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新しい関係を築こうと言ってから数か月が過ぎ時折 3人で食卓を囲むようになりました。
(武志)そうめん?
(喜美子)そやねん。サニーの新メニューに出す言うてな。
カフェで そうめんて…。食べへんやろ?
ほんまに出すんやったら 工夫せんと。
あっ 流しそうめん!(八郎)はっ?
カフェで!? 流しそうめん!?何で?
おかしいやん。よう考えてみ どっから流すねん。
誰が流すねん。 大変やん そんなん。何とでもなるやん そんなん…。
竹切って こうやってやったら…。何で カフェで そうめん…。
何でよ。もうええ もうええ。 はい 食べるで。
(3人)頂きます。
よし 一本一本食うたろ…。もう やめえ もう…。
アホやなあ。 アホは変わらんなあ。
何をしとんねん…。う~ん!
シイタケがええな これ。味せえへんやな?
喜美子はお金や時間に さほど追われることなく穏やかな幸せの中にいました。
(八郎)ほなな。うん。(武志)またな。
あっ スイカ出すの忘れた。
持ってく?いらん いらん。
また。うん。
またな。気ぃ付けてな。うん。
♪~
♪「涙が降れば きっと消えてしまう」
♪「揺らぐ残り火 どうかここにいて」
♪「私を創る 出会いもサヨナラも」
♪~
♪「日々 恋をして 胸を焦がしたい」
♪「いたずらな空にも悔やんでいられない」
♪「ほら 笑うのよ赤い太陽のように」
♪「いつの日も雨に負けるもんか」
♪「今日の日も 涙に負けるもんか」
♪~
♪「やさしい風に吹かれて」
♪「炎は再び舞い上がる」
おう 信作 おはよう。 何?
えっ 信楽ピーアール?
(鳥居)失礼しますぅ。
いはりません。 帰りましょ。(信作)何でや。
あかんのですか。あかんに決まってるやろ。
ほやけど いはりませんよ?いるて。 母屋にいるんやろ。
もう来る来る。 入って待っとこ。
ほんまに頼むんですか?まだ聞くか お前。
ほやかて…。
あっ これですよね? 何でしたっけ?
自然釉。あ~ 自然釉ね。
独特の色合いやで。あ~ 独特の色合いですか…。
おう 唯一無二の作品や。焼き物は 何でも そうちゃいますのん?
アホ! よう見てみぃ。
地味やなあ…よう高い値段で売れますねえ。
お… お前…そういうこと 絶対 本人の前で言うなよ。
現物見ても ピンときいひん。こんなんの どこがええんやろう…。
(信作)お前が分からへんだけや。(鳥居)ほな 課長は分かるんですか?これの どこが どうええか言うて下さい。よさを教えて下さい。
今日は 仕事で来たんやで?
仕事やったらええも悪いも考えへんのですか。
会議で決まったやろ川原喜美子先生に頼むいうて。
黒川先生んとこの息子さんがよかったですぅ。
賞も取らはって これからのお人やし。
ほやから あそこは 黒川先生は「息子には やらせへん」言わはったんや。
断られたんや。しゃあないやろが ここに頼むしか…。
こんなんて いくらぐらいするんですかね。
冷たいの持ってきたでえ 飲みぃ?おう。
今日は 何?おう 悪いな 忙しいとこ。
あの うちの役場の…。観光課の鳥居です。
川原です。 どうぞ。
お気遣い ありがとうございます。
「信楽ピーアール大作戦」…?おう 俺の企画や。
何や 昔もあったなあ。う~ん… あっ!
(2人)「お見合い大作戦」。大作戦好っきやなあ。
焼き物の町やいうん売りにして町全体をもり立てていこういうことでこの夏からさまざまな企画を始めてるんです。
その一つに 観光客向けの「一日陶芸体験教室」いうんを開いてます。
チラシは見ました。おっ 見たか。
サニーに貼ってあるやん。おう。 ほな 話 早いわ。
こちらがチラシです。もう見たて。一応。
ありがとう。5軒の窯元さんに 協力頂いてます。
でっかいとこやと 永山さんと丸熊さん照子んとこな。
ほんで 南さんに 小津さんに 神林さんや。
神林さんがな何や 水道管がやられたとかで工房が水浸しになってしもうたんやて。
大変やん 直ったん?直ったは直ったんやけど体験教室どころやない 急にやれへん言われて困ってしもうて… なあ。
はい… 予約は もう受けてしもたんで…。
ほんで 会議でなどないしよういうて 話した結果ここに頼もういうことになって…。
ああ… いつ?
明日。
明日!?
どうか 引き受けてくれんやろか。お願いします。
お願いします。
分かりました。
うちでよかったら やらせてもらいます。よろしゅうお願いします。
あ… はい。
1時間から2時間の体験?
