ドラマログテキストマイニング

テレビ番組(ドラマ)の字幕情報を対象に、テキストマイニングの研究をしておりますので、解析結果の公開をメインに関連グッズを交えた構成で記事にしてます。また、解析結果の信憑性が確認できるよう、解析用ソースも部分引用し掲載してあります。

おしん 一挙再放送 第47週・完結編 乙羽信子、高橋悦史、野村萬… ドラマの原作・キャスト・主題歌など…

おしん 一挙再放送▽第47週・完結編』のテキストマイニング結果(キーワード出現数ベスト20&ワードクラウド

  1. 希望
  2. 道子
  3. 百合
  4. 仕事
  5. 一緒
  6. 気持
  7. 初子
  8. お前
  9. お母さん
  10. 結婚
  11. 今日
  12. 田倉
  13. 父親
  14. 母親
  15. 一人
  16. 大丈夫
  17. 自分
  18. 心配
  19. 一番
  20. 辛抱

f:id:dramalog:20200301091125p:plain

おしん 一挙再放送▽第47週・完結編』のEPG情報(出典)&解析用ソース(見逃した方はネタバレ注意)

解析用ソースを読めば、番組内容の簡易チェックくらいはできるかもしれませんが…、やはり番組の面白さは映像や音声がなければ味わえません。ためしに、人気のVOD(ビデオオンデマンド)サービスで、見逃し番組を探してみてはいかがでしょうか?

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おしん 一挙再放送▽第47週・完結編[字]

主人公おしんの明治から昭和に至る激動の生涯を描き、国内のみならず世界各地で大きな感動を呼んだ1983年度連続テレビ小説。全297回を1年にわたりアンコール放送。

詳細情報
番組内容
昭和42年秋、希望(のぞみ・野村万之丞)の妻・百合が交通事故で他界した。百合が楽しみにしていた新築の家へ引っ越す前夜の出来事だった。4才の息子・圭が残され、母を失った幼い圭の姿が葬儀の参列者の涙をさそった。百合の死をきっかけに、昔の仁(高橋悦史)と百合の関係が仁の妻・道子に知られてしまい、道子は子どもを連れて実家へ帰ってしまった。おしん乙羽信子)には二重のショックだった。
出演者
【出演】乙羽信子高橋悦史野村萬佐々木愛,岩渕健,【語り】奈良岡朋子
原作・脚本
【作】橋田壽賀子
音楽
【音楽】坂田晃一

 

 


♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和42年の秋 希望の妻 百合が
交通事故で他界した。

楽しみにしていた新築の家へ
引っ越す前夜の出来事であった。

一粒種の4歳の圭が残され
母を失った幼い姿が

葬儀の会葬者の涙を誘った。

(希望)本当に
お世話になりました。

なんとか 無事に
葬式も出してやる事ができて…。

(おしん)つらいだろうけど

あんたには
立派な仕事があるんだから

あだやおろそかにしたら
罰が当たるよ。

はい。 百合のためにも いい仕事を
しなきゃと思ってます。

私の仕事を 今まで
支えてくれたのは 百合です。

どんな貧しい暮らしの中でも
文句一つ言わずに

明るい顔で耐えてくれたのも
いつかは きっと

私が いい仕事をすると
信じていてくれたから…。

希望…。

悲しんでばかりいたら
百合だって成仏できないでしょう。

これからは
いい作品を焼く事だけが

百合への供養だと思ってます。

(初子)圭ちゃんのためにも
頑張らなくちゃね。

(圭)母さん…。

おしっこ?
母さんは?

おしっこなら
おばちゃんと行こう。
母さんは?

母さんは 遠い遠い所へ行ったって
言っただろ。

僕も行く!
(希望)圭は 行けないんだ。

父さんと おうちで
お留守番してようね。

(圭)僕も行く!

圭! 父さんの
言う事が聞けないんだったら

圭一人で
どこへでも行きなさい!

父さん 知らないから。
希望ちゃん!

少し厳しく言わないと…。

この子には 人が死ぬっていう事が
理解できないんだよ。

いつ 帰ってくるの? 母さん。

圭が いい子にしてたら…。

そんな ごまかしが
いつまで きくって言うの?

じゃあ
どうしろって言うんですか?

もう少し小さかったら
母親の事は分からないだろうし

大きければ
事情は よく のみ込んで…。

一番 難しい年頃なんだよね。

時のたつのを待つよりほかに…。

父さん おしっこ!

はいはい!
父さんと!

さあ 行こう 行こう。

希望。 圭に
そう まとい付かれたんじゃ

仕事になりゃしないだろ?

そうですよ。 やっぱり
誰か いてあげないと…。

希望ちゃんの面倒
見る人だっているし…

これから
ここで独立するとなると

いろいろ
準備だってあるだろうし…。

だからね
私も しばらく そのつもりで

ここへ残ってやろうと
思ってるんだけど…。

母さん一人じゃ 無理ですよ。
そのくらい 平気だよ。

働くとか 忙しいっていうのは
慣れてるんだから。 ただね…。

何だったら 私が…。

圭が ここにいたんじゃ

いつまでも
希望の後を追うだろうし

そしたら お前の仕事に障るね。

いいえ。 私は 圭を おぶってでも
仕事するつもりでいますから。

そりゃ お前が圭を手放したくない
気持ちは よく分かるよ。

百合ちゃんが いなくなったんで
あとは もう 圭だけだからね。

でも 仕事が大事だったら
やっぱり 足手まといになるだろ。

母さん…。

ずっととは言わない。

せめて 今の仕事が落ち着くまで
圭を 母さんに預けなさい。

圭だって ここにいたら

いつまでも 百合の事は
忘れられないだろうし

環境が変わったら 母親の事も
諦めがつくんじゃないのかね。

お前が ホントに
仕事をするつもりだったら

酷なようだけど そうしなさい。
それじゃ 希望ちゃんだって

圭ちゃんだって
かわいそうですよ!

私は 希望と圭のためを思って…。

母さん 私に このうち
手伝わせて下さい。

希望ちゃんだって 一人じゃ
食べるのにだって困るだろうし

圭ちゃんだって 私が 面倒 見たら
少しは懐いてもくれますよ。

いいんだよ 初ちゃん。
圭は 母さんに お願いする。

希望ちゃん あんた一人で
どうするって言うの?

私なら 何とでもなる。
百合だって ついてくれてるよ。

確かに 甘い気持ちで
仕事なんか できやしない。

せっかく 母さんに
独立させてもらったんです。

今は 圭の事に かまけてる時じゃ
ありません。

仕事しなきゃ
借金だって返せないんです。

そんな事 私は
心配してるんじゃないんだよ。

お前にとって
今が 一番 大事な時だから

心を鬼にして…。

はい。 圭の事 お願いします。

安心おし。 しばらくの辛抱だ。

そのうち 仕事が落ち着いたら

また 一緒に住めるように
なるんだからね。

初ちゃんにも 迷惑かけるけど…。

かわいそうに… 圭ちゃん
泣き疲れて 寝ちゃったわ。

目が覚めたら また 人騒がせだね。
希望ちゃん 大丈夫かしら。

急に独りぼっちになっちゃって…。
独りぼっちの方が いいんだよ。

それで駄目だったら
希望も 大した男じゃないよ。

母さん…。

圭がいたらね どうしても
めそめそした気持ちになる。

一人だったら
いやでも 仕事をしないと

つらさを忘れられないからね
仕事に 打ち込む事になるんだよ。

母さん…。

おばちゃんが いるからね。

圭ちゃんの事は 何でも
おばちゃんが やってあげるから。

お利口だもんね。

かわいい顔してる…。

百合ちゃん どんなにか
心残りだったでしょうね。

初ちゃん
圭だって すぐ慣れるよ。

希望と百合が
いなかったら

頼るのは あんたと
私だけなんだから。

大丈夫だよ。

♬~

あ~ やっと 人心地つきました。

3日も お風呂に
入れなかったんですもの。

お夜食でも作りましょうか?
そうだね。

お通夜だとか お葬式で ゆっくり
御飯も食べられなかったから

ほっとしたら 何だか
急に おなか すいちゃった。

母さんも
ホントに お疲れになったでしょ。

圭も疲れたのか よく眠ってるわ。
人の出入りも多かったし

いろいろと
落ち着かなかったでしょうね

圭ちゃんも…。

仁ちゃん。 びっくりさせないでよ
こんな時間に…。

何だ 酔ってるの?
(仁)ハハハ!

