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新型コロナウイルス感染でフランス人がマスクを…

ヨーロッパに広がる新型コロナウイルスの感染で風俗習慣から政治まで地殻変動が

山口 昌子 在フランス・ジャーナリスト

目立ちはじめたマスク姿

 テレビのニュースによると、教師が最初に入院したパリ郊外クレーユ公立病院付近では、「死去」のニュースが流れた2月26日午後から住民のマスク姿が目立ちはじめたという。パリ市内では、病院の一部の医師、看護師などを除いて、街中でマスクを着けた人にお目にかかったことはない。

 「マスクをする習慣がない」「なんだか恰好悪い」「息苦しい」「ギャングみたいだ」「持っていない」などの理由で、インフルエンザが蔓延している時でも、パリっ子はもとより、フランス人のマスク姿は皆無だったが、これからは、マスク姿を拝めることになるかもしれない。

 年末年始に帰国のした折に日本から持参したマスクがあるが、私自身も目立ちたくないので、マスクは着けたくないなと思っていた。マスクをしたアジア人の私の周囲からさっと人が引いたら、やっぱり、ちょっと寂しいからだ。

 ヴェラン保健相は26日の会見で、「20万枚のマスクの用意がある」と表明。疫病の専門家もこれに同調し、「マスク着用」の有効性を訴えている。「握手はするな」「手を洗え」「ハグはもってのほか」(ピティエ・サルペトリエ病院のエリック・コウム感染病室部長)との忠告もあり、今後はマスク嫌いのフランス人も、「恰好が悪い」などと言っている場合ではなくなりそうだ。

 ただ、フランス人の中には、かなり知的レベルの高い人でも、トイレから出てきて手を洗わない人がいて、握手もハグも、なるべくなら回避したいと思ってきたので、その点では少し安心とも言えるが……。

拡大Musashi akira/shutterstock.com

イタリア旅行をしたTVキャスターが自宅待機

 イタリアではミラノなど北部を中心に12人の死者が出ているので、フランスをはじめ、スペイン、ギリシャなど隣国は戦々恐々だ。事実、ギリシャでの初の感染者は、イタリア旅行から帰国した女性(38)だ。現在、テサロニケ市内の病院に入院中だが、幸いにも「症状は安定している」(ギリシャ保健省)。

 アルジェリアで2月25日に新型肺炎の第一号と発表された男性もイタリア人だ。2月17日にアルジェに到着した直後に発症した。アフリカでの新型肺炎はエジプトに次いで2国目だ。ブラジルで初感染の男性(61)もイタリア観光からの帰国者だ。フィンランドの2人目の感染者もイタリア北部への旅行経験者だった。

 フランス国営テレビ「フランス2」の朝番組のニュース・キャスターは26日、「当分、出演を辞退して自宅待機する」と発表した。休暇中にイタリアに旅行したからだ。フランス南部のニースは26日、カーニバルの最終日である29日の開催中止を発表した。

 イタリア人など毎年約20万人の観光客が押し寄せ、同市の貴重な財源になっているが、今回は「お金より健康」(ニース市長)という理由で決断した。ブルガリアは26日に、ロシアやクウェート、イラン、イラク、ヨルダンに続いて、イタリアとの空路を3月27日まで閉鎖すると発表した。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在フランス・ジャーナリスト

産経新聞パリ支局長を1990年から2011年までつとめる。著書に『ドゴールのいるフランス』(河出書房新社)、『フランス人の不思議な頭の中』(KADOKAWA)、『原発大国フランスからの警告』(ワニブックスPLUS新書)、『フランス流テロとの戦い方』(ワニブックスPLUS新書)、『ココ・シャネルの真実』(講談社+α新書)、『パリの福澤諭吉』(中央公論新社)など。ボーン・上田記念国際記者賞、レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞。

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