恐怖公の冒険   作:タクミ( ☆∀☆)

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無事にナザリックに帰還を果たした恐怖公。しかし彼の冒険(笑)はまだ終わらない・・・。


エ・ランテル編

「なんなのよ、この料理は!」

 

甲高くヒステリックな声が響き渡った。食堂にいた数名の目が騒ぎ立てている女性に目を向ける。

その女性の顔立ちは非常に美しく、゛黄金゛と称されるこの王国最高の美姫に匹敵するほどだった。しかし、そんな彼女は城塞都市エ・ランテル最高級の宿屋である「黄金の輝き亭」の料理に対し、怒りをあらわにしていた。

 

「この店は客に虫の入った食事を提供するの!?」

 

全く遠慮の無いその声は、飲食を扱う店には致命的な一言だった。まだ、(カッパー)クラスの底辺の冒険者達が集う飲み屋であれば、店の店主に文句を言って交換してもらうなりして終いで済むだろう。しかし、ここは違う。都市でも最高級の料理を振る舞っており、来る客のランクも払う金額も宿屋としての評価も遥かに高い。そんな店で虫の入った料理を提供したとあっては致命的だ。慌てて、支配人が飛んでくる。支配人が料理の器を見るとスープの中に飲食店には大敵の特徴的な虫がスープから後ろ足を出し、いわゆる犬○家のような形で死んでいた。何故これをウェイターが気付かなかったのかと、後でクビにすることを心の中で決意した。

 

「も、申し訳ありません、お客様!すぐに新しい料理と取り替えさせていただきます。それと、ここのお代は結構ですので・・・」

 

なんとか穏便に済まそうとする支配人に対し、帝国から来たと言う美しい女性はバッサリと言い切った。

 

「もう、結構!!こんな店居たくないわ!」

 

支配人はもう涙目である。こんな噂を流されたらここまで築いてきた地位が崩れ去る。なんとかしなければと考えている最中も女性は付き人に指示を出している。

 

「セバス、こんな街には居たくないわ!すぐに出発の準備を整えなさい!」

「ザック、あなたも早くしなさい!」

 

そして女性は部屋行ってしまった。そして、セバスと呼ばれた付き人も一礼をしてついていく。ザックと呼ばれた二人には似つかわしくない小汚ない付き人は慌てて食べかけの料理を食べ、馬車の準備に向かった。

 

 

 

セバスが部屋に入るとそこには先程まで激しく怒りをあらわにしていた女性が深々と頭を下げセバスを迎え入れていた。第三者が見たら、二重人格かと思うかも知れないが、先程までのは演技に過ぎない。それは彼らの支配者であるアインズから武技と呼ばれる能力を持った野党を捕まえるために芝居を打ったに過ぎない。店側からしたらたまったらものではない。まだ貶めるにしても、マズイと言ってくれた方がいい。それならばあくまでも個人の意見で済むのだから。

帝国の商人のお嬢様を演じていた女性、戦闘メイド(プレアデス)の一人、ソリュシャン・イプシロンは上司であるセバス・チャンに対して先程の無礼を謝罪する。

 

「先程は申し訳ありませんでした。」

 

セバスは先程までのはあくまで演技であり問題ないと伝えようとした。

 

「いえ、「いえ、お気になさらずに。」」

 

セバスの声に被せるように、第三者の声がした。もうお気付きの方もいよう、そう我らが恐怖公である。

 

「我が眷属もナザリックの使命の為に死ねて本望でしょう。」

 

はっきり言ってソリュシャンの心境は何言ってんのコイツである。ソリュシャンはできるメイドなのでそんなことを思っていても顔に出さないが、はっきり言って意味不明だった。セバスとて理解できていなかった。そんな中、遠い空を見上ているのかよく分からないが、遠くを見つめ感慨深げにしている恐怖公。

そう、先程のスープの中に特攻し、殉死した彼は恐怖公の眷属だったのである。やっと理解が追い付いた二人は恐怖公とは対照的に次の計画のことを考えながら恐怖公が落ち着くのを待っていた。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

数日前・・・・

 

 

 

アインズに見つけてもらった恐怖公は、戦闘メイド(プレアデス)の一人、エントマ・ヴァシリッサ・ゼータに迎えに来てもらっていた。

 

パリパリ・・

「恐怖公ぉ~、迎えに、ゴクン・・来たよぉ~」

ヒョイ、パクっ、・・・ポリポリ・・・

 