表 通ったら 電気ついてるの
見えたから。 早かったんだね。

しばらく 希望の所に
いるんじゃなかったの?

無事にね
お葬式も終わったんだけど

まあ いろいろ 事情もあって
早く帰ってきたんだよ。

大変だったろうな 希望…。
俺は 行ってやれなかったけど

参ってるんじゃないのか?
誰か そばにいてやればいいのに。

いつまでも しょんぼりしてたって
しょうがないだろ。

クヨクヨしたって
百合ちゃんが

生き返ってくる訳じゃ
ないんだから。

希望 幸せだったんだろうにな…。
ひどいよな。 神も仏もないよな。

留守中
何にも変わった事なかった?

何 こしらえてるの?
俺 腹 減ってんだ。 一緒に頼む。

おうどんよ これで よかったら。

結構 結構!
何だって 腹に入りゃいいんだ!

あんた
一体 何時だと思ってんの?

おなか すいてるんだったら
うちへ帰って 食べなさい!

また 遅くなると
道子さんに 文句 言われるよ。

文句 言う人なんか いないもんね。

何 言ってんだい!
道子さん 怖いくせに!

そうよ。 仁ちゃん 酔うと
気が大きくなるんだから。

うちには 誰もいないの!
帰ったって 食う物もないんだよ。

俺 ここへ泊まってくかな。
仁…。

道子 名古屋 帰っちまったんだ
子ども 連れて。

へえ。 学校 お休みでもないのに?
川部さんで 何かあったの?

別に。
俺に 愛想が尽きたんだとさ。

何 バカな事 言ってんの
いい年して!

夫婦ゲンカなんか
してる時じゃないだろ。

子どもたちの大事な学校が
あるっていうのに…。

母さん そんな事 言えた義理じゃ
ないだろ!

母さんのせいなんだぞ!

変な言いがかりは よしとくれよ。
私が 一体 何したって言うの?

母さんはね あんたたち夫婦には
言いたい事は 山ほどあるけど

黙って 辛抱して
道子さんにだって

できない遠慮をして…。
よく言うよ!

俺たち 百合の通夜に行くつもりで
支度して出てきたのに

母さん 行かせてくれなかったじゃ
ないか! 当たり前じゃないか。

お前が百合にした事を考えたら。
そりゃ 俺にも よく分かったよ。

俺が葬式に行ったら 希望だって
嫌な思いするだろうし

百合だって ありがたくも
うれしくもないだろ。

だから 俺は 素直に引き下がった。

けど おかげで
あのあと うちは大騒ぎでさ~。

「どうして 私たちは
百合さんのお葬式に

出られないの?」って 道子が…。

あげくに 百合と俺は
昔 何かあったんだろうって…。

(初子)仁ちゃん…。
無理ないよな。

希望と俺は 兄弟同様に育ってきて
その女房が死んだんだ。

道子は
通夜の手伝いするつもりで

かっぽう着まで用意して
出てきたのに

母さんに
ピシッと断られたんだから。

母さんの言い方
何にも知らない者が聞いたって

俺が 百合の葬式にも
出られないような

ひどい仕打ちを
百合にしたって事は

分かるんだからね。 俺としちゃ
弁解のしよう ありゃしないよ。

お手上げだよ。
仁ちゃん。 あんた まさか

道子さんに 百合ちゃんの事…。
根掘り葉掘り 聞かれてみろよ。

いい加減
面倒くさくなっちまうよ。

そんな! そういう事は
しらを切り通すのが

道子さんへの愛情って
いうもんでしょ。

正直に言うバカが
どこにいるのよ!

知らなかったよ。
私の言った事が そんな…。

あの時
母さんも 気が立ってたんだね。

言わなくてもいい事
言っちゃって…。

今夜から
俺 また ここへ帰ってくる。

母さんと初ちゃんと一緒に暮らす。

あんなヒステリーの顔色 見て
暮らすよりは よっぽど ましだ。

おい 圭…。

うちへ来たのか。 いい子だね。

このうちも
また にぎやかになるね。 圭…。

パッカパッカ パッカパッカ! パカパカパカ!

パッカパッカ パッカパッカ! パカパカパカパカ!

(2人)ただいま!
お帰りなさい。

圭は もう すっかり
俺に慣れたよ。

おじちゃん 好きだろ? なあ 圭。
うん!

よかったわね 圭ちゃん。
また 行こうな。

出かけるの?

俺と道子の事なら 余計な
おせっかい 焼かないでくれよ。

道子に帰るつもりがないんなら
それで いいんだ。

こっちから
頭 下げる事ないんだからね。

ここは いいよ。
母さんも初ちゃんも優しいし…

圭がいるし! なっ 圭!
うん!

夫婦の問題だと言われても

おしんには やはり
ほっとく訳には いかなかった。

いつまで
母親の苦労が付いて回るのか…。

おしんには
気の重い役目であった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

百合の死をきっかけに

昔の仁と百合との関係が
道子に知れる事になり

道子は 子どもたちを連れて
実家へ帰ってしまった。

(道子)おはようございます。
(波江)はい おはよう!

(仙造)いつまで寝とるんだ。
疲れてるんですよ 道子は。

うちへ帰ってきた時ぐらい
好きなだけ

寝かせてやったら
いいじゃありませんか。

すぐ 朝御飯にする?
うん。 あかねたちは?

表へ 遊びに行ったわよ。
あら そう。

みどりは おばあちゃんと
仲良しだもんね。

もう どこへも行くんじゃないよ。

剛や あかねの学校
どうするんだ?

今日にでも
転校の手続きに行くそうですよ。

道子!
あっ うちはね 朝 和食だけど

パンの方がよかったら
パンの支度してあげるから。


ほっとけよ!
子どもじゃないんだから!

自分の食べる事ぐらい
自分でさせりゃいいだろ!

お前が そういうふうに
甘やかしてるから

こういう わがままなやつが
できちまうんだよ!

何が わがままですか!

道子は 仁さんに裏切られて
帰ってきたんですよ!

男にね 女の1人や2人いるのが
何が 裏切りだ!

しかも お前
結婚する前の話じゃないか!

私はね 今まで だまされてたのが
悔しいだけなの。

あんな事があったのに 口 拭って
私と一緒になったのかと思うと

あの人を信じてた自分が
情けなくて 腹が立つのよ。

たとえね 何人の女とできてようと
仁君は お前と結婚したんだ。

それでいいじゃないか!
男には 分からないんですよ!

母さんだって 父さんの女には
さんざん 泣かされてきたからね。

あんたの気持ちは よ~く…。
母さんは もう!

そりゃね
私は 黙って辛抱してきましたよ。

辛抱しなきゃならない
時代でしたからね。

でも 今は 違うんです!

このまま別れて どうするんだ?

(波江)道子と3人の孫くらい
うちで 面倒 見ますよ。

(仙造)冗談じゃないよ! うちには
ちゃんと 息子もいるんだから!

私たちがいたら 邪魔なの?
(波江)大丈夫よ!

あんたが帰ってきて
一緒に暮らしてくれたら

こんなにいい事は ないもの!

孫が3人もいて
老後も寂しくないわ!

お前は もう…。

父さんだって
道子が 一番かわいいんでしょ?

離婚して帰ってくれたら 願ったり
かなったりじゃありませんか。

お母さん コーヒー いれてくれる?
はいはい!

(玄関のチャイム)
あら?

全く もう…。

どちら様でしょう?

≪(おしん)田倉でございます。

少々 お待ち下さいまし。

田倉のお母さんよ! このまま
帰ってもらった方がいいだろ?

私 今 会うつもりはないわ。
ああ!

おい! ここへ お通しする。
片づけておきなさい。

(道子)嫌だ お父さん!
お父さんったら!

あんた 奥 行っといで。
あ~ 田倉に 文句があるんなら

こっちにだって言いたい事は
山ほどあるんだ!

どうせ別れるなら 母さん
黙っちゃいないからね! そうよ。

私の代わりに うんと言っといて!
うん!

さあさあ さあさあ。 さあ どうぞ。

さあさあ。

突然 お邪魔致しまして…。 いつも
御無沙汰ばかりしております。

いや どうも。
堅苦しい挨拶は 抜きにして

さあさあさあ どうぞ どうぞ!

