聞かぬは一生の   作:コーンフレーク

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今回は真実を知ったアルベドとナーベラルの胸中にスポットライトを当てた回になります。話としては全然進んでないし文章も短いですが、もう少し丁寧に書いておきたかったのでこの部分だけ切り取って投稿させていただきます。


妃達の想い

そのようなやり取りをする中でアルベドとナーベラルはアインズへの想いを更に深めていた。伝えられた事から察するに、アインズ自身も現実世界(リアル)での過酷な日々に耐えつつユグドラシルの活動を両立させるというのは困難を極めたはずなのだ。他の御方々が出来なかった程なのだから。共に輝かしい日々を過ごした仲間達が次々と去っていく中でアインズの身も心も疲弊しきっていたであろう事は想像に難くない。

 

しかし、そんな自身の苦労はおくびにも出さずこの御方は自分達が創造された時から全てが消え去る時までまでただ一人変わらず共に居てくださった。そして、異変に巻き込まれた後も至高の支配者として未熟な我々を導き過去に勝る喜びを与えてくださっているのだ。真実を知った事により、二人の中でアインズと過ごした日々とその存在はよりかけがえのないものになっていく。

 

だが、アルベドとナーベラルはアインズへの敬愛と共にそれぞれもう一つ別の思いが己の中で膨れ上がるのを感じていた。アルベドは他のギルメンへの憎悪、ナーベラルは妃として望まれる事への重圧である。

 

アルベドはアインズを讃えるシモベ達の声を聞きながらナザリックが異変に巻き込まれた時の事を思い出していた。

 

(…あの日、珍しく他の御方が姿をみせた理由は全てが終わる日だったからなのね。きっとモモンガ様が声をかけられたのだわ…だけど…ナザリックに来たのは確か三人程でそれもすぐに去って行った…)

 

(来た者はモモンガ様に労いの言葉くらいかけたの?…それ以外の者は自分達が作り上げた物を最後まで一人守り続けたモモンガ様に何も感じなかったの?…無関心なだけならまだしも、自分達がとうに捨てた物を大切にしているモモンガ様を嘲笑っていたとしたら…)

 

(…いずれにせよ、今では私達やモモンガ様の事など記憶の片隅にも残っているのかどうか怪しいものね…)

 

様々な憶測をする度にアルベドの心を暗い影が覆い、普段は抑えている自分達を捨てた者達への憎悪が鎌首をもたげてくる。しかし、自分に愛というぬくもりを与え暗闇の底から救ってくれた御方と結ばれたという無上の喜びと、これから訪れるであろう幸せな日々への期待がその憎悪を再び抑え込んでいく。

 

(でも、あの者達のせいで心を乱される事もこれで終わり…ああ、モモンガ様…)

 

(このアルベドは永遠にあなたのお側におります。これ以上ない快楽と共に愛を捧げますわ。あの者達の事など愛しく思わず済むように…)

 

そのような内面の葛藤は微塵も感じさせず、アルベドは女神のような微笑みと至高なる御方の妃としての偉容をシモベ達に示していた。

 

一方ナーベラルは、アルベドから「世継ぎ」という言葉を聞いた時に今までの夢見心地から覚め妃の一人として果たさねばならぬ務めの重大さに不安を感じていた。

 

(…確かにそうよね。それも当然ご計画されている事…でも、私に務まるのかしら)

 

ナーベラルは自らが備えている機能に自信を持てずにいたのだ。子を成す為の営みの知識は持ってはいたがまさかそれを実践する日が来るとは思ってもいなかったし、ましてや自らに子を宿す機能が備わっているのかどうかなど分かるはずもない。

 

(もしご期待に応えられなかったら…)

 

そんな思いがナーベラルの表情を僅かに曇らせる。そして「そもそも私など不相応なのだ…」という暗い思考に囚われようとするが、先程アインズからかけられた言葉がナーベラルを救う。

 

(…いいえ、アインズ様は私が望む未来を得られれば良いと仰りその機会を与えてくださった。私は全身全霊をもってそのお心に応えられるよう努力するのみ…)

 

そう自らの考えを改めたナーベラルから不安の色は消え、その目には目映いオーラを放つアインズとその正妃としてふさわしい偉容を誇るアルベドが映っていた。

 

(数えきれない程の偉業を成し遂げたアインズ様のご計画に瑕疵などあるはずもないし、アルベド様は正妃としての務めを立派に果たしてくださるわ。私もモモンさ……んの伴侶として相応しい姿を下等生物共(ナメクジ)に見せつけなければ)

 

ナーベラルは自身に求められている事を今一度思い返す。まずは漆黒の英雄モモンの物語を、人間共が未来永劫語り継ぐような輝かしいものにしなければならない。その為にナーベという伴侶が必要なのだから。

 

デミウルゴスからこの計画について聞かされた時ナーベラルは最初こそ戸惑ったが、その効果についてはすぐに理解出来た。というのも、人間がモモンという存在に憧れや希望を抱く気持ちと、その伴侶の座を得るのは誰なのか?という興味を抱く気持ちには少なからず共感出来る部分があったからだ。ナーベラルは人間が目を輝かせて漆黒の事を語り合っている姿を見ると、そこに自分や姉妹達の姿が重なって見える時がある。

 

(姉妹達とアインズ様の事を語っている時、恐らく私もあのような顔をしているのね…)

 

認めたくはないが姉妹達の顔をみるに自分も同じようなものだろう、と思う。そして、アインズ様のお妃には誰が相応しいか、という話題で盛り上がるのもメイド達の常だった。当然立場的にアルベド様かシャルティア様か、それともアウラ様の成長を待たれるのか、という話になるのだが、自分としては女性としての器量だったらユリ姉様だって負けてないのに…という思いがあった。もしアインズ様が立場の違いを気にせずユリ姉様を選んでくださったら、自分は我が事のように喜ぶだろう…そんな思いを抱えていたナーベラルには、人間達のモモンとナーベが結ばれる事を望む気持ちもある程度理解出来た。

 

(そして、もし叶うならば…)

 

ナーベラルは自身の幸せな未来を想像する。

 

(人間共が語り継ぐ漆黒の英雄譚には第二章があり、その主役が私とモモンさ……んの子だったら…)

 

私などとるに足らない存在であるはずなのに、そのような未来を望む事もアインズ様は許してくださった…そう思うと今までに感じた事のない幸福が全身を包み、自然と頬が緩んでくる。しかし、子が出来たら出来たで別の不安が頭をよぎる。

 

(…それこそ子育てなんて私に出来るのかしら…?でも、姉妹達に助けてもらえばなんとか…ダメ!ルプーとソリュシャンにはとても預けられないわ…)

 

そんな妄想をしながら赤、青と忙しく顔色を変えるナーベラル。

 

二人の妃はそれぞれの幸せな未来を夢みながら時が訪れるのを待つのであった。

 

 

 




今回はここまでとなります。読んでくださった皆様ありがとうございました!最近多忙の為遅筆で申し訳ないですが、これからも更新していくので読んでいただけると嬉しいです!

オバマス勢の皆様、魔導王モモンガ様は引けましたか?自分は見事に旧モモンガ様でした笑

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