何かをつまみながら喋るエントマ。そんなエントマを見てずっと心細かったのであろう。普段の紳士の雰囲気はなく、迷子の子供のように泣いて喜ぶ恐怖公。一般人なら叫びながら逃げる恐怖公のダイブも同じく昆虫である蜘蛛人(アラクノイド)のエントマは優しく抱き締める。彼の外観を除けば感動的なシーンである。

・・・ジュルリ。恐怖公はその音に生死を垣間見た。恐怖公は慌ててエントマの顔を見上げる。エントマの顔(人間の顔に擬態している虫ではあるが)は優しく恐怖公を見つめている。しかし、エントマは恐怖公が守護する黒棺(ブラックカプセル)を「おやつ部屋」と呼び、時々来ては彼の眷属を食っていた。

さすがに守護者である恐怖公を食うことは無いだろうが怖いものは怖い。素早くエントマから距離をとった。こうして、エントマに連れられてナザリックへと帰還を果たした。

 

 

 

「恐怖公よ、よくぞ戻った。面を上げよ。」

 

アインズはどうやって跪いているんだとか考えながら、魔王様ロールで恐怖公に命令する。

 

「ハ、ハァー!!」

 

恐怖公は勢いよく頭を上げる。頭を上げることによりアインズに対し腹を見せる形になった。アインズは内心、恐怖公のフォルムのあまりの出来に誰が創ったんだと溜め息をつく。真っ先に上がるのはるし★ふぁーだ。大抵こういう人の嫌がることを真っ先にやるのは彼だからだ。と現実逃避をしていると、恐怖公から不在の謝罪が飛ぶ。

 

「この度は黒棺(ブラックカプセル)の領域守護者でありながら不在にしてしまい、ましてモモンガ様にご心配をおかけしたことを深く謝罪したく思います。つきましてはこの度の失態を払拭できる機会を頂ければ幸いです。」

 

「よい。それと私は名前を変えた。これからはアインズ。アインズ・ウール・ゴウンと呼べ。」

 

「ハァ!アインズ様!」

 

「それよりも外の世界はどうであった。人間と戦ったようだが報告を聞きたい。」

 

恐怖公は殺した騎士やマジックキャスターの事、隊長と思われる男が使用した魔封じの水晶と威光の主天使(ドミニオン・オーソリティ)について報告する。

 

その報告を聞き、アインズは警戒は残しつつも、たいしてナザリックの脅威になりそうにないことに安堵する。そしてアインズは恐怖公が話した最後の天使について気になったので質問をした。

 

「私にはたいした相手ではないがよく恐怖公が勝てたな。あの天使が相手なら少なくともlv60以上は必要じゃないか?」

 

恐怖公は自慢気に語った。

 

「ハイ、我が愛馬シルバーの助けにより倒すことができました。」

 

「・・・シルバー?・・・なんだそれは?」

「はい、我輩の騎乗ゴーレム、シルバーゴーレム・コックローチです。るし★ふぁー様より作っていただきました。」

 

アインズはゴーレムに使用されている超希少金属と希少貴金属にるし★ふぁーに怒りを覚える。(・・・やぁろぉうぅ・・・・、あれを使いやがったのか!)・・・まぁそれは良い思い出だと切り替え、報告の続きを聞いた。

 

恐怖公はカルネ村の村長から聞いた話や眷属を使用して知ったトブの大森林についての話をする。

 

話を聞きながらアインズは閃いた。恐怖公と恐怖公の眷属を使って情報収集が出来るのではないかと。そろそろ外の情報も知りたかったので良い機会だと思う。しかし、恐怖公だけでは戦力的に少し心許ない。冒険者の話を聞いたとき、アインズは冒険者として気晴らしに外に出ようと思っていたがゴ○ブリをつれ回したくはないし、ましてやゴ○ブリのテイマー等と間違っても思われたくない。ちょうどセバスも別働隊で情報収集の任に当たらせるのでそちらに任せようと考えた。

 

「報告ご苦労、恐怖公。して先程、失態を払拭する機会が欲しいと言っていたな。それでは、後日セバスに情報収集の任を与える。それに同行しナザリックに有益な情報を持って来い。」

 

「ハァ!ありがたき幸せ!必ずやアインズ様のお役にたってみせます。」

 

・・

・・・

 

こうして恐怖公はセバス達と行動を共にしていた。

 

恐怖公が眷属の殉死に胸を痛めていると、セバスはソリュシャンに計画の進捗を確認する。

 

「ソリュシャン、彼は上手く動いていますか?」

 

ソリュシャンは右目に手をあてながら答える。

 

「はい、とても上手く動いています。何やら薄汚ない男と会っているようです。」

 

ソリュシャンは遠隔視を使用し、行者のザックの動向を観察した。

 

「それは僥倖。」

 