また 今度
百合が亡くなりました折に

過分なお香典を頂戴致しまして
ありがとう存じました。

とんだ事でございましたね…。

いや~ 近頃 急に 車が増えまして
猫も杓子も 車 車で

ワワワッて もう…。
嫌な世の中になりましたです。

おかげさまで
葬儀も 無事に終わりまして

うちに帰ってまいりましたら
道子さんと孫たちが

こちらに ごやっかいになってると
聞きまして…。

本当に
ご迷惑をおかけ致しました。

じゃあ 道子が
こちらへ帰りました理由も

承知しておられるんですね?

はい。 若い者の話に

親が しゃしゃり出るのもどうかと
思いましたが

こちら様に
お世話になっておりますので

一応 ご挨拶に…。

どういう ご挨拶に見えたか
存じませんが

道子には 道子なりの理由があって
帰ってきたんです。

私どもも 道子の気持ちが
よく分かりましたので

道子が離婚したいと言うのなら
それも致し方ない…。

母さん!
そうでしょ!

好きな女がいたのに 知らん顔して
道子と一緒になるなんて…。

それも ただの関係じゃ
なかったそうじゃありませんか。

それは お母さんも
ご存じだったんでしょ?

それを おくびにも出さずに
仁さんと一緒にさせるなんて!

しかも 百合さんを
希望さんに 押しつけて…。

よくも まあ そんな理不尽な事が
おできになれますね!

常識ある母親なら
仁さんに 責任を取らせて

百合さんと結婚させるのが
本当なんじゃありませんか?

ごもっともでございます。

母親の私が至らなかったもんで
ございますから…。

そんな きれい事で
お茶を濁そうったって

そうはいきません。
お母さんの思惑も

仁さんの魂胆も
ちゃんと分かっております!

いい加減にせんか!
百合さんっていう人の実家は

親が娘を養っていけないような
家です。

結婚したって
何の得にもなりゃしません。

でも 道子は いざっていう時は
私どもで 力になってやれます。

仁さんは それが目当てで 道子に
乗り換えたんじゃありませんか?

お母さんも 同じ お気持ちで!

それぐらい
私には ちゃんと分かります!

(仙造)何を言っとるんだ
失礼な事を!
だって そうでしょ。

じゃなきゃ たとえ 使用人でも
仁さんが 手をつけた以上

百合さんと結婚させるのが
母親の責任ってもんでしょ!

それを
仁さんの言いなりになって…。

かわいそうなのは 道子ですよ!
何にも知らないで ただ ただ

仁さんを信じて 結婚して
利用されるだけ 利用されて…。

よさんか! 田倉のお母さんは
そんな お人じゃない!

今の本店を
セルフサービス方式になさる時に

私が 融資を申し出たが
見事に断られたんだ!

まるで 嫁の実家を当てにして
仁君と結婚させたような

言い方をするのは
失礼にも 程があるんだ!

(波江)でもね
うちで安く卸した子ども服で

田倉さんが
どれだけ もうけたか。

そんな事ぐらい
ちゃんと知ってますよ!

みんな 道子との結婚の時に
計算してたんじゃありませんか?

バカ者! うちの製品を
置いてくれと お願いしたのは

私だ! 私の方だよ!

おかげで デパートや一流店で
売れ残った品物が返品されても

それの整理をつく事が
できたんだ!

うちだって 多分の恩恵を
被っとるんだ! バカ者!

そうなんですよね! あなただって
お金もうけのために

仁さんと道子を
結婚させたんです!

因業な親たちを持って
浮かばれないのは 道子ですよ!

バカ者!
川部さん…。

お父さん やめて!

だから 母さん あんたたちの
結婚には 反対だったのよ!

母さん 最初から
仁さんを信じられなかったし

父さんだって 事業のためなら

娘の幸せなんか
どうでもいい人だし…。

あんた一人が つらい思い
するんじゃないかって

母さん ずっと 不安だったのよ!
もう分かった お母さん…。

道子。 お前も そう思っとるのか?

お前も そう思っとるんなら
仁君と別れるしかないな。

川部さん!

そんな気持ちじゃ

田倉のお母さんや仁君に対して
失礼だ!

父さんが帰す訳にいかん!
申し訳が立たんからな!

たのくらスーパーはな 誰の力も
借りずに 今まで やってきた。

田倉のお母さんや仁君の努力で
のし上がってきたんだ。

お前の力でもなければ
ましてや うちの力でもない!

お前が利用されたなんて
思っとるんなら

お前は 田倉に帰る資格なんか
ありゃせん!

さっさと 別れた方がいい!
ええ!

誰が 田倉へなんか
帰すもんですか!

あんた 奥 行っといで! ねっ!

道子さん 帰ってきてちょうだい!

今度の事は 私が謝ります。

私に免じて…。

お母さん… なにも お母さんが
頭 下げられる事は ないです!

こちらさんにも いろいろ
言い分がおありと思います。

私に言って
気が済むんでございましたら

もう どんな事でも
おっしゃって下さいまし!

私は ただ 道子さんさえ
うちに帰ってきて下されば

もう それだけで!

道子さん
今更 百合の事を弁解しても

どうなるもんでも ありません。

百合は もう
死んでしまった人間なんです。

なんとか 水に流して
もう一度 仁と出直すつもりで…。

このとおりです!

(波江)お母さんに
謝って頂いたって…。

仁さんが 頭を下げてくるのが
本当でしょ。

いいえ。 仁を あんな人間に
育ててしまったのは

母親の私です。 私の責任なんです。

でも 仁は 今は もう

3人の子どもの父親になりました。

道子さんと 力を合わせて

いい家庭を
作りたいと思っております。

どうぞ…
どうぞ その気持ちだけは

くんでやって下さいまし!
お願い致します!

このとおりでございます!

(あかね)おばあちゃん!
(剛)来てたの?

ねえ 早く帰ろうよ。
もう 学校 休むの 嫌だよ。

帰ろうね。 お父さん 待ってるよ!

道子…。

支度しなさい。

(波江)あなた!

もう いい。

(禎)圭ちゃん 引き取ったなんて
知らなかったわ。

結局 また 初ちゃんが
苦労する事になるのね。

(初子)とんでもない!
こうやって 面倒 見てると

結構 かわいいもんよ。 ちっとも
気苦労なんか ならないわ。

でも 母さんったら
初ちゃんばっかり 当てにして…。

いつになったら
初ちゃん お嫁に行けるんだか…。

そんなの とっくに諦めてるわよ。

今更 見ず知らずの人と
一緒になって

気苦労するのも ごめんだし…。
暮らしの心配もしないで

圭ちゃんのお守りができるなんて
結構な ご身分よ。

私 帰るわ。 待ってても
いつの事になるんだか…。

ごめんなさいね
お構いもしないで…。

いいの いいの。
圭ちゃんぐらいの時は

子どもも 一番
手が かかるんだから。 じゃあね。

(禎)母さん!
(初子)あっ お帰りなさい。

川部 行ったんだって?
どうだったの? 結果。

少しは 強く出た方がいいわよ!

あっちは 金持ちだと思って
大きな顔してるけど

うちだって もう 川部になんか
負けやしないんだから!

母さん。
どうかなさったんですか?

(圭)おばあちゃん。

(仁)母さん 道子の親父さんから
電話 あったよ。

川部に迎えに行ったんだって?
余計な事して! 兄さん!

「家内が 随分 失礼な事 言ったが
よく詫びといてくれ」って…。

何 言われたんだ?
川部の おふくろさんに。

仁…。
母さんね 子どもたちのために

道子さんを迎えに行ったんだよ。

どんな ひどい事 言われても

じっと 辛抱したのは
子どもたちのためなんだよ。

でもね… 何を言われても

母さん
ひと言も返す言葉がなかった。

誰が悪いんでもない。
仁を育てたのは 私なんだからね。

百合を捨てて 道子さんと一緒に
なるような人間にしたのも

母さんなんだから…。

どんな事 言われたって
しょうがないじゃないか。

母さん…。

ただね 仁 子どもたちを
片親だけにしちゃいけないよ。

母さん そのために
黙って 頭を下げた。

どんな事 言われても
辛抱してきた。

片親の寂しさを味わわすのは

圭だけで たくさんだよ…。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和42年の暮れ

百合の四十九日の法要を済ますと
間もなく

希望の工房の新築祝が
ささやかに行われる事になった。

(おしん)さあ 明日の朝は
5時起きして ふかさないと

とっても 間に合わないわ。
(初子)私が ちゃんと

やっときますから 母さんは
ゆっくり寝てらして下さい。

さあ お煮しめは出来たし
あとは 卵焼きだけね。

さあ 明日の朝までに 圭ちゃんの
チョッキ 編み上げなくっちゃ!

