こんにちは！
現在、札幌で「No More Corona！」プロジェクトを開始しました北海道大学医学部医学科4年の朝倉利晃です。
世界で新型コロナウイルスが猛威を振るっています。
北海道では道知事が緊急事態宣言を出されました。
そして、2020年3月2日付けで北海道大学は学生に対して懇親会、食事会、合宿等の中止と延期を要求しました。
ですが、なぜ、私たちは、外出を控えなければいけないのでしょうか。
「感染して危険なのは高齢者だから、私たちが高齢者に会うのを控えれば別に若者同士が会っても何の問題もないじゃないか？」
これは、多くの人が抱く疑問だと思います。僕も改めて数値計算するまで疑問に思ってしまっていました。
しかし、違います。今こそ、私たち若者世代がお互いに会うのを控えるべきです。
若者同士で会うのを控えることで高齢者の感染者(∝死亡者)を減らすことが出来ます。
その理屈をここで簡単に説明したいと思います。
＊以下に示す感染力、感染者の数はシミュレーションであり、実際の感染者の数を示している訳ではありません。
前提
考える上で，前提をシンプルにします。
二つの世代,、若者( 20~30歳 )と高齢者( 60~70歳 )の人たちでの感染のダイナミクスを考えます。
この時，感染する組み合わせは4つしかありません。
A. 若者 -> 若者
B. 若者 -> 高齢者
C. 高齢者 -> 若者
D. 高齢者 -> 高齢者
また、感染力は接触回数とのみ比例するとします。ここでは感染力を「一人の感染者が何人に感染を広げるか」という意味で使います。
日本人の一日あたりの”接触”回数を調べる人によると接触回数の頻度の比は、大体、A : B : C : D = 10 : 3 : 3 : 5 くらいになるようです。
また、新型コロナウイルスは、一人あたり2.7人に感染させるとします。
この場合、若者と高齢者がそれぞれ新たに感染させる人数は以下のようになります。
以上の前提の下で、私たちが接触頻度を下げた場合に、全体の感染力がどう変わるか。また、高齢者の感染者数がどう変化するかを探ります．
ケーススタディ
結論としては次が挙げられます。先に説明した前提の下で導かれる結論です。
Case1. 私たち若者世代の接触頻度を半分にする -> 感染力は70%になる。
Case2. 私たち若者世代と高齢者の接触頻度を半分にする -> 感染力は94%にしかならない。
Case3. 私たち若者世代同士で会う頻度を変えず、若者と高齢の接触頻度と高齢者同士の接触頻度を半分にする -> 感染力は，93%にしかならない。
Case4. 全ての接触パターンで接触頻度を半分にする -> 感染力は52%になる。
ここでいう感染力は、若者と高齢者の区別をなくした時の感染力を意味しています。
感染者数の遷移
しかし、感染力が減少すると言ってもどれだけ実際の人数に影響を与えるか実感出来ないと思います。また、それぞれのパターンで述べられているのは、”全体の感染力”であって、新型コロナのハイリスク群である高齢者にどれだけ影響を与えるかが分かりません．
そこで、実際にどれくらい感染者数が世代ごとに変化していくかを示します。
ここでは、各世代が同じタイミングで感染者を増やして行くとします。
例えば、以下のように感染者が増えていき、一つ一つの段階を世代とします。
下の図は、接触を控えない場合とCase1,2,3,4の各場合と比べて高齢者の感染者数がどのように変化していくかを示しています。
この図から非常に面白い結論述べることが出来ます！
- 感染者数を徹底的に減らすには，全年齢層で接触頻度を減らす必要がある。
- どこか一つでも接触頻度が従来と変わらないと、高齢者の感染者数を十分に減らせない。
ということです。
ここまで感染力という言葉を使ってきましたが、感染力は「一人の感染者が何人に感染を広げるか」という意味で使っています。これの意味するところは、感染力は指数関数的に感染者に影響を及ぼすということ、また、感染症の感染力を下げるには一人一人が意識して行動してようやく意味が出てくるということです。グラフにあるように、感染力が数%違う状況は、時間が経つと劇的に感染者数に違いが出ることとなります。
ここで示したシミュレーションは現実を単純にしたものです。しかし、現実世界を上手く抽象化し、みなさんのなぜ？を上手く解決してくれる事例だと考えています。
メッセージ
今、国が総力をあげて全年齢層で接触を控えるように主張しているのは，患者数を劇的に減らすためです。上の図で示したように、全年齢層が努力をしない限り感染者は順調に減りません。
この3月19日まで行動を自粛するだけで，北海道内の患者数の増加を減らすことが出来るかもしれません．
だからこそ，少なくとも3月19日までは，出来るだけ接触の機会を控えていただきたいと思います．
No More Corona ! 私たち若者が感染拡大を防止する鍵を握っています。
人ごとでは全くありません。僕たちが集まって楽しむことで間接的にですが、高齢者と病気を持っている人が亡くなっていってしまいます。No More Corona ! を合言葉に適切な行動をしていきましょう！
注意事項
・以上に示した感染力、感染者の数は，シミュレーションであり、実際の感染者の数を示している訳ではありません。
・実際の北海道での感染の拡大はもっと複雑であり、実際感染者の数がどう変化していくかは、正確に予測することは難しいです。
・ただ、若年者層同士の接触が、間接的に高齢者の感染拡大に貢献し得ることは言えます。
