんと優勝して日本中に空手の良さを伝えます」と金メダル宣言。エースの頼もしさを見せた。

 日体大柏高から帝京大で活躍した植草。一時は引退も考えたが、8年前に東京五輪の可能性が浮上したことで現役続行を決意。正式決定後は練習に打ち込む一方、空手のアイドルとしてイベントに借り出され、普及に努めてきた。

 それが練習不足に影響したのか、昨年は1月のプレミアリーグパリ大会優勝後は決勝進出しても金メダルを逃し、11月のマドリードでは1回戦敗退。かつての絶対王者らしからぬ結果が続いている。

 植草は「五輪を目指した当時は上り調子で楽しかった。何でこんなに勝てるんだろうと自分でもわからない状態だった」と振り返る。そして「昨年から皆が安心できるような結果は出せていない。これもオリンピックで優勝するひとつのステップだと思っている。あと5カ月、自分の人生を懸けて追い込んで絶対に優勝する」と巻き返しに自信をのぞかせた。

 話の中で繰り返し口にしたのは空手への思いだった。

 「この8年間はあっという間。空手界は大きく変わって注目してもらえる様になった。それがすごくうれしく、自分が先陣を切って引っ張ってこられた」

 「オリンピックに入れただけではなく、きちんと優勝するところまで自分が持って行き、大きく盛り上げて終わりにしたい」

 自身の不本意な成績を嘆くのではなく、空手発展への願望を力説した。

 全空連は東京五輪で最低でも男女で4個の金メダルを目標に掲げ、中でも植草への期待は大きい。だが今年もプレミアリーグ初戦のパリは5位。ザルツブルクも精彩を欠いて4回戦敗退。植草は外国勢のレベルがアップしたことを指摘する。

 「空手の競技力が上がっている。以前はここできちんとポイントが取れたのに今は取れなくなっている。かつては決勝までいくのにヤマ場は1個くらいだったが、今は1回戦から常にヤマ場」

 

 苦戦の原因のひとつに、ライバルに研究されていることを挙げた。トップアスリートに求められるのは常に絶対的強さ。研究されたから、というの理由にならない。

 絶対的強さを保っているのは男子形の喜友名諒(劉衛流龍凰会)だけと言っていい。植草にも組手女子で不動の王者として君臨した時代がある。それだけに「自覚しています。絶対に勝たなければいけないことは分かっている」と語気を強めた。

蹴りをくりだす植草(左)=2019年のプレミアリーグ東京大会で

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 最近は得意とする「中段突き」以外の技を強化するため、異種格闘技を習うことで技の幅を広げる努力をしている。空手界の“きゃりーぱみゅぱみゅ”と言われながら、空手界を引っ張ってきたエースの植草。もうアイドルはいいだろう。組手に集中した取り組みに期待したい。(格闘技評論家=第1回オープントーナメント全日本空手道選手権王者)

 ▼植草歩(うえくさ・あゆみ) 1992年7月25日生まれ。千葉県八街市出身。168センチ、68キロ。8歳から勝正館八街道場に入門。柏日体高(現日体大柏高)、帝京大出。JAL所属。2016世界選手権優勝。13、17年ワールドゲーム2連覇。17年アジア・シニア大会優勝。15~18年全日本4連覇。18年プレミアリーグ(PL)ドバイ、ロッテルダム、ベルリン優勝。第18回アジア競技大会優勝。19年PLパリ、東京優勝。身長右構え。得意技は中段突きと中段蹴り。

 

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