そんな無理しなくったって
ほかに まだ あるじゃないの。

私が編んだものを着せて
連れていきたいんですよ。

そりゃ 希望も喜ぶだろうけどね。

圭ちゃんも やっと懐いてくれて
ほっとしました。

子どもって正直だからね

一番 かわいがってくれる人
よく分かってんのよ。

お弟子さんも来てくれたし
新築祝が済んで 落ち着いたら

希望ちゃんも
仕事 始められるでしょ。

圭ちゃんの事 引き取りたいって
言うかもしれませんね。

そうだね。 希望も 一日も早く
圭と一緒に暮らしたいだろうし。

でも 圭ちゃんが いなくなったら
きっと 寂しくなるでしょうね…。

(初子)道子さん…。

あら どうしたの?
道子さん こんな時間に。

(道子)すみません 夜分 突然…。
こちらに

仁さんが お邪魔してるんじゃ
ないかと思って…。

まだ 帰ってないの? 仁。

はい。 実は 昨夜も…。

このごろ あの人
時々 外泊するんです。

外泊って どこへ泊まるの?

お母さん…。

あの人 いるんですよ
やっぱり 女が! そんな…。

だって そうとでも
思うよりほかに…。

まあ とにかく お上がんなさい。
ねっ。 さあ。

だって 仁ちゃん 今日も
ちゃんと 事務所に来てましたよ。

外に泊まったなんて様子
全然 なかったけど…。

そうですか…。

私 今まで 何度も お母さんに
お話ししようと思ったんです。


でも 余計なご心配 おかけしちゃ
いけないと思って…。

知らなかったわ そんな事に
なってるなんて ちっとも…。

私たち
もう 駄目なのかもしれません。

私が里へ帰った時

お母さん 私たちの事を心配して
川部まで来て下さいましたわ。

私 あの時 お母さんのお気持ちが
とても よく分かりましたし

私 とっても ありがたいと
思ったもんですから

田倉へ帰ってきたんです。

子どもたちのためだったら

私 どんな事だって
辛抱するつもりでいました…。

道子さん
仁には 私から よく話します。

だから 今夜のところは
帰ってちょうだい。

子どもたちだけで
留守番してるんじゃ

また 何があっても いけないから。
私 送っていくわ。

母さん 私が送ります。
そう。 じゃあ お願いね。

道子さん つらいだろうけど
あなたが そんな暗い顔してたら

子どもたちだって
どんなに不安になるか…。

私もね 若い頃
いろんな事情があって

父さんと 何年か
別々に暮らしたの。

その時 子どもたちの前で
泣き顔だけは見せまい

父親の悪口や愚痴だけは
言うまいって 努めたわ。

今のあなたに こんな事 言うのは
ひどいかもしれないけど

子どもを持った母親の
それが務めなのよ。

無理は承知で言ってるのよ。

でもね 母親が 父親とケンカをしたり
なじったりするの

子ども 見てると
子どもは 傷つくだけなのよ。

父親を尊敬しなくなるし

そんな母親に
絶望してしまうかもしれないわ。

そんな事になったら
どんな子どもになってしまうか。

仁には
私から 厳しく言っときます。

だから ここは 辛抱して
子どもたちのために…。

ねっ 道子さん。 お願いします。

(道子)私 帰ります。

気を付けて 送ってあげて。
はい。

大丈夫です 一人で帰れますから。
道子さん…。

ホントに 大丈夫です
車で来てますから。

どうも お騒がせしました。
よく考えてみます。

気を付けて…。

難しいもんなんですね
夫婦って…。

でも 仁ちゃん どうして…。
今日も帰ってこないなんて

一体 どこで 何してんだろうね
あのバカ者…。

母さん もう お休みになった方が
いいですよ。

明日 朝早いですから。

初ちゃんこそ…。
圭のチョッキなんか いいから。

あ~ よく眠ってる。
2階 連れてってやらないとね。

はい。

圭ちゃんとも もう
お別れになるかもしれませんね。

仁ちゃん…。
(仁)びっくりさせて ごめんね。

今夜 泊めてもらうよ。 ここなら
鍵あるけど うちへは入れないの。

あんた うちの鍵 持ってないの?
いや 持ってるさ。

けど 内側から ドアチェーンってやつが
掛かってて 外から外せないの。

だったら 道子さんに
開けてもらえばいいじゃないの。

さっさと お帰り。
ごめんだね。

ガミガミ どなられちゃ たまんないよ。
さんざん 仕事で

神経 すり減らして
家へ帰ってまで

神経 逆なでするような文句
言われてみろよ。

いくら タフな俺だって
参っちまうよ。

文句 言われるような事を
してるんだから

どなられたって
しょうがないだろ。

あんた 女ができたんだってね。

そんな 道子さんを
裏切るような事をして…。

道子さんだけじゃない。
子どもたちだって裏切ってんだよ。

あんたには
父親っていう自覚があるのかい?

俺はね 子どもたちにも道子にも
何一つ不自由させた覚えはないよ。

母さん 道子の車 見たか?

亭主の俺より ず~っと高いやつ
乗り回してるんだぞ。

一体 誰のおかげだと思ってんだ。
俺に文句言えた義理か。 仁!

それに 何かあると
嫌みばっかりだ…。

いつまで 百合の事を
根に持ってるつもりなんだ…。

ふた言目には 裏切られたの

女房の実家の財産目当てに
結婚したのって言われてみろよ。

いい加減 うんざりするよ。

たまには 優しい女が
恋しくなるってもんでしょ。

もう 飲まさなくていいよ。

いいじゃありませんか。
仁ちゃん 参ってるんですよ 今。

ありがとう 初ちゃん。
初ちゃん 優しいね。 ありがとう。

初ちゃんも優しいけど

百合も 初ちゃんに よく似た
いい娘だった…。

仁ちゃん!

今更 後悔したって
始まんないけどさ

道子って女は いつまでたったって
実家を 鼻にかけやがって!

「身から出た錆」じゃないか。

一緒になりたいって言ったのは
お前だろ?

分かってますよ。
だから 後悔したって

離婚もしないで じ~っと
耐えてるんじゃありませんか。

子どもも できちまったし
何たって 父親なんだから。

それが分かってんだったら

どうして 家庭を壊すような事
するんだよ!

俺は 家庭は
ちゃんと守ってますよ。

子どもたちには
好きなもの 買ってやってるし

道子だって どんな
ぜいたくしたって 俺は黙ってる。

俺だって 少しぐらい 勝手な事
したって いいでしょ。 仁!

道子さんが
どんなに苦しんでるか…。

そんな父親と母親を見てる
子どもたちが

一体 どんな思いしてるか…。
母さんの干渉 受けないね!

これは
我々 夫婦 親子の問題なんだ。

俺は 俺の力で たのくらを
ここまでにしたんだ。

もう 母さんに とやかく
言われる事ないんだからね。

母さん
酔ってるんですよ 仁ちゃんは…。

母さん 今に 4号店 出すよ!

今の たのくらなら
銀行だって 向こうから

「借りて下さい」って言って
頼みに来るんだ。

こんなチャンス逃すバカ
いやしないよ。

今に この地方に 大たのくらチェーン
作ってみせるからね 母さん。

俺 母さんと初ちゃんのそばが
どこより落ち着くんだ。

気分が休まるんだ。

百合 かわいそうな事をした…。
俺が 百合と結婚してたら

きっと もっと優しい家庭が
持てたよね 母さん。

そしたら 百合だって

こんなに早く 死ななくて
済んだかもしれない。

いい娘だったのに…。

ホントに いい娘だったのに…。

バカだね この子は…。

金さえあればって気持ちで
走り続けてきて

今頃になって
そのために失ったものが

どんなに大きいもんか
気が付くなんて…。

女と遊んだって
一時の慰めでしかないのに…。

むなしいんだよ きっと…。

でなきゃ こんなとこへ
帰ってくる道理がないよ。

でも もう 昔には帰れやしない。

この子は このまま がむしゃらに
走り続けるんだろう。

私の言う事なんか
聞きゃしないんだから…。

いつか 自分で つまずいて

自分で 痛い思いしなきゃ

何にも分かりゃしないんだから…。

(希望)やあ いらっしゃい。

圭ちゃん お父さんよ。
圭…。

どうしたの? 圭ちゃん
お父さんじゃない。 ほら。

こりゃ 忘れられちまったのかな?
ほら 父さんだぞ。

やっと帰ってきたな 坊主!
父さん 寂しかったぞ!

