金ETFとは、金価格に連動するETF(上場投資信託)です。
ETFは株式投資とと同じようにリアルタイムで取引できるのが特徴で、約5,000円程度から投資可能な銘柄もあります。
また、金ETFは現物取引よりも手数料が安く、保管料もかからないので、手軽に金投資を始められるのがメリットです。
今回は、金ETFの銘柄ごとの特徴や比較を合わせて解説します。
目次
金ETFとは?
金ETFは証券取引所に上場しているので、上場株式と同じように、取引所が開いている時間ならリアルタイムで取引できるのが特徴です。
価格を確認しながら売買注文が出せるため、価格が下がったときに買い足すことや、価格が上がったところでの売却も簡単にできます。
また、信用取引もできるので、売りから始めて後から買い戻すことで、金価格が下落しているときでも利益を得ることが可能です。
金ETFは、現物取引に比べて売買手数料が低く、保管料もかからないため、手軽に金投資が始められるメリットもあります。
保有資産のリスク軽減のために、金への分散投資を考えているなら、金ETFは選択肢の一つになるでしょう。
金ETFのメリット
次に、金ETFのメリットを紹介します。
少額から金投資が始められる
金ETFには、少額から金投資が始められるメリットがあります。
金ETFは、口数単位で取引が行われます。取引単位は銘柄によって異なり、「1口」または「10口」が購入単位です。
金ETFの中には、1口あたりの価格が4,000円台(2018年6月現在)の銘柄もあります。
「金は高い」というイメージを抱いている人や、まとまった資金がないと購入できないと考えている方もいますが、金ETFは比較的手軽に金投資が始められます。
現物取引より手数料が安く、保管料も不要
金ETFは、現物取引よりも手数料が低く、保管料が不要なのもメリットです。
金の現物を購入するには、高額の売買手数料がかかります。
例えば、田中貴金属工業の金地金の税込小売価格は4,896円/g(2018年6月25日9:30時点)なので、金地金5gの税込小売価格は約24,500円(4,896円×5g)です。
約24,500円分の金地金を購入する場合、4,320円(税込)の売買手数料を別途支払う必要があります。※1
しかし、金ETFの売買手数料は、証券会社の株式取引手数料に準ずるため、ネット証券を利用すれば売買手数料を抑えることが可能です。
SBI証券のスタンダードプラン(1注文ごとに手数料がかかる)の場合、5万円までの取引なら、取引手数料は54円(税込)です。※2
また、田中貴金属工業の場合、5㎏までの保管料は年間5,400円(税込)かかりますが、金ETFなら保管料も不要です。※3
【ネット証券の各手数料を比較検討したい方はこちら】
金ETFのデメリット
続いて、金ETFのデメリットを紹介します。
基本的に分配金が出ない
金ETFは、基本的に分配金が出ないのがデメリットです。
現物資産である金の価格は日々変動しますが、配当や利息を生み出す資産ではありません。
分配金を出すには原資が必要ですが、金ETFは金価格に連動する上場投資信託であるため、配当や利息を得られず、分配金原資の確保が難しいのです。
金ETFの中には、年1回の分配金支払基準日を設定している銘柄もありますが、ほとんどの銘柄が分配金支払いは0円となっています。
金ETFは、株式や債券が投資対象の投資信託とは異なり、長期保有しても複利効果による資産の増加は期待できません。
ETFの中では比較的信託報酬が高い
金ETFは、ETFの中では比較的信託報酬が高いのもデメリットです。
株式や債券、REIT(不動産投資信託)が投資対象のETFの場合、信託報酬は年率0.1%~0.2%台の銘柄も多くあります。
一方、金ETFは0.4%~0.5%台と比較的高く、他のETFよりも保有期間中の運用コストが高くなります。
金ETFは現物取引よりも低コストで運用できますが、ETFの中では信託報酬が比較的高いことを理解しておきましょう。
【信託報酬の詳細を知りたい方はこちら】
