現在、人気を集めているほとんどの蔵元が、国内の出荷ですら、追い付いていない。次に海外に出荷した際の保存の問題もある。多くの日本酒は冷蔵でのきちんとした管理が求められる。

 何より重要なのは文化的側面だ。ワインは目の前の畑から原料のブドウを収穫し醸造する。基本は地産地消であり、その地の文化、風土に根付いている。原材料をかき集めて造ることが、海外の消費者にとっては工業製品のようなイメージを想起させるのではと、懸念する蔵元は多い。

 それを意識して、今、多くの蔵元が地元重視に変わってきている。水だけでなく、米を地元で無農薬栽培したり、地元由来の酵母を使うようになってきているのだ。

 そもそも、日本酒は、日本の文化でもある。地域の風土や農業と密接に結び付いている。

「日本酒を飲むことで日本の米作り、農業に貢献できる」と説くのは、酒食ジャーナリストの山本洋子さんだ。

日本酒に使われる代表的な米「山田錦」。飯米よりも粒が大きい Photo by R.S.
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 2018年度に廃止が決まった減反政策だが、現在でも100万ヘクタール以上の水田が使われていない。

 純米酒一升瓶を1本造るのに必要な水田は3平方メートル。日本人が日本酒をよく飲むようになり、高値で取引される酒造好適米が、休耕田で栽培されるようになれば、一気に、日本の農業と地方経済は活気づくだろう。

 山本さんの計算によると、全ての休耕田で酒造好適米を栽培し、純米酒を造れば、一升瓶で年間36億本できる。途方もない数字に思えるが、日本の成人人口で割れば1人当たり年間36本。つまり、1日当たり1合なのだ。

 純米酒よりも米をさらに削って造られる純米吟醸、純米大吟醸なら、さらに本数が少なくなる。

 味の面ばかり注目されるが、日本酒は生活や農業と密接につながっている飲み物だ。ぜひ、そのことを頭の片隅において、一献傾けてほしい。