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【社説】

新型コロナ 生活支援に全力尽くせ

 日銀が金融市場に大規模資金を流し始めた。新型肺炎の影響で世界的に広がる経済危機を食い止めるためだ。だが金融だけの対策には限界があり、財政も含めた総合型の緊急経済対策が必要な時だ。

 日銀の黒田東彦総裁は異例の緊急談話で「市場への潤沢な資金供給に努めていく」と言明した。具体的には国債や上場投資信託(ETF)の買い入れを通じ市場に資金を流し込む戦略。ETFは国内の株価と連動しており、先週起きた記録的な株価急落に歯止めをかける狙いもあるだろう。

 資金供給は、利下げを示唆した米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の発言を受けた措置ともいえよう。新型肺炎終息の兆しがみえない中、日米の金融当局が協調して市場安定を図る姿勢は評価できる。

 ただ日銀による金融対策がほぼ限界にきていることも忘れてはならない。日銀の大規模金融緩和は二〇一三年から続いており、さらなる緩和余地は極めて少ないとみるのが妥当だ。

 すでに日銀は膨大な額の国債や株式を引き受けている。日銀自体の財務状況の悪化を指摘する声も出ている。今回の資金供給も時間稼ぎ的な面が否めず、対症療法といえる。

 一方、経済をめぐる政府の対応は力強さに欠ける。後手に回った印象で、まとまりにも欠ける。

 マスク不足は解決せず、一部ではトイレットペーパーや保存食品の買い占め騒動が起きている。供給網に問題はあるが製品在庫に問題はない。政府の情報発信力の弱さが騒動に拍車をかけているといっても否定できないだろう。

 非正規を中心に雇用問題に発展している中小企業対策も効果がみえていない。資金不足に陥っている事業者も相次いでいる。

 突然の小中学校への休校要請などで不安は生活の中に一層広がっている。ここは財政、金融を合わせた総合経済対策が急務ではないか。迫力ある政府の姿勢は不安を抑制し、市場だけでなく混乱する人々の暮らしを落ち着かせる効果があるはずだ。

 新型肺炎の影響に関しリーマン・ショック級との見方もある。リーマンの際は、経済全体に無秩序に入り込んだサブプライムローンという複雑な金融商品が暮らしまで傷つけた。

 だが今回はウイルスさえ制圧できれば当面の危機は去る。制圧までの間、生活を支える具体的な対策を求めたい。

 

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