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【社説】

買い占め問題 冷静で良心的な消費を

 新型コロナウイルスによる感染が拡大する中、マスクやトイレ紙などの買い占めが収まらない。生活防衛する姿勢は理解できなくもない。だが医療施設を中心に不足は深刻で良心的消費を求めたい。

 買い占めはマスクやトイレ紙、ティッシュペーパーのほか米類、カップ麺などの保存食品で目立つ。直接の原因はネット上に流れたデマとの見方が強い。

 ただ店頭での行列を目撃して不安にかられ、デマと分かっていながら列に加わるパターンも多いはずだ。その際、使用量が急に増えるはずのないトイレ紙を買いだめしたり、ついでに他製品を多めに買い求めるケースもあるだろう。暮らしを守るという意味ではある程度理解できる。

 だが日本家庭紙工業会によると、トイレ紙の場合、二〇一九年は97・7%が国内生産(出荷ベース)。他の紙製品や食品の在庫も国内生産品については十分だ。東日本大震災のときのように、国内の生産拠点や流通網が破壊されていないからだ。

 買い占めは結局、暮らし全体に悪影響を及ぼす。とりわけ病院や介護施設、長い行列に並ぶことが困難な高齢世帯への打撃が大きい現実を改めて直視したい。

 各製品のうち、マスクについては買い占めに加え、極端な品薄も依然続いている。日本衛生材料工業連合会の調査では、一八年度に国内で流通したマスクの八割は海外からの輸入品で、大半は中国からだった。

 医療従事者にとってマスクは、自らを守るという以上に患者への感染を防ぐという意味で必需品だ。食品などの製造現場でも着用が不可欠だ。

 今回は買い占めにあきたらず、品薄に乗じたネットでの高額転売、さらにはマスクを抱き合わせた販売をしたケースも出た。直接命に関わる製品であり厳に慎んでもらいたい。同時にマスクの在庫管理や生産体制については今回を教訓とし、抜本的な見直しを早急に図るべきだろう。

 政府は国民生活安定緊急措置法に基づき、マスクを感染が広がる北海道の一部自治体に配布するため、国に売り渡すよう製造・販売業者に指示。当然の措置だが医療や介護現場、高齢者への優先的配布もこれまで以上のスピード感を持って実施してほしい。

 ただあまりに強引な法解釈や拙速な法整備は終息後の自由経済まで壊しかねない。慎重を期するようくぎを刺しておきたい。

 

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