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【スカーレット127話】
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川原先生は細かいところを確認します
あっ、ほんま?
そしてチラシを見るのですが、細かいところが気になってきます。
◆川原先生チェックタイム
【時間は?】
先生:一時間から二時間の体験? えらい大雑把やな。
課長:教える側に任せてんねん。
先生:無理や。本焼きまでするんやろ。そう言い切る。
課長:それはあとで郵送や。
→陶芸体験はそういうもんやな。
【人数は?】
先生:そもそも何人来やる?
課長:6人。神林さんは人気。
【人気の秘密は?】
課長:チラシに可愛らしぃティーカップを載せた。女性がほとんどやし、あー可愛ぃ、こんなん作ってみたい思うんやろ。喜美子は案内チラシの代わりに見本でも。
はい、ここで喜美子の心が点火されました。
ティーカップ、女性向け、可愛いもの。それは本来得意分野やで! あの「サニー」のお花模様コーヒー茶碗でも証明済みです。
絵付け火鉢。
荒木荘のペン立てもそう。
これもおもろいところではありますが、喜美子本人は可愛いものと無縁なんですよね。服からしてそういうところがある。それなのに、デザインセンスはあるのです。
ここで信作が慌ててはいる。
自然釉の川原喜美子先生が対抗せんでええ。他のところは一点ものを作っているわけでもない。
媚びんでええ。そもそも媚びるってなんやねん、喜美子が問いかけると、相手を喜ばせるようにすることやと信作は言うわけです。
「喜んでもらうことが媚びることなら、うちはいくらでも媚びるで!」
そう喜美子はかえってヒートアップします。ここで信作は苦い顔で、地方自治体あるあるを言い出す。
地元貢献やから、頭下げて、謝礼程度しか出せん。な、生々しいわ……。
「仕事は仕事やん」
喜美子はそう言われても挫けへん。けれども、仕事やったらかえって頼めないと、信作はますます困り果てます。
なんでも、黒川先生は断ったのだと。息子にはやらせん、アーティストやいうて。芸術家に体験教室はやらせん。そういうことやと。
おっ? なんか記憶刺激されるで。フカ先生前任者にもそういう雰囲気はあったけれども。
昨年のアレや。
「クリエイター(※発明家、画家等)だから、戦時中だろうが農作業しない!」
「クリエイターだから、戦後復興期だろうと、お手伝いしない!」
「クリエイターだから、カップラーメン容器の開発しない!」
「ダーリンはクリエイターだからハイスペックですぅ!」
「クリエイターでないお前はもう、死んでいる……」
なんやねん、アーティストにせよ、クリエイターにせよ、ほんまにもう……。そういう地位は、下々のものと同じことはしない、オーホホホ! そういう話ですか?
そんなもん大河の公家あたりがやってりゃええんです。公家だって仕事しとるけどな、近衛前久とかな!
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近衛前久は信長や謙信とマブダチのスーパー関白!本能寺後に詠んだ南無阿弥陀仏
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そして信作は、さらに危険領域に突っ込み始めます。
わからん人も来る。鳥居みたいなの。わからん奴が来る。「地味やなぁ」そういうことを言い始めるんもいる。喜美子の心が伝わらへん人が来るんや。
信作はええ人ですので、撤回しようかと言い出す。やっぱりやめようかと言い出す。誤解されること。理解されない悲しみがあればこそ、そういうことをキッパリと言う。
喜美子は言い返します。
「いったん引き受けたもんを、断るわけないやろ。ほんでうちのことなんや思うてんの? 信作からの頼み事、断るわけないやな」
喜美子、カッコよさの新境地へ。そう突っ込んだようなものを感じる。
ろくろを4つ出したい。2つしかない。言うが早いか、早速準備を始めます。
喜美子は用意周到です。荒木荘時代の早起きから、穴窯挑戦の薪拾いまで、やると決めたらやる。そういう性格です。
喜美子は化物だとか、悪魔だとか、取り憑かれているとは言われますが、幼少期から変わらないところはあります。目標をロックオンしたら、一直線にがんばりぬく。そういう強さとひたむさきがある。
いくらお金や地位を手にしようが、そこは変わらない。
ちやほやする世間に戸惑っているところはあった。喜美子にとって最高の気分転換が始まるようです。
溶けない雪を器に焼き付ける
さて、信楽窯業研究所では。
帰り支度をする研究員もいる中、武志が亜鉛結晶釉に取り組んでいます。
掛井によほど気に入ったんやなと問われ、
こう返しておりました。
俺の熱い瞬間です――。
亜鉛結晶が雪のように見えて、器に雪を降らせたいと思うた。そう語るのです。
まずは、亜鉛結晶の再現を目指す。
結晶を出したいところへ、核を付着させる。結晶が出たところで、下地を変えることにしました。
丁寧で美しく、これも欲しいと思える見事な描写です。
下地に工夫をする。数字をきっちりノートに取る。そうして作り上げてゆきます。釉薬が溶けすぎて、思った通りの結晶がなかなか出なかったこともありましたが、克服しつつあります。
プリン頭の、あの熊谷竜也もそんな“たけたけ”を見つめているのでした。
焼く温度と、冷ます時間をコントロールすることで、コツを掴みつつある。そう説明されます。
やはり本作は、陶芸描写が細かい。
分量。焼く温度と冷ます時間。そういう原理原則を把握した上で作っていることは、わかるわけです。
じゃあなんで、じっくり描かないなんて指摘もされるのか?
