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【社説】

河井氏秘書逮捕 夫妻は事件の真相語れ

 河井案里参院議員の公設秘書や夫の克行前法相の政策秘書ら三人が公選法違反容疑で逮捕された。連座制の対象と判断されれば、案里氏失職の可能性がある。夫妻は関与の有無を明確にすべきだ。

 広島地検によると、三人は昨年七月の参院選で、案里氏陣営の車上運動員十四人に、法定上限の日当一万五千円を超す資金を計二百万円以上渡したとされる。

 公選法は「候補者の秘書は連座制の対象」と定める。三人のいずれかの有罪が確定し、事件当時(当選前の選挙期間中)に「案里候補の秘書だった」と裁判所が認定すれば、案里氏は連座制の対象で当選無効となる。

 公設秘書は、逮捕前の任意聴取に「違法性を認識していた」と供述したという。さらに、陣営は二種類の領収書を発行して一万五千円の上限内に見せ掛ける工作をしていた。こうした行為を秘書らだけで行ったのか。河井夫妻の関与はなかったのか。

 過去のこうした醜聞の際には、「秘書が勝手にやった」とする政治家側の釈明が耳慣れたものとなっているが、夫妻は、事件との関わりについて「捜査中なので」と説明していない。

 今回の事件の舞台となった選挙では「何が何でも案里氏の当選を」という自民党本部の強い意向が明らかだった。党本部からは一億五千万円が選挙対策費として支給された。案里氏本人もこれを認め「違法性はない」としているものの、他の同党公認候補者は千五百万円だという。案里氏への肩入れは尋常ではない。

 案里氏が立った広島選挙区(改選数二)は、自民と民主系が議席を分け合ってきた。自民では参院当選五回の溝手顕正氏がおり、岸田文雄政調会長らの支援を受けていた。だが、溝手氏はかつて、再登板前の安倍晋三首相を「もう過去の人」と評した経緯などから、官邸との関係は悪化していたともされる。

 表向きは「自民二議席」、本音は「溝手落とし」-。そのために、党本部から人材も資金も送り込んだのではないか、との見方もある。実際、菅義偉官房長官や二階俊博幹事長ら大物が広島に来て、案里氏の応援演説に立っている。その結果、案里氏は当選し、溝手氏は落選した。

 捜査によって、事件の背景まで含めた全容の解明が望まれるのは当然である。しかし、それとは別に、夫妻には国会で自分自身の言葉で説明する責任があろう。

 

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