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【大リーグ】

マリナーズ菊池雄星は2017年西武時代のフォームに改善中  心から活躍を願う【日本人初メジャースカウト・大慈彌功論】

2020年3月2日 22時18分

今シーズンのキャンプ初日、ブルペンで平野(奥)と投球練習をするマリナーズの菊池(社英夫撮影)

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 メジャーではオープン戦が連日行われている。マリナーズの菊池雄星も2度目の先発登板を終えたところである。

 雄星のメジャー移籍前の2018年、西武での防御率は3・08。全く物足りない数字であった。一方で、メジャー経験のあるNPB外国人選手に対しての被打率は1割8分6厘(97打数18安打)とまずまずであった。

 前回のコラムで言及した不安とは、その年の雄星の投球フォームと「マウンド・プレゼンテーション」(マウンド上での振る舞い)である。後者に関しては、痛打されたときに言い訳っぽい「ボディ・ランゲージ」(身ぶりや表情)が目に見えてきた。メジャーを志すなら、打たれても毅然(きぜん)と臨んでもらいたいと感じていた。

 投球フォームは17年時に比べて悪くなっていた。毎試合、多数のメジャースカウトが視察するプレッシャーの中で、より良い投球を見せなければとの気負いだろうか。かかと体重で左肩が下がり、反り気味で、体の開きが早くなっていた。打者に球の出所が見えやすいフォームである。

 マリナーズに移籍した昨年もそれを引きずっているようだった。今年1月、私は旧知のマリナーズ・ディポトGMに好調時の雄星の動画を送り、昨季のフォームと比べてもらった。私の意見にも賛同し、フォーム改善に向け取り組んでいるとのことだった。最新の動画を見る限り、17年時に近いものがある。

 マリナーズと雄星の契約は、左投手という特異性もあり4年最低61億6000万円保証。私の所属したフィリーズの提示金額は明かせないが、保証契約年数はマリナーズより長く、総額も遜色のない条件であった。後日、雄星の代理人は、優勝を狙う一員として期待されるフィリーズに対して、再建途中のマリナーズならそれほどプレッシャーがないので、雄星はマリナーズを選んだと語っていた。

 移籍発表は19年1月1日だった。「獲得できなければ職を辞する」とフィリーズに話していた私は、翌2日に辞意を伝えた。留意され、前年11月に結んでいた19年10月末日の契約満了まで勤め上げ、約束通り退団。花巻東高時代から追いかけた雄星の活躍を、今も心から願ってやまない。

 ▼大慈彌功(おおじみ・いさお) 元太平洋クラブ(現西武)捕手。ロッテでバレンタイン監督の通訳を務め、1997年からは同監督が指揮を執ったニューヨーク・メッツで日本駐在スカウトに転身。ドジャース、アストロズと渡り歩き、昨年まではフィリーズで環太平洋担当部長を務めた。

 

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