もう一人の召し使い、ザックは野党を呼ぶ為の釣針でしかない。野党を呼び出し、その中に武技をつかう者が現れたら拐うという計画である。そんなザックの話をしていると恐怖公も話に加わる。

 

「あぁ、あの男ですか。私も眷属を使って尾行させてますので問題ありませんよ。」

 

そう言うと、ソリュシャンはあることに気付いた。ザックの背中である。最初は何か服のデザインかと思ったが違う。ゴ○ブリが張りついていたのである、それも大量に。逆に気付けよと言いたい。お前はどんだけ普段汚いのかと。ソリュシャンは最初、できればザックを楽しもう(・・・・)と考えてセバスに頼もうとしていた。しかし、完全に冷めた。それもそうだろう。目の前の食事に虫が集っていたら食欲が湧く方がおかしい。それと同じである。

 

「それでは、そろそろ私はこれで。」

 

そうセバスが言うと、恐怖公が制止した。

 

「申し訳ありません、セバス殿。我輩、少々この街で気になるものを見つけたので、それの調査とアインズ様への報告の為しばらくこの街に残りたいと思います。王都には我が愛馬シルバーにて駆けつけますゆえ。よろしいでしょうか?」

 

セバスは一旦立ち止まり、考える。

 

「・・・そうですね。シャルティア様からご許可をいただけるのであれば、恐怖公がお好きなようにしても構わないのではないでしょうか。」

 

シャルティアからは是非と即決で許可を貰ったのは言うまでもない。

 

 

 

時間は経ち、セバス達は馬車の中に居たシャルティアと合流する。罠に引っ掛かった振りをするため馬車の中でシャルティアと会話をしていた。

 

「前からお聞きしたかったことがあるのですが、シャルティア様とアウラ様はあまり仲がよろしくないご様子ですが、特別な理由でもあるのでしょうか?」

 

シャルティアは爪の手入れをしながら答える。

 

「そんなことありんすえ。もともと我が創造主ペロロンチーノ様とあの娘の創造主ぶくぶく茶釜様はご姉弟と聞いていますし、ペロロンチーノ様よりそうあれと言われているから適当にあしらっているだけでありんすよ。」

 

その言葉にセバスは初めて知った創造主様達の関係を知り驚く。彼ら被造物主達にとって創造主の話は何よりも変えがたいご褒美なのだ。そしてもうひとつの質問を問う。

 

「それでは、恐怖公様についても仲が良いように見えませんが何か関係があるのでしょうか?」

 

その質問にシャルティアの手が止まる。そして何故恐怖公を嫌っているのか考える。虫だからか・・・、いや違う。別に蟲王であるコキュートスには忌避感はない。それではゴ○ブリだから?ゴ○ブリが怖いから?シャルティアの力をもってすれば容易く葬れる。ではあのフォルムか?ウンウンとお馬鹿な頭をひねって考えるが途中でめんどくさくなる。嫌いなものは嫌いなのだ。しかし、さすがに同じナザリックの一員としてストレートに生理的に嫌とも言いづらい。そこで、シャルティアは心の中でペロロンチーノに謝罪しながら答えた。

 

「し、至高の方がお決めになったことでありんす。」

 

至高の方が決めた事ならばもうこれ以上言うことはできない。セバスは納得した。そのうち馬車は止まり、蹂躙が始まった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

エ・ランテル郊外の墓地にて

 

「カジッちゃ~~~ん、いる~~~?」

 

いかにも怪しいマントを羽織った女性が墓地の隠し階段を降りていく。地下施設の中心と思われる所に着くと、いかにも悪の魔法使いのような姿の男が出てきた。

 

「その名で呼ぶな、クレマンティーヌ。誇り高きズーラーノーンの名が泣くぞ。」

 

そう、彼らは悪の秘密結社ズーラーノーンの幹部達である。彼らはここでエ・ランテルを死の街へと変える企みをしているのだった。その計画について話していると、ふとクレマンティーヌと呼ばれた女が壁を見つめる。妙な視線を感じたからだ。彼女はスレイン法国の漆黒聖典に所属し、抜ける際に国の秘宝を盗んで追われていたため周囲を敏感に警戒していた。

しかし、クレマンティーヌが壁を見るとゴ○ブリがその俊敏な動きを見せながらカサカサと張りついていた。

 

「ちょっと~~~、カジッちゃ~~~ん!もうちょっとキレイにしたほうが良いってここ!只でさえ地下なんだし、墓地の下なんだから!」

 

クレマンティーヌがカジットに文句を言う。

 

