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【井上透の最先端メソッド】

根性論より統計データ!パッティング上達へ2つの練習法

2020年2月27日 紙面から

 「パッティングを科学する」の最終回は、上達につながる2つの練習法について説明します。「50球テスト」と「サークルトレーニング」をうまく活用して、自分自身の精神面の傾向や不得意分野を把握すれば、レベルアップにつながることは間違いありません。 (取材・構成 堤誠人)

「50球テスト」はレールの上に置いて打ってみましょう

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専用レールか角材

 「50球テスト」は、家の中でも実際のコースでもできます。道具は、パッティング練習用に販売されているレールや、ホームセンターで売られている1センチ幅で長さ1メートルの角材を使います。

 10球×5回の表を作り、1球ずつレールの上にボールを置き、先にあるカップを狙って打ちます。表の升目には、入った時には「○」、右に外れた時は「↑」、左に外れた時は「→」などと書きます。

 この統計データでは、パッティングの傾向が分かります。例えば「○」が30球、「↑」が15球、「→」が5球だった人は「60%は真っすぐ行くけど、右に外れることも多い人」ということになります。

 これは、とても大事なことです。プロを指導する時でも、ミスをする度に「今のミスは何が悪かったのか」と聞かれることがあります。しかし、今の1打が右に外れた原因だけを追究しても意味はありません。なぜなら、右へミスした時に右へ打たないようにしようとすると、今度は左へミスをするからです。

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心理テスト兼ねる

 この「50球テスト」は心理テストも兼ねています。「右へ打たないようにしよう」「左に打っちゃいけない」と思っていると、逆へのミスが出るものです。

 また、5球連続で入れた後、6球目が右、7球目が左へ外れると「メンタルがブレ始めたな」ということになります。入った時には「右へ行かないように」とは考えていません。だから、なぜ右へ行ったのか、を考えることには意味がないのです。

 「50球テスト」を続けていくと、調子よく何球も続けて入った時に何を考えているかが分かります。ゴルフの難しさは、その時の心理状態が色濃く反映されるからです。「50球テスト」ではその人の性格や心理状態が分かるので、上達には有効な手段と言えるでしょう。

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 「サークルトレーニング」も同様です。こちらは、カップを中心にした円を12分割し、それぞれの方向から打っていくものです。これは、ラインに応じた曲がりの違いを学ぶことができます。

 そして、「50球テスト」と同じように統計で考えると、より一層の効果が得られます。例えば、12時からだと10球全てが入ったのに、1時からだと10球のうち7球しか入らなかったとしましょう。これらは貴重なデータです。不得意なライン、自身の練習テーマや問題点を発見するために練習する方が、より効果的なのは当然です。

課題を見つけよう

 昔から「日没まで打ち続ける」とか「100球連続で入るまで止めない」といった練習法があります。根性論は否定しません。しかし、今回お教えした練習法で自身の心理状態や苦手な分野を把握することの方が、パッティングの上達につながります。

 パッティングは、ただ練習を重ねるだけでは上達しません。プロゴルファーを指導する時にも、その時の心理状態を考慮しながら指導することは当然です。みなさんも「50球テスト」や「サークルトレーニング」を漫然と続けるのではなく、統計データを集めながら本当の不得意分野を見つけるようにしてください。そうすれば、必ず上達につながります。ぜひ、取り組んでみてください。

【井上透のひとりごと】

選手強化につながる“スタッツ”充実

 米国ツアーに比べて、日本ツアーが遅れていると感じるのはスタッツ(部門別データ)についてです。公式の項目が少なく、数年前まではドライビングディスタンスのデータがありませんでした。

 米国の男子ツアーでは、ものすごく細かいスタッツがそろっています。パッティングでは3フィートでは何%、4フィートでは何%とカップインする確率が距離別で分かります。ショットでも、パーオンした時のカップまでの距離を計測しています。

 充実したスタッツデータがあれば、自分に何が不足しているかが分かります。また、コーチにとっても何を修正すればスコアアップに影響するのかがはっきりします。

 もちろん、私の指導している選手は何年も前から細かいスタッツデータを個別に取っていました。しかし、他選手との比較ができないと、相対的にどのレベルにあるのかが評価できません。

 日本のプロゴルファーを世界へ押し上げるためには、コースや芝の違いももちろんありますが、スタッツデータの充実は最も簡単で有効な方法だと思います。

 <井上透(いのうえ・とおる)> 1973(昭和48)年4月3日生まれ、横浜市出身の46歳。大学生の時に渡米し、ゴルフ理論を学ぶ。97年に日本初のプロコーチとなり、現在は成田美寿々や穴井詩らを指導。世界ジュニアゴルフ選手権の日本代表監督を務めるなど、ジュニア育成にも力を入れる。2016年から東大ゴルフ部監督。

 取材協力 横浜本牧インドアゴルフ練習場(横浜市中区本牧原15の6グロブナースクエアB1)(電)045(228)7739

(毎週木曜日の紙面に掲載)

 

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