(圭)痛いよ ひげ!

いいチョッキ 着てるな。
初ちゃんが編んだのよ。

今日 着せたいって
昨夜 徹夜して 仕上げたの。

ありがとう 初ちゃん。
大変だったろ?

でも もう 大丈夫だ。

なんとか 圭の面倒 見ながら
仕事したいと思ってる。

そう。
希望が そのつもりだったら…。

(希望)そうそう
お世話になる訳にもいかないし

あんまり ほっとくと

さっきみたいに
忘れられちまうからな。

(ふみ)あらあら
まあ おはようございます。

いつも 希望が お世話に
なっております。 いいえ。

うちも忙しいもんですからね
気には なっていても

なかなか思うように…。
本日は おめでとうございます。

ありがとうございます。
先生のおかげで やっと ここまで。

いいえ。 圭ちゃん いいわね
お父さんの所へ帰ってきて。

お母さん 圭ちゃんね

希望さんが 手元に置いときたい
つもりらしいですけど

圭ちゃんが そばにいたら
仕事にならないんじゃないって

心配してるんですよ。
大丈夫ですよ。 なんとかなります。

あんたは 大丈夫でも
圭ちゃんが かわいそうよ。

やっぱり うちには 女手がないと。

ねえ お母さん。
ええ…。

希望さんだって まだ若いんだから
一生 独身を通すって訳にもね。

私も いずれはと…。
ほら ご覧なさい。

ねっ この間 私が話してた人と
一度 会ってみなさいよ。

初婚だけど 優しい人だから

圭ちゃんだって
かわいがってくれるわよ。

子どもは大好きだって言ってるし。
奥さん…。

私は またとないお話だと
思ってるんですよ。

お母さんにも
一度 会って頂いて…。

♬~

♬~
(テーマ音楽)

♬~

希望の工房の新築祝は
つつがなく 終わった。

師匠の栄造夫婦や客たちが
帰ってからも

希望の新居には
意外な客が残っていた。

浩太である。

(浩太)ああ…。
(希望)どうも 失礼を致しました。

(おしん)本当に
びっくり致しました。

まさか 浩太さんが
いらして下さるなんて…。

私も そんなつもりで 案内状を
差し上げた訳じゃなかったんです。

かえって
ご迷惑をおかけ致しました。

過分なお祝いまで
頂戴してしまって…。

本当に ありがとうございました。
いえいえ…。

私も 是非 一度 希望さんの仕事場
見たかったもんですから。

お加代様も どんなに
お喜びになってるでしょう。

こんなに立派になられた希望さん
是非 お見せしたかった…。

あ~ おしんさんが 希望さんを
伊勢へ引き取ってから

私が 加代さんの墓参りに
行った事がありましてね。

その時です。
初めて 希望さんに会ったのは…。

(初子)心祝いに うちから
持ってまいりましたので…。

ほう。 おしんさん手作りの

赤飯と煮物ですか。

珍しくもありませんけど…。
いや~ 懐かしいですね。

おしんさん 昔 酒田で
飯屋 やってましたよね。

あの時 おしんさんの煮物
食べるのが 楽しみでした。

あの時は お加代様にも
随分 お世話になりました。

私も 雄を抱えて
つらい思いもしましたけど

今から思いますと お加代様も私も
華だったのかもしれません。

そんな事も あったんですか。
3人とも若かったですからね。

あのころは 1円のお金を
もうけるのにも 一生懸命で…。

それが 今では 店を3軒も持つ
実業家になって…。

おしんさん やっぱり 立派ですよ。

いいえ。 浩太さんに
助けて頂いたおかげで…。

でも 今になりますと
後悔する事も多くて…。

どうぞ 召し上がって下さいませ。

あ~ 希望さん さっきから
気になってるんですけどね

あの つぼ… あれは いいですね。

もし よかったら
私に分けて頂けませんか?

申し訳ありません。
これは どなたにも…。

実は 亡くなった家内の骨つぼにと
思って 焼いた物なんです。

希望…。

近いうちに
伊勢にある八代の墓から

祖父と祖母と母のお骨を
分骨して

酒田の加賀屋の墓へ
納めるつもりでいるんです。

その時 百合のお骨も
やはり 分骨して

一緒に納めてやろうと
思っているんです。

百合だって 八代の人間に
なったんですから。 そう…。

その時 この つぼに
入れてやろうと思って…。

それは 何よりの供養だ。

私には せめて
そのくらいの事しか…。

生きてる間に 何一つ
してやれませんでしたから…。

(浩太)愛してるんですね。

幸せな お人だ
希望さんの奥さんは。

あ~ どうも
長々と お邪魔しまして…。

いや しかし 希望さんと
加代さんの話ができるなんて

考えてもいませんでした。
感無量です。

これをご縁に 希望の事
よろしく お願い致します。

私にできる事がありましたら
遠慮なく おっしゃって下さい。

それから また
すてきな作品を見せて下さい。

ありがとうございます。
じゃあ…。

ありがとうございました。
お気を付けになって…。

じゃあ 私たちも…。
また来るからね。

じゃあ 圭ちゃんの事…。

圭。

(圭)バイバイ。

圭ちゃん。 圭ちゃんは
今日から 父さんの所。

僕 おうちへ帰るの!
圭ちゃんのおうちは ここでしょ?

僕のおうちは
初子おばちゃんのとこ!

圭 おいで。
父さんと お風呂 入ろう。 なっ。

(圭)初子おばちゃんと
お風呂 入る!

圭! 言う事 聞かないと
父さん 怖いぞ!

圭ちゃん
圭ちゃんは 父さんの所!

嫌だ! 初子おばちゃんと
おうちへ帰る! 嫌だよ~!

圭!

おばあちゃん!
おばあちゃんと おうちへ帰る!

今日は 連れて帰ろう。

母さん こんな事してたら
いつまで たったって…。

長引けば それだけ…。

また 日を改めて…。
私が なんとかするから。

ごめんなさい 希望ちゃん…。

初ちゃん…。


♬~

これは?

オシドリ
オシドリ

オシドリ

やっと 寝ました。

今日は いろんな事があって
神経が立ってたんでしょうね。

なかなか
寝つかれないらしくて…。

あんたも疲れたでしょ。
早く お休み。

母さん
私 あんまり 圭ちゃんの事

かわいがっちゃ
いけなかったんですね。

希望ちゃんに
悪い事しちゃったわ…。

希望ちゃん
とっても 寂しそうだった…。

今日は しかたがないけど

なるべく早く 圭ちゃんの事
連れて帰ってあげて下さい。

泣いても わめいても
いっときの事だわ。

すぐ また向こうの暮らしに
慣れるでしょうから。

希望ちゃんだって
仕事を抱えながら

男手一つで 圭ちゃんの事
育てるとなったら 圭ちゃんに

新しいお母さん 迎えるつもりにも
なるでしょうから…。

母さん 先生の奥様が

お世話して下さるって
おっしゃってましたね。

希望ちゃんの仕事に
理解があって

子どもが好きな人だったら
言う事ないじゃないですか。

母さん。

そうだね。 そうそう
ほっとく訳にもいかない。

まあ 年が明けたら
希望も 新しい気持ちになるだろ。

一度 相談に行ってみるよ。

それから すぐ
スーパー たのくらにとっては

書き入れ時の
歳末大売り出しが始まった。

おしんも禎も駆り出され

初子も 圭の面倒を見ながら
店を手伝って

晦日を迎え 年を越した。

…が とうとう 道子は 一度も
店へは 姿を見せなかった。

(仁)今年も 無事に終わった!
みんな 御苦労さん!

(一同)お疲れさまでした!

