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【政治】

<新型コロナ>首相、異論押し切り独断 一斉休校要請、決定の裏側

 安倍晋三首相は新型コロナウイルスによる肺炎拡大を受け、側近の異論を押し切って全国一斉の休校要請を決めた。見えない脅威に「究極の先手」(官邸筋)を打った形だが、独断専行の色合いも濃く、「安倍1強」の危うさがのぞく。自治体任せだった二月二十五日の基本方針から一転、二十七日の決断に至った経緯を検証した。

 政府内では二月中旬から地域ごとの臨時休校案が取り沙汰されていたが「雑談の域を出なかった」(政府関係者)。二十四日の政府専門家会議が「これから一~二週間が瀬戸際だ」と警告したが、翌二十五日の対策基本方針は、休校に関し各都道府県の判断に委ねる内容にとどまった。

 だが、基本方針公表後の二十五日午後、官邸で開催された会議で、全国一律の休校案が俎上(そじょう)に載った。複数の関係者は、首相腹心の今井尚哉首相補佐官が主導したと証言する。菅義偉官房長官は「やり過ぎではないか」との認識を示し、官僚ら事務方からも「感染者がいない地域にはとばっちりだ」と異論が出た。

 翌二十六日の衆院予算委員会で、首相は「常に後手だ」(立憲民主党の枝野幸男代表)と批判の矢面に立たされる。北海道は小中学校の休校要請を決断。首相は周辺に「政権にとって正念場だ」と語り、一斉休校案の本格検討に踏み出す。

 官邸側は二十七日朝、文部科学省に一斉休校案を伝えた。与党の一部にも状況が漏れ始め、「大混乱になる」(閣僚経験者)と反発が拡大した。自民党の下村博文選対委員長が午後の衆院本会議場で首相に真意を尋ねると、首相は「検討している」と明かした。

 首相側近の萩生田光一文科相は「春休み前倒し案」には理解を示していたが、全国一律で約一カ月に及ぶ長期の休校案には抵抗していた。だが、首相は午後に萩生田氏と官邸で会い「政治決断した」と通告。その後の対策本部会合で一斉休校要請の考えを表明した。

 自民党の岸田文雄政調会長に方針が伝わったのは会合直前だった。党文教族幹部にも事前に打診していなかった。首相側近は「うだうだ議論したって仕方ない」と吐き捨てた。

 

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