金投資ができる5本の金ETFを比較
ETFS金上場投資信託 | 純金上場信託(金の果実) | One ETF 国内金先物 | SPDR ゴールド・シェア受益証券 | 金価格連動型上場投資信託 | |
---|---|---|---|---|---|
銘柄コード | 1672 | 1540 | 1683 | 1326 | 1328 |
連動指標 | 金地金価格(ロンドン金値決め) | 国内の金先物価格から評価した、金地金の現在の理論価格 | 東京商品取引所(TOCOM)金先物の期先限月の清算値 | 金地金価格(ロンドン金値決め) | 金地金価格(ロンドン金値決め) |
金現物の裏付け | あり | あり | なし | あり | なし |
信託報酬 | 年率0.39% | 年率0.432% | 年率0.486% | 年率0.4% | 年率0.54%以内 |
地金交換の可否 | 不可 | 可 | 不可 | 不可 | 不可 |
管理会社 | ETFセキュリティーズ・マネジメント・カンパニー・リミテッド | 三菱UFJ信託銀行 | アセットマネジメントOne | ワールド・ゴールド・トラスト・サービシズ・エルエルシー | 野村アセットマネジメント |
分配金の有無 | なし | なし | 年1回 | 年1回 | 年1回 |
上場日 | 2009年8月24日 | 2010年7月2日 | 2010年2月15日 | 2008年6月30日 | 2007年8月10日 |
※4~※8
上の表は、東京証券取引所に上場している5つの金ETFの比較表です。ここでは、それぞれの銘柄について解説します。
ETFS金上場投資信託
「ETFS金上場投資信託」は、ロンドン地金市場協会(LBMA)の規格にもとづく金地金の現物に投資し、金の価格との連動を目指す外国籍の金ETFです。
金現物の裏付けがあり、現物はHSBC銀行USAが保護・預りを行っています。
1口あたりの価格は13,790円(2018年6月20日終値)、売買単位は1口なので、13,790円(手数料を除く)から購入可能です。
信託報酬は年率0.39%で、今回紹介している5つの金ETFの中では最も低く設定されています。
また、分配金の支払いはありません。※4
純金上場信託(金の果実)
「純金上場信託(金の果実)」は、国内の金先物価格から評価した、金地金の現在の理論価格が連動指標の金ETFです。
金現物の裏付けがあり、金ETFの中で唯一、地金との交換が可能です。
一定の受益権口数を保有すれば、受益権と引き換えに地金の現物を受け取れます。
1口あたりの価格は4,350円(2018年6月22日終値)、売買単位は1口なので、4,350円(手数料を除く)から購入可能です。
信託報酬は年率0.432%(税込)、純資産額が582億円と規模が比較的大きく、原則として分配金の支払いはありません。※5
One ETF 国内金先物
「One ETF 国内金先物」は、東京商品取引所(TOCOM)金先物の期先限月の清算値が連動指標の金ETFです。
国内金先物や国内金先物ミニが組入銘柄なので、投資初心者にはわかりにくい可能性があります。また、金現物の裏付けはありません。
1口あたりの価格は3,820円(2018年6月22日終値)、売買単位は10口なので、38,200円(手数料を除く)から購入可能です。
信託報酬は年率0.486%(税込)と比較的高く設定されているほか、純資産額は1億円と小さいといえます。
分配金の支払いは年1回となっていますが、直近の1口あたり分配金は0円です。※6
SPDR ゴールド・シェア受益証券
「SPDR ゴールド・シェア受益証券」は、円換算した金地金価格(ロンドン金値決め)との連動を目指す金ETFです。
金地金価格を指標にしており、組入銘柄の100%が金なのでわかりやすく、金現物の裏付けがあるのが特徴です。
1口あたりの価格は13,150円(2018年6月22日終値)、売買単位は1口なので、13,150円(手数料を除く)から購入可能です。