(禎)久しぶりに 店へ出たけど
あんなに 活気があると

疲れも 吹っ飛んじゃうわね!
働くのも 悪くないわ!

あんた 子どもが待ってんでしょ。
早く 帰んなさい。

はいはい! じゃあ 明けまして
おめでとうございます。

今年も
どうぞ よろしくお願いします。

今日は一日 寝正月だから
お年始には来ませんから。

あ~ ゆっくり 休みなさい。
はい。

けど 道子さん とうとう
お手伝いに来なかったわね。

お兄ちゃんは
道子さんに甘いんだから!

いいじゃないの。 道子さんはね
商売に向かないんだから。

嫌いな人に手伝ってもらったって
しょうがないじゃないか。

けどね…。
あんたが口出しする事じゃないの。

ほら 辰則さん
くたびれてるじゃない。

グズグズしないで!
禎ちゃん これ

おせち 詰めときましたから。
あ~ ありがとう!

これ 仁ちゃん。 道子さん
いらっしゃらなかったから

持って帰ってあげて。
ありがとう。

じゃあ 行きましょ。
(辰則)ああ。 それじゃ

新年のご挨拶は また改めまして。
御苦労さまでした。

お兄ちゃんは?
俺は もう少し飲んでいくよ。

そう。 たまには 母さんの
話し相手になってあげて。

親不孝の埋め合わせもしなきゃね。
それじゃ おやすみなさい!

お疲れさま!
おやすみ。

仁。 あんた 道子さん いないの?
うん。

子どもたちが 冬休みになって
すぐ 温泉スキーに行ったよ。

じゃあ
ずっと 一人だったんじゃない。

どうして そんな事 黙ってんのよ。

いいじゃないか。
いない方が 清々するよ。

家は 寝に帰るだけだし。
仁…。

あんた 道子さんと
やっぱり うまくいってないの?

あ~ 正月には 希望も来るんだろ。
久しぶりで 2人で飲もうかな。

仁…。
母さん。 俺には 商売があるんだ。

それでいいんだよ 男は。

どうして こんな夫婦に
なってしまったのか…。

母親として
力になってやる事もできず

おしんは 暗い気持ちで
見守っているよりほかなかった。

そして おしんには もう一つ
心を痛めている事があった。

希望と圭の将来についてである。

もう帰ってくると思うのよ。

圭に 海を見せてやりたいからって
ドライブに連れてったの。

初ちゃんは?
初ちゃんも ドライブ。

いくらね
仁が かわいがったって

圭は もう 初ちゃんがいなきゃ
夜も日も明けないんだから。

いつまでも こんなふうじゃ…。

初ちゃんにだって
迷惑かけるだけだし…。

やっぱり
思い切って 連れて帰りますよ。

そのつもりで来たんです。 今度は
母さんも止めないで下さい。

私だって 圭ぐらい育てられます。

希望。 初ちゃんが帰ってくる前に
話しときたいんだけど…。

あんた 初ちゃんと
一緒になるつもりない?

初ちゃんだったら
気心も分かってるし

圭にとっても 一番いいと思うの。

あんなに
圭を かわいがってくれてるし

初ちゃんだったら
安心して 家庭も任せられるし

お前だって
仕事に打ち込めるだろ。

その事 初ちゃんには?

まず あんたの気持ちを
確かめてからと思って…。

初ちゃんには もちろん
異存はないと思うけど…。

母さんだって
そのくらい 分かるわよ。

何十年も
一緒に暮らしてきたんだもの。

分かりました。
初ちゃんには 私から話します。

希望…。

ご心配かけて 申し訳ありません。

希望の気持ちが
おしんには測りかねた。

…が それが
希望にも 初子にも 圭にも

一番 幸せな事だと信じての
おしんの配慮であった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

(仁)♬「波を ちゃぷちゃぷ
ちゃぷちゃぷ かきわけて」

♬「ちゃぷ ちゃぷ

♬「雲を すいすい すいすい
追い抜いて」

♬「すい すい」

≪(仁)♬「ひょうたん島は」
(おしん)あっ 帰ってきた!

ねっ 母さんの事 心配ないからね。
まだまだ

一人でだって暮らせるから。
それより 初ちゃんの事…。

いろんな事があって あの年まで
ずっと 独りで来たけど

あんたと初ちゃんが
一緒になってくれたら

母さん もう 思い残す事ない。

初ちゃんだって 随分
つらい思いをしてきてるけど

これで やっと うちにいたかいが
あったってもんだからね。

(仁)ただいま 帰りました!
あ~ お帰り!

(初子)ただいま!
お~!

あら 希望ちゃん 来てたの?
圭ちゃん お父さんよ。

(希望)喪中だから 新年の挨拶は
遠慮させてもらうけど

去年は いろいろ
迷惑かけてしまって…。

今年は しっかり 仕事を
するつもりだ。 よろしく頼むよ。

まっ 気を落とさずに。 こんな
いい坊主が いるんじゃないか。

しかも
お前には 立派な仕事があるんだ。

男は仕事だよ。 仕事が命なんだ。
ごめんなさいね。 希望ちゃんが

こんなに早く来ると思わないから
のんびりしちゃって…。

おい。 圭は 車が好きだな。
キャッキャ はしゃぐもんだから

あっちこっち 回っちまったよ。
(希望)よかったな。

圭ちゃん おなか すいたでしょ。
おせち 食べなさい。

お父さんとこ 行って。
ほら お父さんだぞ。 よし。

何がいいんだ?
カマボコか? お芋か?

(圭)卵焼き。
そうか。 卵焼きか。

ほら 卵焼きだぞ。

もう ちゃんと 一人で食べるわよ。

そうか。 そばにいないと駄目だな。
何にも分かりゃしない。

男親なんて そんなもんさ。
仕事に かまけてりゃ

子どもが どれだけ成長したか
てんで 分かりゃしない。

それでいいんだよ。
そんな事は 女親の役目だ。

(仁)百合は いい娘だった。
あんな いい女は いない。

心が残るの 当たり前だ。 しかし
もう 帰ってこないんだよ。

早いとこ諦めて 後をもらえよ。
仁ちゃん なにも 今 そんな事!

今 言わなきゃ こいつは
圭と一緒に暮らせないんだよ。

男親一人のとこへなんか
圭は 帰せやしないよ。

お前だって 圭だって
駄目になってしまう。

俺は 圭も希望も大事だよ。

お前が 独りのうちは
圭は 田倉で預かるからな。

仁。 希望だって
そのくらい 考えてるよ。

母さんだってね
後添いの心当たりがあるから

さっき 希望に話してたんだよ。

そうか…。 だったら もう
俺の出る幕じゃないんだな。

母さんのする事は 間違いないよ。
黙って 言う事 聞いた方がいいぞ。

今夜 泊まってくんだろ? うん。
ゆっくり飲もうよ。 初ちゃん。

はい お酒なら 今!

(仁)さあ 今日は 徹底的に飲むぞ。
仁!

(仁)ゆっくりできるのは
正月3日だけじゃないか。

母さんも 一緒に飲もうよ。

はい。
さあ 今夜は 徹夜で語り明かすぞ。

正月が明けたら
また 忙しくなるんだ。

母さん いよいよ 4号店
手 つけますからね。

今度の店は
マーケットって感じを無くして

イクラスの雰囲気を出すんだ。

もはや 実用本位の時代は去って
お客は 豪華なものに

集まるようになってきてるんだ。
まっ 見てて下さいよ。

希望 お前の作品のコーナー
出す事 考えてるんだ。

いい物 焼いてくれ。
もう ジャンジャン 売ってやるよ。

まっ そっちの方は 俺に
任せといてくれよ。 なっ 希望。

ほら しっかりしろ。
♬「波をちゃぷちゃぷ かきわけて」

だらしないわね。 一人で さんざん
威勢のいい事 言っといて。

ほらほらほら。 はいはい。

仁は
根っからの商売人なんですね。

考える事は 大きいし
商売の勘は すごいし

やっぱり
父さんと母さんの血が…。

ただ 仁のやつ ちょっと変ですね。

仁は 昔から つらい時

わざと強がって
はしゃいで見せてた。

何でもなきゃいいけど…。

さあ あんたも もう
寝なさい。 ねっ。
はい。

希望ちゃん。 圭ちゃん いつも
私と一緒に寝るんだけど

今日は 希望ちゃんと。
ただね 夜中に 一遍

おしっこに起きるの。 お願いね。
うん。

やっぱり このうち 狭いね。

誰か泊まると 私たち ここへ
寝なきゃならないんだから…。

ぜいたく言っていられませんよ
終戦後の事 考えたら。

そうだね。 あのころは
折り重なるようにして…。

それに初ちゃんだって いつまでも
ここにいるって訳じゃないしね。

≪(いびき)

あっ 大変! 仁だね。 嫌だね。
希望ちゃんもですよ ほら。

だって 2人とも
あんなに飲むんだもの。

久しぶりに
母さんの所へ帰ってきて

仁ちゃんも希望ちゃんも
安心したんでしょ。

初ちゃん。 今日ね 希望 あんたに
話す暇 なかったらしいけど

もしかしたら 明日…。

いえね 初ちゃんに来てほしいって
言うかもしれない。

そしたら 黙って受けてほしいの。

母さん…。

母さんね あんたと希望が
一緒になってくれたら

もう 何にも言う事ない。

圭の母親に
なってやってちょうだい。

希望ちゃんが そんな事…

そんな事 言ったんですか?

