リュウグウノツカイの生態は?大きさや名前の由来など
アカマンボウ目リュウグウノツカイ科に分類される魚類です。体長は平均3mほどで、大きなものでは10mにもおよぶそう。現生する硬骨魚類のなかでは最長を誇っています。
北海道以南の日本海、太平洋、インド洋、地中海東部に分布していて、主に深海200~1000mの水域に暮らしています。
体の表面には「グアニン」というアミノ酸の板状の結晶があり、これが可視光線を反射するため、鱗が無いにもかかわらず鏡面のように美しく輝く銀色の体色をしているのが特徴です。さらに体長と比べて厚みのない体と、たてがみのような真っ赤な背ビレという、きわめて目立つ外見をしています。その一方で生息域が深海のため、生態はほとんど解明されていません。
主な餌はプランクトンやオキアミで、長い腹ビレの先端が獲物を見つけるための感覚器官となっています。
ちなみに名前は、漢字で表記すると「竜宮の遣い」。竜宮城から連想して付けられたともいわれていますが、由来を示すような文献が残っていないため詳細は不明です。英名は「oarfish」といいます。「oar」は舟をこぐオールを指していて、長くて先端が膨らんだ赤い腹ビレの形状に由来するとされています。
リュウグウノツカイは自分の体を切り落とす?
彼らは頭を上にした「立ち泳ぎ」の状態で静止する習性があります。これは、水中で影を作らないようにし、天敵から見つかりづらくする進化の結果だそう。移動をする時には背ビレを波立たせて泳ぎます。
長い体をもつリュウグウノツカイですが、実は内臓は頭部寄りにコンパクトに収納されています。そのため体の後ろ半分を失っても生きていくことが可能だとか。
天敵に襲われた際や、餌がとれずに消費エネルギーを節約する際などは、自分で体を切り離す「自切」をするそうです。これまで観察されている多くの個体にも、自切の跡が見られました。
ただトカゲのように再生する機能は無いため、1度体を切り離してしまうと、一生そのまま。体の後方が欠損せずに生涯を終える個体は非常に珍しいといわれています。
なお、同じアカマンボウ目に分類されるサケガシラも自切ができることが確認されています。彼らにはもともと「自切面」と呼ばれる節目をもっていて、外部からの刺激を受けると決まったポイントで体を切り離すことができるそうです。
リュウグウノツカイにまつわる伝説を紹介
世界各地に伝わる「人魚伝説」。西洋では、人間の上半身に魚の下半身をした美しい女性の姿が有名です。日本ではこの他に、人魚の肉を食べると不老不死になるという描写が加えられています。
これは、800歳を超えても外見は15~16歳の少女のままで生きていたという「八百比丘尼(やおびくに)」の伝説に由来しているそう。八尾比丘尼が不老不死になったのは、人魚の肉を食べたからであると言い伝えられてきました。そのため日本では、人魚を「食べ物」として扱う伝説も多く伝わっているのです。多くの文献でも、肉の味について触れられています。
しかし、西洋で人魚のモデルとされているジュゴンやマナティは、日本近海には生息していないため、「味」はわからないはず。その他の描写の要素もあわせて、リュグウノツカイこそが日本の人魚のモデルではないかという説があるのです。
江戸時代の「浮世草子」の作者として有名な井原西鶴は、著作『命とらるる人魚の』のなかで、外見を「かしら、くれなゐの鶏冠ありて」と描写しています。赤い鶏冠は、リュウグウノツカイの赤いヒレと一致するでしょう。
また江戸時代の作家、菊岡沾凉は、首回りに赤いヒラヒラしたものを巻いた人間の頭を持つ魚を見つけた漁師の話を描いています。
頭部に「赤」の描写があることと、人魚伝説自体がリュウグウノツカイの漂着情報が多い日本海沿岸部に集中していることも、人魚のモデルになっているという説を支えているでしょう。
リュウグウノツカイと地震の関係は?
時おり、リュウグウノツカイが日本海沿岸に打ち上げられることがあります。大きな地震が起きる数日前にこの現象が見られることから、災害の前触れであるとされてきましたが、科学的な根拠はありません。
実は人魚も、不漁や荒天を招く不吉な存在と考えられてきました。目撃例が少ないからこそ凶事の前触れだとされてきたのかもしれません。
リュウグウノツカイが漂着する理由の多くは、遊泳能力の低さにあるようです。彼らは水中を自由自在に泳いでいるわけではなく、基本的には暖流にのって漂うように海中を移動しています。しかし何かのきっかけで暖流の下を流れる寒流に迷い込んでしまうことがあり、水温の急激な変化で弱った結果、浅い水域に浮かびあがって浜に打ち上げられるのではないかと考えられています。
進化から紐解く深海生物学
作者 | 長沼毅, 倉持卓司 |
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出版社 | 祥伝社 |
出版日 | 2015年02月02日 |
リュウグウノツカイをはじめ、ダイオウイカや単細胞生物などさまざまな深海生物を紹介している作品です。進化や人間との関わりなど、歴史を軸にしているのが特徴でしょう。
深海生物は特異な外見をしていることが多いので、ついその見た目のみに注目してしまいがちですが、彼らの生態を知ることで、その姿である必然性がわかるでしょう。環境に適応して進化を続ける、命の力強さを感じることができます。
自然史の分野で20世紀最大の発見というチューブワームや、深海で笑うホヤと称されるオオグチボヤなど、珍しい生物もたくさん。ユニークな生きざまを垣間見ることができる、好奇心が刺激される一冊です。
リュウグウノツカイは食べるとどんな味?
作者 | ぼうずコンニャク 藤原昌高 |
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出版社 | マイナビ |
出版日 | 2015年07月31日 |
沿岸や浅瀬に生息する魚のうち、限られた地域でのみ流通している、食用としてはマイナーな魚介類を紹介している図鑑です。
実は、漁でとれた魚の30%は使い道がないと廃棄されてしまっているそう。本書は、マイナーだけど食べてみるとおいしい種類を紹介し、自然にとっても人間にとってもよい結果になるようにと作成されました。その種類の多さに驚くのではないでしょうか。
リュウグウノツカイは食べるとブヨブヨしていて美味しくないという説がありますが、本書によると「新鮮なものであれば寿司でも食べられる」「出汁が美味しい」そう。人魚も文献によって味の評価が分かれていましたが、これも鮮度による違いなのかもしれないと想像させられる内容です。
珍魚度、味、流通価格がそれぞれ5段階で評価されているので、想像を膨らませて楽しみながら読むことができます。他の図鑑には載っていない魚介類を数多く見ることができる一冊です。
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