新型コロナウイルス感染症を過去のSARSやMERSなどと比較したいと思い、ネットで探している内に、スペインかぜやエボラ出血熱なども気になり、調べてみました。
これらの情報をすぐに比較表などで確認できるコンテンツが多くないことから、ここに比較表を置いておきます。
コレラについては、これまでに7回の世界的流行(コレラ・パンデミック)を引き起こしていることもあり、正確な感染者数や死亡者数を把握できる情報を確認することができませんでした。
もし、ご存知の方がいらっしゃいましたら、こちらかもしくはTwitterにお声がけいただけると大変助かりますm(_ _)m
画像で確認できる簡易版は表の下にあります。
表は横にスクロールしてご覧下さい。
名称 | 通称名など | 原因のウイルスまたは菌 | 流行時期 | 起源 | 流行エリア | 感染者数 | 死亡者数 | 致死率 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ペスト | 黒死病 | ペスト菌 | 1348-1420年 | 2600年前の中国で初めて発生し、シルクロードを経て欧州にもたらされた?(諸説あり) | ヨーロッパ | 世界中で5億人以上の者が感染したとされる(※1) | 14世紀には推計5,000〜1億人が死亡したとされる。 | そのまま放置すると肺炎などによりほぼ100%の人が死亡し、治療行為を試みても致死率は30-60% | 当時、ヨーロッパの全人口の30%から60%が死亡した。イギリスやイタリアの街や村の中には人口の80%が死亡したところもある。 社会構造を変えてしまい、現代にまで至る痕跡を残すほどの打撃を与えた。 2010年-2015年には世界で3,248人の感染者が報告され、内584人が死亡した。 現在、最も流行している国は、マダガスカル、コンゴ民主共和国、ペルーの3か国。日本では1926年以降患者の報告はない。 |
コレラ | コレラ | コレラ菌 | 複数回 | アジア型は古い時代から存在していたにもかかわらず、不思議なことに、世界的な流行(パンデミック)を示したのは19世紀に入ってからである。 コレラの原発地はインドのガンジス川下流のベンガルからバングラデシュにかけての地方と考えられる。 |
アジア・アフリカ・ヨーロッパ | 不明 現在でも毎年、130万-400万人のコレラ患者が発生している(※2) |
日本におけるコレラ統計自体が明治10年から始まっているが、それ以降毎年のように流行している。 明治時代のコレラによる死者の総数は約37万人であり、日清、日露戦争の死者の数を上回るものであった。 |
死亡リスクはたいてい5%以下であるが、医療アクセスに乏しい地域では50%ほどに高まる。 | 予防には、衛生改善と清潔な水へのアクセスが必要。 これまでに7回の世界的流行(コレラ・パンデミック)を引き起こしている。 日本で初めてコレラが発生したのは、最初の世界的大流行が日本に及んだ18222(文政5)年。 幕末から明治にかけて「三日コロリ」「虎列刺」「虎狼痢」「暴瀉病」とよばれ、非常に恐れられた。 WHOの報告では2016年に約13万件以上のコレラ感染者と2,400人以上の死亡者が記録されている。 全体としてはアフリカ54%、アジア13%、ヒスパニオラ32%が多くを占めている。先進国では稀な病気。 |
スペインインフルエンザ | スペインかぜ | H1N1亜型(A型インフルエンザウイルス) | 1918-1919年 | アメリカ疾病予防管理センター(CDC)によれば、既に1915年にインフルエンザと肺炎による死亡率がアメリカで増加しているが、発生源は依然不明としている。 | 世界中 | 5億人以上(当時の全人類の3割弱) | 5,000万〜1億人 | 10-20% | インフルエンザ・パンデミック重度指数(PSI)においては最上位のカテゴリー5に分類される。 流行源はアメリカ合衆国であるが、感染情報の初出がスペインであったため、この名で呼ばれる。 日本においては、当時の人口5,500万人に対し39万人が死亡し、アメリカでも50万人が死亡した。 これらの数値は感染症のみならず戦争や災害などすべてのヒトの死因の中でも、最も多くのヒトを短期間で死亡に至らしめた記録的なものである。 |
エボラウイルス病(※3) | エボラ出血熱またはエボラ | エボラウイルス | 1976-2019年 | 1976年、アフリカ中部のザイール(現、コンゴ民主共和国)とスーダン(現、南スーダン)で致死率の高い出血性の病気として発見され、恐れられた。 エボラウイルスの自然宿主は、複数種のオオコウモリと考えられている。 |