信じられないわ…。

希望はね
自分で あんたに話すって。

あんたが断るはずないと
思ったけど…

でも 一応 私の気持ちを
聞いといてもらおうと思って。

2人で よく話し合って。 ねっ。

おばちゃんが いないもん。
(初子)圭ちゃん。

あら お漏らししちゃったの?

まあ かわいそう。
冷たかったでしょ。

すぐ 取り替えてあげるからね。
圭が起きたのに

お父さん 知らん顔して
寝てるんだろ。 これだもんね。

男親で育てられるはずが
ないじゃないか。 かわいそうに。

しかたありませんよ。 今日は
珍しく お酒 飲んでたんだから。

いつも 酔っ払ってるって訳じゃ
ないでしょ。 はい。

初ちゃんが
そばにいてやってくれたら

ホントに 安心なんだけどね。

ホントに もう 男親って
当てになんないんだから!

すいません。 飲み過ぎました。

あれがね おねしょぐらいで
済んだから いいけど

ケガでもしてたら 取り返しが
つきゃしない。 そりゃまあね

百合の一周忌も済まないうちにと
思うかもしれないけど…

でも 圭の事 考えたら
一日でも早い方が…。

百合ちゃんだって
きっと分かってくれるわよ。

後添い もらうのは
あんたと圭のためなんだもの。

大丈夫よ。 初ちゃんには 私から
ちゃんと話してあるから。 ねっ。

いや~
正月早々 迷惑かけてしまったね。

まだ 4つなのよ。
たまには あるわよ こういう事。

父親なんて 情けないもんだ。
一緒に暮らしてるとね

こういう事に
すぐ慣れちゃうもんなの。

心配ないわよ。 初ちゃん…。
気にしなさんな。

母さんから聞いたのか?
初ちゃん。

その事で 初ちゃんに
話しておきたいんだ。

私は 初ちゃんが好きだ。
初ちゃんとは 9つの時から

きょうだい同様にして育ってきた。

いつも 初ちゃんには
かばってもらったし

私も 初ちゃんを頼りにしてきた。

しかし それは あくまで
きょうだいとしての気持ちで

一度だって 結婚の相手として
考えた事なんてなかった。

今だって その気持ちは
変わりゃしない。

圭の面倒を
見てもらったんだって

誰よりも信頼できる姉さんだし
甘えられる姉さんだったからだ。

その事だったら
母さんから 昨夜…。

びっくりしたわ。
私だって 希望ちゃんの事

弟だとしか思ってなかったもの。
初ちゃん…。

母さんも 年 取ったのかしらね。

そんな事
分からない人じゃなかったのに。

母さんには 母さんの願いが
あって…。

私には よく分かる。
ありがたいと思ってる。

しかし 私は
誰と再婚するつもりもないんだ。

私には 百合しかいない。

人は くだらん感傷だと
笑うだろうが

私には 生涯に
たった一人の女だったんだよ。

私にも分かってた。 希望ちゃんは
百合ちゃんが亡くなった時に

百合ちゃんを
新しいうちへ連れて帰って

うちの中を見せてたわ。
あの時の希望ちゃんを見て

希望ちゃんにとって 百合ちゃんが
どんなに大切な人だったか…。

きっと 希望ちゃんは

二度と ほかの女の人は
愛せないだろうなって思ったわ。

それから
希望ちゃんは 百合ちゃんに

あんな立派な骨つぼを
焼いてあげた。

あの時も そう思ったわ。

もしも… もしもよ
希望ちゃんが

圭ちゃんのためにだとか
母さんに言われたからって

私の事を 圭ちゃんの母さんにって
言ってくれたとしても

私 断ったわ。

だって
あんな希望ちゃんを見てて…

百合ちゃんへの思いが
あんな 深いのを知ってて

私 希望ちゃんのところに
行かれる訳ないじゃない。

すまない 初ちゃん…。

何が すまないのよ!
いいのよ それで!

私は そういう希望ちゃんが好き。
大好きよ。

私の口から こんな事 言うのは
つらかった。

母さんに返事さえすれば
済む事なんだ。

でも 私は 私自身で 私の真意を
初ちゃんに話したかったんだ。

初ちゃんに 私の気持ちを
伝えておきたかったんだよ。

ありがとう 希望ちゃん。

私も よかった。
希望ちゃんと ゆっくり話せて…。

ただ 僕は
自信が無くなってしまった。

やっぱり 父親だけで
圭を育てるのは 無理だ。

何 言ってるの。
希望ちゃんらしくもない。

希望ちゃんは
圭ちゃんの父親なのよ。

自信を持ちなさい。
初ちゃん…。

私が預かってるとね どうしても
過保護になっちゃうわ。

父親には 父親の育て方って
あると思う。

大丈夫。 圭ちゃんだって

愛情を持って 育てれば
きっと懐いてくれるわよ。

あ~ すごい!

ほらほら 圭 膨らんだね。
すご~い!

はい 焼けた。

すいません 母さん。 私 やります。
仁ちゃんは?

どうせ二日酔いだから
起きるの 待ってたら

何時になるか 分からないもの。
お餅 焼けたから 食べちゃおう。

はい。 希望ちゃんね
今日 帰るんですって。

もう 仕事しないと…。

2月に入ったら 窯に
火 入れる事になってるんです。

のんびりしちゃいられません。
圭ちゃんも一緒に。

初ちゃん…。
希望ちゃんね

男手一つでも やっぱり
手元に置きたいんですって。

私も その方がいいと思うんです。

希望 あんた…。

希望ちゃんの子どもなんですよ。
希望ちゃんの やりたいように。

母さん 私たちには
何にも言う資格ないんですよ。

母さん 申し訳ありません…。

おしんは 全てを察していた。

なぜか 明るく振る舞っている
初子が ふびんでならなかった。

初子のためにもと思って
した事が

かえって 初子を傷つけて
しまったのではないかと

激しい後悔とともに
胸が痛んでならなかった。

♬~
(テーマ音楽)

♬~

昭和43年の正月 新春の挨拶に
田倉へ帰ってきた希望は

おしんと初子が預かっていた圭を
連れて帰る事になった。

(おしん)さあさあ
これも入れてやって…。

(仁)俺は 反対だな。
圭は 一番 今 危ない時だよ。

じっとしてないんだから。 しかも
お前 神経を集中しなきゃ

できない仕事してるんだ。 一体
どうやって 圭のお守りするんだ?

(希望)なんとか 考えますよ。

甘っちょろい感傷は よせよ。
圭と一緒に暮らしたいなら

早いとこ
もらうものは もらって

圭の面倒を任せられるように
なってからにするんだよ。

仁。 人の事を言う前に
自分の事を考える方が先だろ。

(初子)圭ちゃん よく寝てるわ。

今のうち そ~っと連れ出したら
大丈夫よ。

希望ちゃん 圭ちゃん 抱いてね。
私 荷物 持って 駅まで行くから。

俺 車で送ってくよ。
よしてよ 二日酔いのくせに!

風呂へ入ったら すっかり抜けたよ
アルコールは。 車 表へ出しとくから。

よかったね!