えらい大ざっぱやな…。教える側に任せてんねん。
ほやけど2時間で作品を完成させるんは無理やで?
そんな本格的にやらんでええんや。ほやけど 本焼きするんやろ?
本焼きしたんを後で郵送で送ってあげんねん。
ああ。
そもそも何人 来やるん?予約は 6人。
そんなに?神林さんとこが えらい人気でな。
かわいらしい色したティーカップが出来るいうて。
窯元 それぞれを紹介した案内チラシがあってな神林さんは そこに 鮮やかなティーカップの写真 載っけてやんねん。
観光客は 女性が ほとんどや。
それ見て 「あ~ かわいい。こんなん作ってみたい」思うんやろ。
ふ~ん そうか…。
あ… 喜美子は 急やし案内チラシの代わりに何か見本でもあったらええんやけどな。そやなあ 見本置いた方がええなあ。
ティーカップは…。ティーカップやのうてええんや お前は。
皿でも 茶わんでも。あ~ 皿。 ほな 絵付け小皿でもええかな。
絵付け小皿やったらかわいらしいのあるわ。
喜んでもらえそうなんが こっちに…。
喜美子。うん?
そういうのはええねん。えっ?
来たお客さんに自然釉で一躍有名になった女性陶芸家川原喜美子先生を紹介しよういうことになったんやから。
対抗せんでええ。
大体 ほかんとこは 喜美子みたいに一点物の作品作ってるんちゃうんやし。
ほやけど 来てもらうからには喜んでもらいたい。
ええ。 無理して こびんでええ。こびる?
お客さんのご機嫌うかがうようなこと。
喜んでもらいたい思うんがこびるいうことなんやったらうちは いくらでも こびるで。仕事として引き受けたからにはな?
説明が足らんかった。
この企画な地元に貢献してもらおういうて頭下げてやってもろうてんねん。ほやから… 謝礼程度しか出せへん。
ほやけど 仕事は仕事やん。 仕事やろ?
おう そうや 仕事や仕事やなかったら こんなんせん。
こんなん?おう。 こんなん 喜美子に よう頼まん。
何で? どういうこと?
黒川先生は息子には やらせへん言うてた。
アーティストや言うて。アーティスト…。
芸術家。ああ…。
えっ 芸術家には体験教室やらせへんの?
やらせへんちゅうか…分からへん人も来るやろ 鳥居みたいな。
さっき 聞いてたんやろ。
「地味やなあこんなんの何がええんやろ」言うて。
ああやって 簡単に ひどいこと言うやつも中にはいるで。
したり顔で 批判始めるんもいる。
喜美子の心が 伝わらへん人が来るんや。
撤回しようか? なっ やっぱり やめよか。
俺が 頭下げて回れば済む話や。
やっぱり 断ろか。 なっ。
一旦 引き受けたもんを断るわけないやろ。
ほんで うちのこと 何や思うてんねん。
信作からの頼み事 断るわけないやろ。
あ… ろくろ 4つお願いしてもええ?2つしかないわ。
ああ… 分かった 4つな。
おう 帰ろか。
武志は この夏 ずっと亜鉛結晶釉に取り組んでいました。
回想 (掛井)亜鉛結晶をやりたい?
はい。 うまいことコントロールして亜鉛結晶をデザイン化させたいんです。
(掛井)よっぽど気に入ったんやな。
俺の熱い瞬間です。
熱い瞬間?はい。
亜鉛結晶が 雪の結晶みたいに見えて…器に雪を降らせたいって思いました。
雪を降らせる…。はい。
挑戦してみます。うん。
まずは 亜鉛結晶の再現を目指します。
結晶を出したい所に亜鉛結晶の核を付着させます。
(掛井)おっきなってきたなあ。はい。
結晶が出たところで下地を変えることにしました。
下地の釉薬の調合割合を調整しながら試し焼きを繰り返します。
釉薬が溶け過ぎて思ったとおりの結晶が なかなか出なかったこともありましたが…。
♪~
焼く温度と冷ます時間をコントロールすることで大きな結晶を出せるようになりました。
(真奈)はい。ああ ありがとう。
毎日 根詰めてますね 亜鉛… 何とか。
ああ 亜鉛結晶。そう。 うまいこといってるん?
石井さんも うまいこといってるん?えっ?
大輔と この夏からつきあうことになったんのやろ?
大輔 昔から憧れとったらしいで琵琶湖タワー 一緒に行ったって聞いた。
うまいこといってるんや。
うまくいってても いってなくても川原君には言いません!
絶対 言いません!
さいなら。
それ うまくいったら次世代展 応募するん?
あ… まあ そのつもりやけど…。
ほな それはそれでしっかり頑張って下さい。 さいなら。
さいなら…。
う~ん… はあ…。
はあ…。
明日は どんな人が来るんやろか。
想像しながら見本を作る喜美子です。