主にアフリカ(ギニア・ウガンダ・コンゴ・スーダンなど) | 28,639人 | 11,316人 | 39.5%(※4) | エボラウイルスは、治療をしなければ、しばしば死に至る急激かつ重篤な病態を引き起こす。 エボラ出血熱は、1976年に初めて、現在の南スーダンのンザラとコンゴ民主共和国のヤンブクの2か所で同時期に発生した。 後者は、エボラ川の近くの村で発生したため、疾患名が川の名前にちなんで名づけられた。 |
重症急性呼吸器症候群(SARS) | サーズ | SARS-CoV(サーズコロナウイルス) | 2002-2003年 | 中国南部の広東省(ただし依然として不明な点が多い) | 中国・香港・台湾・シンガポール・カナダ等(※5) | 8,098人 | 774人 | 9.6% | 台湾の症例を最後に、2003年7月5日にWHOによって終息宣言が出されたが、32の地域と国にわたり8,000人を超える症例が報告された。 |
中東呼吸器症候群(MERS) | マーズ | MERS-CoV(マーズコロナウイルス) | 2012-2018年 | 2012年、発生国はサウジアラビア。ヒトコブラクダが保有宿主(感染源動物)であるとされ、ラクダとの接触や、ラクダの未加熱肉や未殺菌乳の摂取が感染リスクになる。 | 主に中東地域 | 2,494人 | 858人 | 34.4% | 50~59歳の年齢層は、MERSの最初の感染症例(ラクダ等からの感染)となるリスクが最も高い。 30-39歳の年齢層は、二次感染症例(ヒト等からの感染)となるリスクが最も高い。 死亡者数は、初回感染症例では50~59歳、二次感染症例では70~79歳の年齢層。 |
COVID-19 | 新型コロナウイルス感染症 | SARS-CoV-2(新型コロナウイルス) | 2019-2020年 | 2019年11月に発生が確認された。その後2019年〜2020年にかけての中国湖北省の武漢でアウトブレイク。 コウモリまたはヘビが起源とされるが、詳細不明。 |
世界61か国(2020.03.02現在) | 88,789人 | 3,020人 | 3.4%(※6) | 春節(旧正月)の時期と重なったことが原因で、一気に世界中に拡散された。韓国、イタリア、イラン、日本などと比較して、台湾がSARSの教訓から先手先手の施策で国民から支持を集めている。 2/26に米国で新型コロナウイルスに対する世界初のワクチンの臨床試験を実施の運びとなる(※7)。 まだ収束の見通しは立っておらず、東京オリンピック開催の延期や中止を危ぶむ声もある。 |
※1:厚生労働省「現代生活に伴う健康問題の解決に向けて」
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/04/dl/1-2.pdf
※2:厚生労働省 検疫所 FORTH「コレラについて」
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2018/01111338.html
※3:エボラウイルス病
https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/a/vhf/ebora/392-encyclopedia/342-ebora-intro.html
エボラ出血熱患者が必ずしも出血症状を呈するわけではないことから、エボラ出血熱に代わってエボラウイルス病(エボラウイルスびょう、英:Ebola virus disease[† 3];EVD)と国際的に呼称されている。
※4:エボラウイルス病の致死率について
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2017/06201038.html
エボラ出血熱の死亡率は平均して50%前後。過去の流行では、致死率は25%から90%の間で変動している。
表内の致死率は単純に感染者数を死亡者数で割って算出したもの。
※5:重症急性呼吸器症候群(SARS)の国別報告数のまとめ(2002年11月1日〜2003年7月31日)
http://idsc.nih.go.jp/disease/sars/cumm-0926.pdf
※4:湖北省での致死率は高く、日本における致死率は低い。表内の致死率は単純に感染者数を死亡者数で割って算出したもの。
※5:米国で新型コロナウイルスに対する世界初のワクチンの臨床試験を実施へ
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202002/564508.html