たまにはアーデさん家のリリルカさんが強くてもいいじゃない   作:ドロップ&キック

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リリと神様のちょっとした過去のお話です。




第14話:”少しだけ寂しい神様と少女の寓話を挟んでもいいじゃない”

 

 

 

ソーマ・ファミリア団長ザニス・ルストラをこの世から解放したリリルカ・アーデは、他の団員が拝謁することも叶わない主神ソーマの部屋を訪れていた。

 

唐突だが……リリルカは神ソーマの寵愛を一身に受ける少女だった。

その切欠は、リリルカが両親をダンジョンで失った直後まで遡る。

 

皆さんは、『第04話:”アーデ夫妻が想定以上にクズでもいいじゃない”』のラストの方を覚えているだろうか?

両親を失ったばかりのリリルカは、ひどく透き通った目をしていた。

ただしそれは”美しい瞳”という意味では断じてない。

それはガラス球のような……何も映さぬ故の透明感であり、無味乾燥の虚空を見る瞳だった。

 

そこに自分と同じ”虚無”を感じた神ソーマは、一杯の盃をリリルカに差し出した。

その盃にはなみなみと()()()()()()()が注がれていた。

 

その時の神ソーマの心情は、”神の愛”という類の高尚さとは無縁の物だった。

強いて言うなら「同病相哀れむ」という感情に似た憐憫と僅かな興味……そのくらいだろう。

もしかしたら少しは地上の子に対する愛情はあったかもしれないが、それさえも自覚できない程度の濃度に過ぎなかった。

 

神ソーマは、リリルカが一度も神酒(ソーマ)を口にしていないことを知っていた。

これまでアーデ一家が入手していた神酒は全て両親の喉に消えていたことを知っていたのだ。

 

なら、完成された神酒の効果は覿面、五臓六腑に染み渡り、その耽溺は忘れられない快楽として脳に刻まれるはずだった。

だからこそ他の団員と同じく溺れてしまえばいいと思った。

悲しみも空しさも全て忘れてしまうくらい酔い狂えばいいと……

だが、

 

『美味しい……お酒です』

 

リリルカはポツリとそう呟いただけであった。

神酒に飲まれるようなこともなければ、溺れる兆候さえなかった。

今なら状態異常無効化スキルである”難攻不落(ヴェルダン)”の影響と取れるかもしれないが、そのスキルが発現したのはLv2昇格時、”平原の主”討伐参加後だ。この時点では未来の時間軸の出来事だった。

 

リリルカが何故、神酒に溺れなかったのかは永遠の謎であろう。

おそらく先天的なものだろうが……確証はない。

 

だが、その光景に誰よりも衝撃を受けたのは、他ならぬ神酒を振舞った神ソーマ自身だった。

リリルカの姿に驚愕し戦慄し、そして酷く心動かされた。

 

神ソーマは地上の子等に絶望していた。

自分の生み出す酒は、仰々しく神酒(ソーマ)などと呼ばれているが所詮、神の力(アルカナム)を封じて作った”ただの酒”に過ぎない。

だが、それでも子等は容易く正気を失い、溺れ堕落していった。

神ソーマにも確かに責められる部分はあるだろう。だが、同時に彼がファミリアの運営を放棄し、地上の子等に背を向け、ただ酒造りにのみ没頭したのは相応の理由があった。

 

少なくとも神酒を耽溺し堕落する子等を見るたびに、彼の視界はくすんで色を失い灰色に染まっていった。

神ソーマとて地上に降りてきた以上、地上に生きる者達に何らかの期待は最初はあったはずだろう。

だが、それは他ならぬ自分の生み出した神酒により粉砕され、形骸すらも残らなかった。

だから、彼の手に残ったのは酒造りだけだったのだ。

 

 

 

だが、リリルカはそうはならなかった。

彼女に取り神酒は、ただの『美味なる酒』に過ぎず、それ以上でもそれ以下でもなかった。

そう察したときの神ソーマの心情をどう表現したらいいだろうか?

 

くすんだ灰色に閉ざされた世界が、急に色を取り戻した……あえて言語化すればそうなるだろうか?

 

だからこそ神ソーマは心揺り動かされた。

心を揺さぶられ、惹かれて行った。

 

気がついたときにはもう手遅れ。酒造り以外にはじめて動いた感情に戸惑いながらも、彼は自身を止められなかった。

 

そう、それは数々の神話体系(ミュトス)において、神と人の間では禁断とされるもの……神ソーマは、リリルカ・アーデを愛してしまった。

 

 

 

☆☆☆

 

 

 

詳細を語るのは、それこそ野暮と言うものだろう。

神ソーマからリリルカに与えられるその感情は、普通の男から女に向けられるそれと変わりはない。

神だから人だからというものではない。

情欲、愛欲、肉欲……それらを内包した思いを、リリルカは起伏に乏しい幼く小さな肢体(からだ)で受け入れた。

 

例えば破瓜(はか)の痛みさえも、彼女は喜びと歓びと共に受け止めた。

 

リリルカは嬉しかったのだ。

家族の中での価値を常に神酒の下に置かれていた彼女は、無意識に愛に飢えていたのだから。

 

『きっとリリは、神酒(ソーマ)じゃなくてソーマ様自身の”()()”に酔ってしまったんですよ。お腹の中に直接ですから、効果は覿面です♪』

 

多分、問えばリリルカはそう悪戯っぽく微笑みながら答えるだろう。

何度も秘密の逢瀬を重ね、火照った互いの体を晒した一人と一柱……それは刹那的かもしれないが、満たされなかった何かを満たしあう幸せが確かにそこにはあった。

 

だから、リリルカはその日々を……ソーマとの日々を守るために最後の仕上げを決意する。

 

リリルカは躊躇いなく全裸になると、

 

「ホントはこのままいつもみたいに可愛がって欲しいですけど……」

 

そう名残惜しそうに呟きながら彼女は寝台にうつぶせになり、

 

「今は先に片付けるべきことがあります」

 

「そうだな」

 

主神は彼女がこれから行おうとしてること、その委細を全て承知していた。

 

「ようやくか……」

 

リリは小さく頷き、

 

「ソーマ様、レベルアップをお願いします」

 

それが何かを成す為に必要な力なればこそ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回のノルマ:”絆”を書いてみる

リリルカ先輩、神様と繋がってました(物理的に
まあ、子供はできあいでしょうけどね。

さて、いよいよ物語はラストへ流れます。
全15話で終わらせる予定でしたが、少しだけ長くなりそうです。

最期までお付き合いいただけたらとても嬉しい。
ご感想お待ちしております。


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