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【放送芸能】

いじめ 貧困…深刻な現実の裏 映画「子どもたちをよろしく」 29日公開

企画した映画「子どもたちをよろしく」について語る前川喜平(左)と寺脇研=東京都目黒区で

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 いじめ、貧困、家庭崩壊などに苦しむ子どもたちと取り巻く社会の暗部を描いた映画「子どもたちをよろしく」が29日から、全国で順次公開される。企画したのは、元文部科学省官僚の寺脇研(67)と同次官も務めた前川喜平(65)。二人は「文科省にいては扱うことができなかった問題をリアルに描いた」と口をそろえる。 (竹島勇)

 作品はフィクションで、隅田靖監督が脚本も手掛けた。ある地方都市で、派遣型性風俗店で働く未成年の優樹菜と中学生の弟の稔とその家族。優樹菜と同じ風俗店で働く貞夫と、一人息子の洋一。両家庭とも崩壊し、貧困にあえぐ。洋一は同級生の稔らから陰惨ないじめを受けていて姉の本当の仕事を知った稔の怒りは洋一に向かい、洋一は自殺を決意する…。

 生きづらさに苦しむ中学生たちに手を差し伸べる大人や学校が一切登場しない作品。京都造形芸術大客員教授で映画評論も展開する寺脇が、何年も前から構想を温めていて、後輩で旧知の前川が退官したことから共同企画を打診した。文科官僚としてこうした問題と向き合ってきた二人。前川は「学校や教育委員会など、当局側にも責任はもちろんある」としつつ、寺脇は「大人全体の問題だ。しかし、それを在職中に訴えるのは責任逃れをするようでできなかった」と胸中を明かす。

 現在、自主夜間中学のスタッフなどを務め、安倍政権や教育行政などに厳しい発言をしている前川は「私自身が小学生の時、不登校の時期があった。文科省時代も官僚や政治家と議論もしたが、学校に行くことをやめた人や、シングルマザーとして生きる人の生の苦労話を街のバーで聞いたことが映画の参考になった」と話す。完成した作品に「救いがない」とも感じたという前川。しかし、「大人も子どもも自分の問題として見て考えてほしい」と訴える。

 隅田監督は「リアルで重い企画で大手の映画会社では採用されなかったろう。お二人が動いてくれ、趣旨に共鳴してくれた人たちの寄付で作ることができた」と振り返った。

「子どもたちをよろしく」から

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 ※公演やイベントなどは、新型コロナウイルスによる肺炎の影響で中止や変更の可能性があります。

 

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