「すまんな、クレマンティーヌ。最近、バルサ○を使ったばかりなんだがな。部下にも清潔に保つように言っていたんだが・・・。もっと気を付けよう。」

素直に謝るカジット。そう彼等、悪の組織と言えど汚いものは嫌いである。クレマンティーヌは次来るときまでにバル○ンをしとくように注文すると、足早に立ち去った。

 

 

クレマンティーヌは自分が盗んだ秘宝のマジックアイテムを使えると言うタレント持ちの男を待っていた。どうやらその男は留守にしているらしい。彼女は人を殺したり拷問をするのが好きな性格破綻者であるため、大人しく待っているわけがない。適当に貧民街の路地裏で拷問を楽しんでいると、また視線を感じた。

 

「おい、お前!!そこにいることは分かっている!出てこい!!」

 

返事はない。仕方なくこちらから行くかと考えていると声がした。

 

「おや、ばれてしまいましたか。あなた、なかなかやりますね。できれば隠密に事を済ませたかったのですが・・・」

 

クレマンティーヌは彼女を追っている風花聖典かと思っていた。しかし風花聖典は部隊で行動している。どうやら相手は一人、さっさと殺して逃げようと思っていた。

すると、路地から現れたのは一匹のゴ○ブリだった。一瞬、思考が停止した。風花聖典ではないにしても、冒険者か最悪漆黒聖典とかを考えていた。まさかゴ○ブリが出てくるとは思わない。彼女には殺意を抱いている兄、クアイエッセ・ハゼイア・クインティアがいた。彼は漆黒聖典の第五次席《一人師団》として活躍していた。彼はビーストテイマーとして強力なモンスターを使役している。彼女は考えた。まさか、モンスターだけではなく虫までテイムするようになったのか?テイムするにしてもゴ○ブリはないだろう。アイツ、頭おかしくなったのか?勝手に兄の評価をどんどん下げ思考の海に沈んでいく。しかし、圧倒的な彼女の経験値がすぐに現実に引き戻す。いくらゴ○ブリとは言え喋っている。それに私を尾行していた。そこでふと思い出す。カジットと居たときにいたゴ○ブリを。っマズイ!今、ここで計画が露見するわけには行かない。ここでコイツを駆除しなければと。

 

「おい、テメー、何もんだ?」

 

「お嬢さん、口が悪いですね。レディはもっとお淑やかにしないといけませんよ。そうですね、男爵と呼んでください。」

 

これにクレマンティーヌはキレた。もともと気の短い方ではあるが、英雄の領域にいる彼女がその辺にいる女と一緒にされたのである。

 

「あぁん、舐めてんのかテメー!英雄の領域に到達したこのクレマンティーヌ様を!!テメーなんか、スッといってプチッだぞ!!」

 

「おぉ、これは怖い怖い。出来るならどうぞ。」

 

クレマンティーヌは身を沈めながら、独特の構えをしている。

 

《疾風走破》

 

《能力向上》

 

《能力超向上》

 

クレマンティーヌは目にも止まらぬ早さで恐怖公に近づく。恐怖公がどんな攻撃をしてこようとも叩き潰す自信はあった。しかし、予想は裏切られた。恐怖公は何もしてこない。クレマンティーヌはイラつきながらも足を出そうとした。その時、

 

《眷属召喚》!!

 

突然、恐怖公の回りに大小様々なゴ○ブリが現れる。クレマンティーヌは武技まで使っていたため勢いを止められなかった。おもいっきり黒いベッドにダイブするクレマンティーヌ。クレマンティーヌは普段マントをしているが、中は悲惨なことにビキニアーマーであった。体中をゴ○ブリが這い回る。

 

「糞がぁあああ!!!!」

 

一気に戦意を喪失するクレマンティーヌ。幸いなことにまだ武技の効果が残っている為、その身体能力をもってゴ○ブリを振り落としながら逃げ出した。

 

「少し、油断してしまいましたね。まぁアインズ様に報告し、判断を仰ぎましょう。」

 

クレマンティーヌの背中を見ながら呟く恐怖公。

 

 

クレマンティーヌは慌てて路地裏から飛び出した。回りにいる男達はゴ○ブリを振り払っている彼女をどこのゴミを漁っていたんだと奇異の目で見ていた。そんな目も気にせずクレマンティーヌは早く体洗おうと固く誓った。その後、目的の人物が現れるまで、クレマンティーヌはひっそりと姿を隠した。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ナザリック地下大墳墓の支配者アインズは冒険者モモンとしてエ・ランテルにいた。戦闘メイド(プレアデス)の一人ナーベラル・ガンマことナーベとチーム《漆黒》として活動している。今はエ・ランテル有数の薬師であるンフィーレア・バレアレの依頼でチーム《漆黒の剣》のメンバーと一緒に薬草を採集しエ・ランテルに帰ってきたところだ。ちなみにその途中で、トブの大森林にいた伝説の魔獣《森の賢王》を屈服させ使役していた。名前はハムスケにしようと考えていた。