仁にも あんな優しい気持ちが
あるんだね。

血は つながってないけど

本当の兄弟みたいに思ってんだよ
あの子。

じゃあ。

♬~

大丈夫?
よいしょ。 うん。

困ったら
いつでも連れてくるんだよ。

無理しないでね。

♬~

≪♬~(祭り囃子)

圭ちゃんがいなくなったら また
お店に出られるようになりますね。

久々に
おなじみさんの顔が見られるわ。

お客様がね
「魚売り場にいた娘さんは

お嫁に行ったんですか?」って
聞いたんですって。

私の事 いくつだと
思ってんのかしら? ハハハ!

初ちゃん。
はい?

やっぱり
希望の方から 断ったんだね。

母さんも どうかしてたよ。

初ちゃんを
すっかり 傷つけてしまって…。

許しておくれ。
母さん。

私だって
断るつもりでいましたよ。

希望ちゃんが
あんなに 百合ちゃんの事

大事に思ってるのに どうして
お嫁になんか行けます?

そうだよね。

母さんだって 希望の気持ちは
よく分かってたはずなのに

それでも 圭と希望のためには
それが 一番いい事だと思って…。

希望だって これから先の事
考えたら 母さんの言う事を

聞いてくれるんじゃないかと
思って。

それにね もし そうなったら

初ちゃんにも やっと 幸せに
なってもらえると思ったから…。

母さん 私は 今だって幸せですよ。
変な事 言わないで下さい。

でもね これからも ず~っと
独りでいくようになると…。

希望とだったら
あったかい家庭も作れるし

圭だって あんなに懐いてたし…。

母さん 私が お嫁に行けないの
心配して下さってるんですか?

雄や川村さんの事で
あんな事になってしまって

とうとう いつの間にか 40まで

うちで
重宝に こき使ってしまって…。

母さんね 初ちゃんには もう
本当に申し訳ないと思ってんの。

だから せめて
今からでも 人並みに…。

よして下さいよ 母さん。
私は 田倉に奉公に来て

今まで 娘と同じように 母さんに
かわいがってもらって

不幸せなんて
一遍も思った事ないわ。

母さんと一緒だったら

働く事だって
ちっとも 苦にならなかったし。

ホント 言うとね 母さん…

私 今でも 雄さんの事
好きなのかもしれない。

だから 結婚したいと
思わないのかもしれないわ。

母さんのそばにいれたら
それで…。

初ちゃん…。

希望ちゃんだって
きっと同じだわ。

希望ちゃんに
百合ちゃんの思い出がある限り

あの人 独りでいると思う。

思い出があれば 独りでだって
生きていけるんです。

それに 希望ちゃんには
圭ちゃんだって いるんだもん。

私 希望ちゃんとは
きょうだいでいい。

希望ちゃんは 頼りになる弟よ。

きっと 一生 助け合って
生きていけると思うわ。

そうだね。 希望は 仁なんかよりも
ずっと頼りになる。

たとえ 初ちゃんが
独りぼっちになって困ってても

希望だったら ほっときゃしない。
母さん それは 安心してるよ。

あっ 圭ちゃん お利口だな。

先生 手が空いたら 圭ちゃん
遊びに連れていきます。 いいよ。

でも かわいそうですよ
一日中 一人で…。

私の顔さえ見てれば
安心してるんだ。

こんな子どもでも 父親が一生懸命
働いてるってのは分かるんだよ。

(圭)出来たよ!
お待ち遠さま!

うん。 よいしょ。 はい 圭ちゃん
それ 貸して。

母さん!
おばあちゃん!

どうしてるかと思ってさ。

そりゃ 手紙で 様子は
知らせてきてくれたけど

自分の目で確かめるまでは
信じられなくて…。

でも 驚いた! お父さんと一緒に
お掃除してるなんて。

母さん ひとつきたって
やっと 私は 私なりに

圭を育てていく自信がつきました。

でも
圭が男の子で よかったですよ!

子どもは
親の姿を見て 育つからね。

もう 何でもしようと 努力するし
手伝おうとも努めてます。

父親が忙しいって事が

子ども心にも
しみ込んでるんですね。

母さん もう 何にも言わない。

お前の思うとおりに
育てたらいい。

その年 希望は 初めて
自分のかまどに 火を入れ

その作品は 高い評価を受けて

希望は 窯元として
着実な第一歩を踏み出した。

同じ年に たのくらの 4号店
5号店が 相次いで オープンし

スーパー たのくらは
驚異的な急成長を遂げていた。

おしんには まるで
何かに つかれたように

商売に打ち込んでいる仁が
不安であった。

そんな弱気で どうするんだ!
6号店は あそこと決めたんだぞ。

周りの店の反対くらいで
諦めるって言うのか?

(辰則)しかし 買収するはずの店が
急に 態度を変えて

「契約は 破棄したい」と
申し入れてきたんです。

もう少し 積んでやれ。
どうせ 金が欲しくて

店を手放す気になったやつだ。
そんなにまで しなくったって…。

4号店 5号店だって
うまくいくかどうか

分からないんだろ?
無理して 手を広げる事はないよ。

うちは 堅実すぎて
出遅れたんですよ。

今 追いつかなきゃ。

私はね あんたの家庭の事
心配してんだよ。

道子さんは 何にも言わないし…。

いい年した あんたたち夫婦に
あれこれ 言ったら

嫌われるだけだからね。
だけどね…。

いや 別に どうって事ないですよ。

もう 惚れた腫れたって年じゃ
ありませんからね。

母さん お客様ですよ。
えっ?

兄ちゃん!

兄ちゃん…。
(庄治)やっぱり おしんか!

(とら)おしんさん とらだっす!
姉さん!

よ~く ここが分かったね!

一生に一遍 お伊勢参りしてえと
思ってよ

夫婦で 農協の旅行さ参加して
やっと 念願 果たしたんだ。

そしたら
たのくらってスーパーがあって

とらが
急に お前の事 思い出してよ。

おしんさんは 確か 伊勢さ
いるはずだし 名字も同じだし

もしかしたらと思って
店さ入って 中で聞いてみたんだ。

そしたら 「社長は田倉しんだ」って
言うんだからね!

あだい たまげた事は
なかったな!

「本店さ行くと 会えるから」って。

なんと
店が 5つもあるんだってな!

えらい出世だ! よく ここまで!
んだな!

兄ちゃんも姉さんも
お元気で 何よりです。

俺だも
やっと 人並みになれたんだ。

今じゃ 子どもたちは みんな
勤め人になってしまって

俺だも 町さ住んでるんだ。

それじゃ あの 昔のうちは?

もう あだな山の中に
暮らしてる者は いねえって。

田んぼや畑だって
車で行ってるんだ。

俺だも
リンゴやサクランボ 作ってるけんど

貞吉の嫁が
車で送り迎えしてくれるんだ。

へえ~。 そんなもの 作ってるの?

農地解放で 俺たちも
やっと 地主になれたしよ。

んでも 子どもたちが
畑仕事 やんだがるし

だいぶ 手放した…。

父ちゃんや母ちゃんや
ばんちゃんが聞いたら

きっと びっくりするだろうね。
俺だが 貧乏 辛抱して

やっと あのうち
守ってきたんだからな。

やっと そのかいが
あったっていうもんだ。

父ちゃんも母ちゃんも
苦労ばっかりして

何にも いい事なくて
死んじまったんだもんね…。

おしん たまには お前も 山形に
顔 出したってええべよ! んだ。

サクランボやリンゴの花咲く時は
ほんてん きれいだからよ!

うわ~
こりゃ すばらしいもんだな!

伊勢エビ まだ生きてんでねえが?

じんちゃん ちょっと
取って 食うか!

「山形へなんか 誰が帰るもんか」と
おしんは思った。

…が 年老いた兄夫婦の姿に

自分の生きてきた長い道のりを
見るような気がして

おしんには
感慨深い再会であった。

その年の9月 仁は 強引に

スーパー たのくらの6号店を
オープンした。

社運は
日の出の勢いに見えたが

仁の家庭には
大きなひずみが現れ始めていた。

(仁)これで やっと 6店か。

(辰則)まっ
無事に オープンも済んで…。

道子さん…。
(道子)あなた。

何だ? こんな所へ。
用があるんなら うちで聞くよ。

あなたには 黙ってたんですけど

昨夜 剛が
帰ってこなかったんですよ。

そしたら さっき
警察から 電話があって

あの子 補導されたって…。
あなた どうしましょう!

♬~