感じ方の問題でしょう。
雑でも、顔芸絶叫して、BGMでジャカジャカ盛り上げると、見る側の感情ボルテージが上がります。
「なんかええもん見たわ。こういうんがじっくり描くっちゅうことやろなぁ」
「ほんまそれやで……」
こうなる。
陶芸だけでなく、作劇だってコントロールはできるものでして。
コントロールできないものも、この世界にはあります。
ここで石井真奈が、差し入れを持ってきます。お礼を告げると、毎日根詰めてますよね、と言ってくるのです。
亜鉛ナントカ。
うまいこといっているという話題になると、武志はこう言い出します。
石井さんもうまいこと行ってるん。大輔とつきあうようになった。憧れのびわ湖タワーに行ったって。おお、昭和の遺物やな。
昭和といえば、景観を無視してタワーとか、なんちゃって犬山城風のアレやコレやが流行しておりまして……。
犬山城に罪はないのです。
ただ、これぞ城だという造形ゆえに、全国各地、そもそも天守閣が存在しなかった山城跡まで作られた。
冷静になってみるとアホのような話です。しかし、これが城の復元からすると問題でして。歴史的根拠がないうえに、遺構をぶち壊してしまい、やっちまったケースもある。桜を植えるのもそう。桜の根っこは、遺構を破壊する。
はい、そんななつかしのびわ湖タワーはさておき。
真奈はムッとしている。
「うまくいっても行かなくても、川原くんには言いません! 絶対言いませんから!」
それうまくいったら次世代展応募するん?
そう言いつつ、がんばってください、ほなさいならと去ってゆくのでした。
ここまでは、両親に似て鈍感だと微笑ましいのですが、直後、武志は、ふらっとよろめきを感じている。
喜美子はそのころ、陶芸教室の準備中。
明日はどんな人が来るんやろか。そう想像しながら、作品を作る喜美子です。
お疲れ様でした!
まずはニュースから。
◆戸田恵梨香、主演朝ドラ「スカーレット」クランクアップに「やりきりました」(コメントあり)
◆「スカーレット」脚本・水橋文美江氏「迷いなく」脱稿 “戦友”岡田惠和氏も称賛「素晴らしい」
水橋氏は「大変だった?楽しかったです。迷ったりとか?ないですね。何が楽しいって、チーフプロデューサーの内田(ゆき)さんとチーフ演出の中島(由貴)さんがとても頭のいい方で、この2人がブレないんですね。お会いした瞬間に大丈夫だと思って。何の迷いもなく。打ち合わせで『どうしよう?』みたいはことは、ほとんどなかったですね。気持ちよく書かせていただいて」と振り返った。
わかるで!
少人数でガシッと組み合って、やってきた。そういう強みを感じる作品です。
だからこそ、なまじ隙ないからこそのもやもやニュースは出てますね。低視聴率確定だから、数字が跳ねないとワクワク論調も出てきております。
よかったな、ほんまに。
いや、本作のことやのうて、叩く側は。視聴率叩きでええんやったら『半分、青い。』に文句つける理由はさしてないで。
盤石だと困る。そういう戸惑いはありましたよね。
『半分、青い。』みたいに、脚本家がSNSをやっていれば、その態度が悪いと難癖をつけたらええ。
『なつぞら』は、戦災孤児という境遇を無視して、夫が育児に協力的なところあたりを「イージー!!」と言い張る。あと主演女優叩きか。
こういう心理、「カニ脳」という名前もあるで!
ウルフ氏によると、「カニ脳」は嫉妬・恥・悪意・不安・自尊心の低さ・自己批判・競争心など、さまざまな要因から生まれるとのことですが、とりわけ大きな原因は「誰かの成功や幸せが、何らかの形で自分の人生の喜びを吸い取ってしまうのではないか?」という発想です。この発想にとらわれてしまうと、自分より優秀で、恵まれていて、幸運な人と自分を常に比較してしまうようになり、最後には不平不満ばかり口にするようになってしまうとのこと。
朝ドラという女性向けのフォーマットですと、女叩きをワサワサと始めるわけです。
男性脚本家、男優はそこまで叩かれませんが、本作の場合、八郎ファン叩きがあるようです。これも、女性集団バッシングですわな。
本作は、そのどれもできなくて、叩きたいのに拳を振り下ろせず、ワタワタしていた感はありました。
叩く理由は後付けで。不快感の理由は、あとで考えたらええ。そこで苦戦した形跡がある本作には、手堅さを感じます。
なんだかギスギスしてきましたが、話を戻します。
本作には深い意義があることが最後の一ヶ月でまた証明されるとは思います。
いよいよ出演する稲垣吾郎さん。
彼のコメントからも伝わってきます。
戸田恵梨香さんはじめ、脚本を読み込んでいると伝わってくるこの作品。
ラストスパートを見届けたいと思います。
【参考】
スカーレット/公式サイト