正倉院はシルクロードの終着駅と呼ばれ、外国の宝物が数多く存在するイメージがある。しかし、近年の研究では、9000件と言われる宝物のうち舶来品はおよそ5%とされる。つまり95%は国産である。
正倉院宝物の外国製品にはある傾向が認められる。たとえば、楽器、鏡は外国製の比率が高く、花氈、色氈、ガラス器(玉類は除く)、『種々薬帳』記載の薬物はほぼ外国製である。一方、天蓋や幡など寺を荘厳した仏具、屏風、伎楽面、染織品はほぼ国産であり、献物品を納めた献物几・献物箱は国産の比率が高い。唐美人を描いた屏風(鳥毛立女屏風)などは一見して唐製に思えるが、実際には国産品であるから驚きである。
このような傾向はどうして起きたのであろうか。この講座では正倉院宝物から遣唐使が持ち帰った品物の基準、当時の日本工人は何を作ったかを考えてみたい。
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