ごはんの友にも、お酒の後にも。
料理のいろどりや薬味として便利な、青ねぎ。ほんの少しだけ使って、残ってしまうことも多いですよね。 今日ご紹介するレシピは「肉吸い」という名前ではありますが、主役はたっぷりの青ねぎです。ねぎが余ったときの使い切りメニューとしても便利なものです。
スープのだしには、「白だし」を使います。めんつゆのような「白だし」は、水で薄めるだけで簡単に使える合わせ調味料。食材の色や香りを生かせるので、使いこなすことで料理の幅がぐっと広がります。
たっぷり肉が入っているからおかずスープとしても最高ですし、お酒の後にほんの少しだけ麺を入れ、〆として食べるにもよいものです。牛肉の脂のコクと、さわやかな青ねぎの香りで食欲の刺激される一皿です。
塩肉吸い
材料(2人分) 所要時間10分
牛肉薄切り 150g
青ねぎ 1/2束(8~9本)
白だし 大さじ3 ※ない場合は、和だしプラス塩でも代用可能
水 500mL前後 ※白だしの希釈よる
作り方
1.鍋に水500mLを入れ、白だし大さじ3を加えて煮立てる。青ねぎを刻む。★1★2
2.弱火にして、牛肉を広げて一枚ずつ入れ、色が変わるまで煮る。★3
3.アクをすくい、青ねぎを入れて火を止める。
レシピのポイント解説
・青ねぎについて
・白だしについて
・肉の煮方
★1 青ねぎについて
「青ねぎ」という呼び方は非常にざっくりしていますが、緑の部分が多いねぎの総称です。白ねぎに比べてやわらかく、香りが高いことから薬味に使われます。
お店では商標名や品種名が混ざっているので、ちょっとわかりにくいかもしれませんが、写真のようなネギなら、どれを選んでも大丈夫です。
青い部分が多い万能ねぎは、九条ねぎの変形種。わけぎは、ねぎとたまねぎとの交配種
似たようなねぎなのに、「万能ねぎ」「細ねぎ」「小ねぎ」「おしゃれねぎ」「九条ねぎ」「わけぎ」など、実にさまざまな呼び名があります。
細くて緑の部分が多いねぎのほとんどは、九条ねぎを品種改良したもの。呼び方がバラバラなのは、だいたい産地によって商標名をつけているためで、使い勝手にそれほど変わりはありません。
また「わけぎ」は、形は九条ねぎと近いですが、純粋なねぎではなく、たまねぎとねぎの掛け合わせです。香りや味はたまねぎ寄りで甘みが強く出ますが、わけぎでもおいしくできますよ。九条ねぎや、わけぎはやや太めなので、1~2本で十分です。
いずれも根は落とし、細いねぎの場合は3~4センチ幅にザクザク切りましょう。九条ねぎなど少し太めのねぎは、斜めに薄切りです。
九条ねぎは、斜めに切る。火の通りを合わせたいので、白い部分はなるべく薄く
★2 白だしについて
今回のスープ、名前は「塩肉吸い」となっていますが、実は純粋な「塩味」ではありません。
味の秘密は「白だし」。めんつゆのような合わせ調味料ですが、めんつゆが濃口醤油を使っているのに対して、白だしでは白醤油、薄口醤油、塩など、色づかない調味料を使うため、淡い色の吸い物のような仕上がりになります。ちなみに「白醤油」は小麦粉を原料として作る醤油(通常の醤油は大豆ですね)。
たいていのスーパーでは、めんつゆコーナーにあるはずです。使い方はめんつゆとほぼ同じで、水でうすめて使います。うどんつゆをこれで作ると関西風になりますが、めんつゆほどの甘さはありません。味にも醤油のような主張がないので、素材の味を生かす煮物にも使えます。
白だしのいろいろ。合わせ調味料なので、メーカーによって、だしのベースも違えば、使っている調味料も違う
今回はお吸い物の濃さにしましょう。白だしはパッケージの裏面に、お吸い物にするときの倍率がついているはずです。めんつゆよりも、やや濃縮度が高く、8~10倍ぐらいのものが多いです。あとで薄めたり味を足したりも、簡単です。
パッケージの表示に従って吸いものの濃さにする。今回使った白だしでは、大さじ3(45mL)に対して水500mL
白だしがない場合は、通常のだし(だしパックでも、だしの素でも、昆布かつおなどでとっていただいてもかまいません)550mLに、塩小さじ2/3と酒大さじ1を入れて、スープのベースをつくりましょう。
★3 肉の煮方
今日は牛肉の薄切りを使います。切り落としで十分ですが、少し脂身がついているといいですね。牛肉の場合、すきやき肉などの立派な肉が切落としとして入っているケースもありますが、あまり大きすぎるときは、包丁かキッチンばさみで食べやすい大きさに切ってしまいましょう。
薄切り肉はくっついて塊になってしまっていることも多く、これはなるべくはがしておきます。塊のまま入れると、火の通り方がムラになってしまうからです。
肉は簡単に広げておくとよい。あまり大きい場合はキッチンばさみなどで切って
だしを鍋で沸かしたら弱火にしてから、牛肉を少しずつ入れていきます。肉を入れると温度が下がりますが、大丈夫です。そのまま煮ていきます。
火は強すぎない方がよい
再度スープが沸騰すると、アクが出てきます。牛肉のアクはあまりきれいではなく、すくうとよいのですが、肉をいつまでも鍋に入れておくと固くなってしまうので、肉だけ先に鍋から器に取り出してしまうとあわてずに作業できます。あとで食べる人がいるときにも、肉は取り出してしまいましょう。
アクは肉によっても量が違うので、それほど気にならなければそのままでも
最後に切ったねぎを入れて出来上がり。ねぎは、余熱で火が通ります。
青ねぎのおいしさを楽しもう
おかずとしてもボリュームのある肉スープはうれしいですよね。もちろんお酒にも合います。赤唐辛子などを少し多めに振って、ピリ辛にしても食が進みます。
「肉吸い」という呼び方は、大阪のうどん屋さん発祥で、「肉うどん」からうどんを抜いたものを出したのがはじまりだそうです。牛肉、青ねぎ、白いだしなどを使うのは、関西のうどんの特長です。関東でできたら、だしはもっと黒い色で、肉は鶏や豚、白ねぎだったかもしれませんね。
青ねぎは年中出回っていて旬をそれほど感じさせない野菜です。こういう使い切りメニューを持っておけば、常に冷蔵庫に常備しておくこともでき、料理の幅が広がると思います!
【アレンジ】がっつり足しても、ちょい足ししても
もともとが「うどんつゆ」ですので、ほぼあらゆるものを加えられます。卵やわかめなど、うどんに入っているものを思い浮かべると、相性のよさそうなものが想像できるはずです。また、ちょっとアクセントをつけるための具材も案外楽しいものです。すりごまや揚げ玉を加えるなど、いろいろアレンジしてみてください。
肉玉吸い
たまごを落として、ボリュームとうまみをアップ。人数が多いときは、別に落とし卵を作って、あと入れしてもよいです。
肉うどん
もともとがうどんつゆなのですから、うどんを入れたら、肉うどんですね。トッピングで楽しみましょう。揚げ玉を乗せてボリュームアップです。
お知らせ
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