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【社会】

<新型コロナ>休校説明に不信感 「首相のパフォーマンス」

 「感染リスクに備えなければならない。どうか理解を」。新型コロナウイルス対策で二十九日に記者会見した安倍晋三首相。突然の休校要請に「断腸の思い」と繰り返し、感染拡大防止に「あらゆる手段を尽くす」と強調したが、市民からは「対策が後手に回っている」という批判も。週明けから休校が始まる中、仕事を休むことが難しい医療従事者や保育士らの間では不安と不満が広がっている。

 東京都港区のJR新橋駅前で、友達と待ち合わせをしていた板橋区の会社員佐竹由依さん(23)は「休校要請は事前に関係者への相談もなく、見切り発車だったのでは。先手を打っている感じはしない」と指摘。佐竹さんの勤め先の会社は時差出勤を導入しておらず、「マスクを着けるぐらいしか対策がない。時差出勤を勧めるなら義務にしてほしい」と求めた。

 旅行で上京した佐賀県唐津市の会社員小玉和也さん(35)は「昨年十一月に東京に来た時より人影が少ない。景気が停滞しそう」と話し、「政府の対策は後手後手になっている。期待できない」とばっさり。一方、仕事帰りの大田区の派遣社員菅原辰也さん(57)は「子どもが死んだら大変なので、休校判断はいいと思う。分からないところが多いウイルスなので、しょうがない」と政府の対応に理解を示す。

 通行人の多くがマスク姿のJR東京駅前。仕事に向かうため長距離バスを待っていた会社員竹内聡さん(52)=東京都町田市=は「対応が後手に回っている印象があり、説明も十分ではないと思う」と話した。一斉休校の影響で休業を強いられる保護者らへの助成金を検討する方針を示したことには「走りながら考えざるを得ない状況だとは思うが、本当にできるのか」と首をかしげた。

 千葉市緑区の女性(58)が勤めるホテルは、一斉休校の要請が表明されて以降、学校の合宿などの予約キャンセルが相次いでいるという。「影響がとても大きい判断を急に発表し、まるでパフォーマンスのようだ。そこまでする必要があるのか、『理解して』と言われても、納得できない気持ちは残る」と話していた。 (松村裕子、小野沢健太)

◆塾など教育業界 「準備期間なく一方的」

 政府の一斉休校要請を受けて、塾を運営する教育業界にも困惑が広がる。

 大手進学塾の早稲田アカデミー(本部・東京都豊島区)は二月二十九日、ホームページで二~七日を休講とし、振り替え授業や授業映像の配信などで対応すると発表。期間中に予定していたテストや模擬試験などはすべて実施を見送るという。

 子どもたちに理科の実験などを教えるサイエンス倶楽部(くらぶ)(本部・東京都中野区)は二月二十七日夜、翌二十八日から三月八日まで全実習を休講にすると、ネット上で通知。運営担当者は「政府の『今後一、二週間がヤマ』との話を聞き、休講にした場合の授業の振り替えなどを検討していたが、突然の発表に驚いた。スタッフの仕事をどうするかという問題もある。準備期間もなく、一方的な感じがした」と首をかしげた。

 全国に教室を展開する公文教育研究会(東京本社・東京都港区)は二月上旬から順次、各地の状況に合わせて対応するよう通知してきた。担当者は「休校が始まった北海道は、全教室で通学をやめて自宅学習に切り替えるよう通知した。今回の政府の要請を受け、改めて各学校の状況に合わせて対処するようお願いする」と話した。 (望月衣塑子)

 

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