信託報酬は年率0.4%で、金ETFの中では「ETFS金上場投資信託」の次に低く設定されています。
分配金支払基準日は定められていますが、支払われるのは一定の状況に該当する場合のみで、直近の1口あたり分配金は0円となっています。※7
金価格連動型上場投資信託
「金価格連動型上場投資信託」は、1グラム当たりの円表示の金価格との連動を目指す金ETFです。
ロンドンにおけるロンドン渡し金価格(米ドル建ての金価格)に円換算為替レートを乗じて得た額を、1グラムあたりの価格に換算して算出しています。
1口あたりの価格は3,675円(2018年6月22日終値)、売買単位は10口なので、36,750円(手数料を除く)から購入可能です。
信託報酬は年率0.54%(税込)以内で、今回紹介する5つの金ETFの中では最も高く設定されています。純資産総額は62億円です。
分配金支払基準日は定められていますが、直近の1口あたり分配金は0円となっています。※8
金ETFが購入できるネット証券
最後に、金ETFが購入できるネット証券を口座開設が多い順に3つ紹介します。
SBI証券
SBI証券は国内最大手のネット証券で、国内株式手数料は業界でも低水準です。そのため、金ETFを低コストで売買できます。
手数料プランは「スタンダードプラン」と「アクティブプラン」の2つが用意されています。
スタンダードプランは、1注文の約定代金に対して手数料がかかるプランで、5万円までなら54円(税込)、10万円までなら97円(税込)で取引できます。
一方、アクティブプランは、1日の約定代金合計額に対して手数料がかかるプランで、1日10万円までなら手数料0円で取引可能です。
また、金ETF以外の取扱商品も豊富で、投資信託、外国株式、債券、ロボアドバイザーなど、幅広い商品・サービスを提供しています。※2
楽天証券
楽天証券は主要ネット証券の一つで、SBI証券と同じく、国内株式手数料は業界低水準で、金ETFを低コストで売買できます。
楽天証券も、1注文の約定代金に対して手数料がかかる「超割コース」と、1日の約定代金合計額に対して手数料がかかる「いちにち定額コース」の2つの手数料プランがあります。※9
楽天証券は取扱商品が豊富なことに加え、ポイントプログラムが充実しているのが強みです。
株取引や投資信託の購入、楽天サービスとの連携でポイントが貯まり、楽天スーパーポイントで投資信託が購入できるサービスもあります。
マネックス証券
マネックス証券も主要ネット証券の一つで、マネックス証券も国内株式手数料が低いため、金ETFを低コストで売買できますが、SBI証券・楽天証券に比べると割高になります。※10
マネックス証券の強みは、米国株とIPOの取り扱いが充実していることです。
米国株(個別株・ETF)は約3,000銘柄の取り扱いがあり、主要ネット証券で唯一時間外取引にも対応しています。※2018年3月時点
また、IPO(新規株式公開)の取扱実績数も豊富です。完全公平抽選なので、取引実績や保有資産が少ない投資家にも当選のチャンスがあります。
まとめ
金ETFは、上場株式と同じようにリアルタイムで取引できるのが特徴です。
現物取引に比べて売買手数料が低く、保管料もかからないので、低コストで金投資ができます。
また、少額(5,000円程度)から投資が可能な銘柄もあるため、まとまった資金がなくても金投資が始められるのもメリットといえます。
金投資もさまざまな方法があるため、今回紹介した金ETFを参考に比較検討していきましょう。
【金投資の方法についてはこちらの記事をチェック】
※1:売買価格と別途手数料|田中貴金属工業
※2:SBI証券、手数料
※3:田中貴金属工業、ゴールキーパー
※4:ETFS金上場投資信託|東京証券取引所
※5:純金上場信託(金の果実)|東京証券取引所
※6:One ETF 国内金先物|東京証券取引所
※7:SPDR ゴールド・シェア受益証券|東京証券取引所
※8:金価格連動型上場投資信託|東京証券取引所
※9:楽天証券、手数料
※10:マネックス証券、手数料