今回は、堅展実業の厚岸ウイスキー サロルンカムイを飲んでみます。

厚岸蒸溜所 待望のウイスキー第一弾

堅展実業が2016年に建設した厚岸蒸溜所は、北海道の東部、釧路と根室のちょうど中間の位置にあります。

厚岸蒸溜所については、当ブログの過去の記事で詳しく紹介しています。





sarrun_これまで同蒸溜所では、1~2年熟成の原酒をニューボーンとして販売していました。

日本の法律上では、特に熟成期間を経なくてもウイスキーを名乗ることが出来ますが、厚岸蒸溜所ではスコッチウイスキーの基準に従い、3年以上熟成したものをウイスキーとして販売する方針をとりました。

そして2020年2月、3年の熟成を経たシングルモルトウイスキーとして、「サロルンカムイ」をリリースしました。

サロルンカムイ(sar-run-kamuy)とは、アイヌ語で「湿原に在す神」で、鶴の一種であるタンチョウを指す言葉です(ちなみに私のWebネームである「RERA(レラ)」も、アイヌ語で「風」という意味です)。

タンチョウの生息地として有名な釧路湿原は、厚岸からだと車、JRを使っても1時間以上かかるので近いとはいえません。
しかし厚岸にも別寒辺牛(べかんべうし)湿原という広い湿原があり、こちらにもタンチョウが生息しています。

ボトルのデザインも、タンチョウのイメージを模した白いボトルになっています。

この美しいボトルに入れられたのは、ノンピートモルトのバーボン樽、シェリー樽、赤ワイン樽原酒と、ピーテッドモルトのミズナラ樽原酒の4種類をヴァッテッドしたものになります。

この中でキーになるのはミズナラ樽原酒で、おそらくは地元厚岸で伐採したものを使ったもので、4つある樽の一つを使っていると思われます。

3年とは思えない圧倒的な豊かさ

では、ストレートから飲みます。
グラスに注ぐと、液色は少々オレンジがかった中庸な琥珀色、香りは軽いアルコールの刺激の後にレーズンがやってきます。

口に含むと、軽くピートからのスモーキーさとフェノール系の刺激が鼻を突き抜け、後からリンゴ、レーズン、洋梨、シナモン、白檀、バナナと続きます。

味わいは、アルコールからの辛みがしっかり来た後、エッジの効いた酸味、そしてその奥に濃厚な甘みが追いかけてきます。

ロックにすると、パイナップルの甘酸っぱい香りが揮発し、ストレート同様にレーズン、リンゴ、洋梨、白檀、シナモン、バナナと濃厚かつフルーティな香りがこれでもかと通り抜けていきます。

味わいは、多少のほろ苦さを伴いつつも、酸味と甘みが柔らかく包み込む印象になります。

最後にハイボールにすると、再びフェノール系のピートが漂い始め、後から白檀、シナモン、バナナの甘い香りが続いていきます。

味わいは、引き続き苦みが少々強めに出ますが、その後に酸味、そして甘みが後を引き、きつい印象は少ないです。

正直言って、体に電撃が走るほど、3年熟成とは思えない非常に豊かな香り、味わいを持った完成度の高いボトルです。

3年、若さ故のアルコールの刺激は致し方ないとして、ピーティな原酒をミズナラ樽で熟成することによるスモーキーさとオリエンタルさの融合は驚愕します。

そこにノンピートの様々な樽で熟成されたモルトによる、濃厚なフルーツの組み合わせで、喧嘩せず、バラエティ豊かなシンフォニーを奏でているように思えます。

200mL、アルコール度数55度、価格は5500円です。
700mLのフルボトルだと、カスクストレングスとはいえ2万円近い値段になります。

もっとも、ネットではすでにプレミアがついていて、私が購入したときにはすでに1万円を超えていました。

しかし、実際に飲んでみると、この値段が高すぎると思えないほど、完成度が高く、おそらくは日本、世界のブレンダー、評論家達が衝撃を受けてもおかしくないように思えます。

これが12年熟成になったら、どれだけのものになるのか、妄想がまた膨らんでしまいます。

<個人的評価>
  • 香り AA: フェノールのようなピート、白檀のようなオリエンタルな香り、そしてリンゴ、パイン、レーズン、バナナ、洋梨と様々なフルーツ。
  • 味わい A: 3年とは思えない柔らかい酸味と甘み。加水で苦みが顔を出す。
  • 総評 AAA:長期熟成のシングルモルトにも匹敵する豊かな香り、味わいは驚嘆に値する。