 

モモンは冒険者組合で魔獣の登録を済ませると、ンフィーレアの祖母と名乗るリィジー・バレアレと一緒に先に自宅に向かったンフィーレア、漆黒の剣のメンバーの居るバレアレの家に向かった。

 

 

「チッ、厄介だな。」

 

そこにはゾンビになったり拷問されたであろう漆黒の剣のメンバーがいた。ゾンビはあっさり倒したが、ンフィーレアの姿が無い。おそらく彼の持つタレントのせいで拐われたのであろう。リィジーはモモンに孫を救う事を頼む。モモンはンフィーレアの居場所を探すためリィジーを部屋から出した。

 

「私の名を高めるための打ち合わせといこうじゃないか。」

 

突然、モモンが声を出す。ナーベはキョトンとしてモモンを見つめる。すると、突然第三者の声がする。

 

「ハハァ!」

 

その声に咄嗟にモモンを守ろうとナーベが声がした方に鋭い視線を向ける。右手を突き出し、魔法のターゲティングまで行っている。

 

「アインズ様。忠義の士、恐怖公にございます。」

 

恐怖公は内心、びっくりしていた。危うく消し飛ばされる所だったからである。

 

「恐怖公様、全然気づきませんでした。いつからいらっしゃったんですか?」

 

「え?アインズ様がエ・ランテルにいらしてからずっと後ろに居たんですが・・・」

 

モモンは恐怖公がエ・ランテルに残っていることは報告で聞いていたが、まさかエ・ランテルの入口から連いてきているとは気付かなかった。只でさえ見た目大きなハムスターであるハムスケに乗ってオッサンが一人メリーゴーランドに乗っているような羞恥プレイを味わっていたのに、まさかゴキブリを連れ回していたのかと・・・。

 

ペカー・・・

モモンは緑の光に包まれた。

 

「で、では、恐怖公よ、エランテルの状況を教えてくれ。」

 

恐怖公は墓地の地下空間やズーラーノーンといった秘密結社の存在、クレマンティーヌの特徴などをアインズに教えた。

 

「フム、分かった。では、セバスと合流し、王都の情報収集に向かってくれ。」

 

「ハハァ!」

 

そう言うと、恐怖公は一礼し外に出ていった。モモンはリージーに状況を説明し冒険者組合や衛兵に警戒するように伝えて欲しいと依頼した。

 

モモンは外に出るとハムスケと恐怖公が何か会話をしているのが見えた。

 

「いやぁ、それにしても恐怖公殿は格好良いでござるなぁ。」

 

「ホホ、ありがとうございます、ハムスケ殿。・・・おぉ、アインズ様。それではそろそろ我輩は行きます。ハイヨー、シルバー!」

 

恐怖公の愛馬シルバーゴーレム・コックローチに乗って王都リ・エスティーゼに掛けていった。その光景をキラキラとした目で見送るハムスケ。

 

「・・・ハムスケ、恐怖公は格好良く見えるか?」

 

「もちろんでござるよ、殿!あの王冠にマント、何よりもキラキラとしたあの黒さ。全部格好良いでござるよ。」

 

「そ、そうか。」

 

モモンはアインズ・ウール・ゴウンの仲間が作ったNPCである恐怖公を誉められるのは純粋に嬉しかった。ただどう身内贔屓してもあれが格好良いとは思えなかった。そう言えば、ハムスケの評価もモモンにはハムスターにしか思えなかったが、周りは力強い強大な魔獣と評価していた。俺の感性がおかしいのかと考えながらハムスケに乗った。

 

「そう言えば、ハムスケは恐怖公の事を知っていたのか?」

 

「少し前でござるが、殿にお仕えする前、恐怖公殿のお仲間が拙者の縄張りに侵入したときに、食い殺してしまったのでござるよ。それで殿にお仕えしていると知り謝っていたでござる。」

 

一瞬、空気が凍る。

 

「・・・え?」

 

横に立っていたナーベがハムスケから一歩距離をとる。モモンもハムスケからスッと降りる。

 

「ど、どうしたでござるか、殿?」

 

ハムスケの餌をどうするか考えながらモモンはスタスタと墓地に歩いていった。

 

「殿、殿~~~、置いてかないで欲しいでごるよ~~~!」




ハムスケファンの方ごめんなさい。

次回、最終話の予定です。

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